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第32話 アルはゴルゴと再会する

 ローランドに移り住む人たちを機嫌よくマーフィンの町の外で待っていた。

 気持ちいい風が吹く草原。

 初めてスライムを倒した時のことを思い出す。


「はぁ……なんだか気持ち良過ぎて、お昼寝したくなりますね」

「本当だねぇ」


 俺とペトラは幸せそうに風を感じていた。

 ティアも風を受けて耳をピクピク動かしている。


 ただ静かに気分のいい時間を過ごしていた。


 が。


「アルベルト」

「……ゴルゴ」


 町から出て来たのは、部下を引き連れて偉そうな態度で先頭を歩くゴルゴだ。

 俺は奴の顔を見て、気分を害した。


「お前、聞くところによるとローランドに住んでるらしいな」

「あんたには関係ないだろ。お互い顔を合わせてもいいことないんだし、さっさとどこかに行きなよ」


 くつくつ笑うゴルゴ。

 なんだかいちいち癇に障るな。


「俺はお前に用事があってここに来たんだ」

「俺に? 何の用だよ」

「お前の惨めな顔を見に来たんだよ」

「…………」


 俺は呆れて顔を歪めゴルゴを見ていた。


 コミュニケーションが大事だとは言ったものの、ゴルゴだけに関してはまともに相手ができない。

 まぁこいつとは色々あったし、こいつとは仲良くする必要もないよな。


「グッド! その顔だその顔。俺はその情けないお前の顔が見たかったんだよ」

「あっそ。じゃあ目的も果たしたんだし、どっか行けよ」


 相手は俺が呆れていただけなのを勘違いしていたが、否定するのも面倒なのでそのまま適当にあしらった。


「つれねえなぁ」


 ゴルゴは俺の肩に手を回す。

 ティアが俺の隣で刀に手をかけた。


「…………」


 ゴルゴのことは俺とずっと一緒だったティアもよく理解しているのだろう。

 俺に無礼を働こうとし、何かあればいつでも切ってやる。

 そのような気迫を感じた。


 だが俺は手だけでティアを制す。


 静かに怒るティアだったが、刀から手を離した。


「おいおい。まさか、今でも俺のこと恨んでるのか?」

「恨む? 今の今までお前のことは忘れていたよ」


 これは冗談ではなく、本気の話だ。

 最近ローランドのことで頭が一杯だったのでゴルゴのことは完全に忘れていた。


「……まあいい。だが、ガイゼル商店を取り戻そうなんてバカな考えはやめておけよ」

「バカの相手をするようなバカじゃないよ、俺は」


 ゴルゴはカチンとくる。

 しかし大きく息を吸って、平静を保つ。


「あんまり調子に乗るなよ。お前程度、いつでも潰せるんだからな」

「潰すのは自分の店だけがいいだろ。俺を相手にすると、物理的にもお前は潰れることになるぞ」

「弱いガキが何言ってやがる。いいか、二度とマーフィンに来るんじゃない。来たら絶対に潰すからな」


 俺は黙ってゴルゴの手を払いのける。


 ゴルゴは舌打ちをして、町の方へと戻って行った。


「……なんですか、あの失礼な人」

「あれはご主人様に仇なすゴリラでございます。あ、ゴルゴでしたっけ? どちらでも構いませんが」 


 ティアも頭にきていたのか、珍しくわざと冗談のような言い間違いをする。


「しかし久々にあったが、癇に障る奴だな。ちょっと腹が立ったから商店を奪い取ってやろうか」

「それはよい提案かと思います。是非そういたしましょう」


 まぁ、いずれ取り戻せるなら取り戻してもいいかもと思ってたぐらいだし、本気でやってやろうか。


 だが今はそんなことよりローランドのことだ。

 まずはあそこをなんとかしないと、それも夢のまた夢だ。


「待たせたなー」


 テロンさんがゾロゾロと職員たちを引き連れて草原へとやって来る。

 みんな嬉しそうな表情をしていて、こちらもウキウキしてくるようだ。


「じゃあ行こうか」


 俺はローランドとの空間を繋ぐ。


「おいおいおいおい! なんだよこれは!」


 テロンさんを筆頭に、ざわつくみんな。

 目の前に穴ができて、ローランドがそこにあることに驚愕している。


「まぁ、便利でいいでしょ。ささ、行こう行こう」


 全員が空間の穴を通ってローランドへと足を踏み入れた。


 町が全て燃え尽き、現在は中央に大きな建物がある状態。

 ちらほらと大工が建築してはいるが、みんなは驚いて町を見渡していた。


「噂には聞いてたが、本当に町が無くなったんだな」

「ああ。犯人を捜しているんだけど……心当たりもなくてね」

「そうか……」


 テロンさんはふと何かを思い出したらしく、俺に訊ねる。


「そういや、エミリアはどうした?」

「エミリア? 知らないよ。ギルドにいるんじゃないの?」

「いや。あいつギルドを辞めたんだよ」

「へー」


 本当にシモンは人望がないなぁ。


「それで、お前がローランドにいるって伝えておいたんだけどなぁ」

「ああ。あいつ、方向音痴だからな。また見当違いの場所に行ったんじゃない?」


 エミリアは信じられないほどの方向音痴で、迷子になることなんてざらだった。

 そんなエミリアがマーフィンからローランドにやって来るなんて……不可能にも程がある。


 馬車でも使えばいいものを、どうせ一人でなんとかなるとでも思ったのだろう。

 結果は案の定だ。また迷子になっている。


 女の子だからここは心配してもいいところだが……

 エミリアのことだ。きっと大丈夫だろう。 

 たくまし過ぎるぐらいたくましいし。


 俺は嘆息し、マーフィンから来たみんなに向かって笑みを向ける。


「ローランドへようこそ。そしてここが、今日からみんなが生活していく場所だ」


 何もないところだけれど。

 将来どうなるのかもわからないけれど。

 それでもみんなは希望と歓喜に満ちた瞳でローランドを見つめていた。


「力を合わせて、みんなでこの町を大きくしよう」

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― 新着の感想 ―
[一言] 脳筋さんまじ脳筋……方向音痴と関係ないかwww そして作者様に質問です。激おこの脳筋さんから生き残れるのでしょうか?
[一言] マーフィンのギルドの職員や冒険者をスカウトした時点で勝ちなんだよな ギルドが機能停止したら経済が回らないからね 冒険者目当ての商店や酒場も売り上げガタ落ちだろうし
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