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第31話 アルはコミュニケーションが得意②

「おいクソババア!」


 突然聞こえてきた怒声に、俺たちは振り向く。


 そこにいたのは――


 ボランだった。


 ボランは現在、俺が錬成で作った鉄の鎧を装備し、背中には大きな鉄の盾を背負っている。

 そしてボランが率いる男たちが数人。


 なんとも人相の悪い集団ではあるが……自警団だったりする。

 彼らには町の人たちを守ってもらうために見回りを頼んでいた。


「わ、私は何もやっちゃいないよ」

「何もやってねえことねえだろ! 重たそうなもん持ちやがって……俺が運んでやる! 適当に端にでも置いてりゃ、俺たちが運ぶから無茶すんじゃねえ!」


 ボランに声をかけられたおばあさんは、町を綺麗にしている人たちの一人だった。

 ゴミを集めてそれを運んでいたようだが、それを見つけたボランが彼女が手に持っているゴミを奪っている。


 ちなみにおばあさんは、ボランのちぐはぐな態度に首を傾げていた。


「ボランさん、言葉遣いはあれですけど、結構さまになってますね」

「確かに口は悪すぎる。だけど人が良い。人が良いから、人を守る仕事が型にはまると思ったんだ」

「アルさんの考え通り、正解でしたね」


ペトラは「でも」と続ける。


「お金……大工さんの分もそうですけど、ボランさんたちの給料も全部アルさんが出していますが、大丈夫なんですか?」

「ああ。大丈夫大丈夫。お金を貯めるのは好きだけど、人のために使うのはもっと好きなんだ。どうせあの世には持っていけないし、使える時に使わないと」

「アルさん……」


 ペトラが尊敬の眼差しで俺を見つめる。


「それに、ここでお金を投資しておけば、将来的にもっと稼げると思うしね」

「稼げ……るんですか?」

「ああ。だってお金を使って町が発展してくれた方がお金の回りがよくなるだろ。お金の回りがよくなれば、それだけ俺のもとにもお金が舞い込んで来るチャンスが増えるというわけだ」

「なるほど。結局のところ、利害が一致してくるんですね」

「ま、そういうことだよ」


 俺は町の様子をぐるりと見渡す。


 確実に復興へ向けて進んでいる。

 まだ始まったばかりだけれど、一歩一歩前へ進んでいるんだ。


 俺はワクワクした気分で、ペトラとの会話を続ける。


「よし……次はスカウトにでも行ってこようかな」

「スカウト、ですか?」

「ああ。ペトラも付いて来るかい?」

「はい。是非お願いします」



 ◇◇◇◇◇◇◇



 マーフィンとの空間を繋げ、俺は冒険者ギルドへとやって来た。

 シモンがギルドマスターを務めるギルド……

 俺が以前、働いていたギルドだ。


 そっと中を覗いて見ると……


 殺伐とした空気の中、みんなは仕事をしていた。


「ちょっと、冒険者の人待たせてるでしょ!」

「私の所為? 自分の仕事が遅いんじゃないの!?」


 俺は嘆息し、ペトラとティアの方を向く。


「ま、シモンがまともなコミュニケーションを図れるわけもないだろうし、こうなるか」

「元々、職場の状態はよくありませんでしたからね」


 ずっと一緒だったティアは、当時のことを良く知っているみたいだ。


 俺が来る前も、やはりこんな状態だった。

 見るに見かねて、俺がみんなとコミュニケーションを取って円滑に仕事ができるようにしたんだっけな。


 しみじみと当時のことを振り返る。


「……こんな状態でも、コミュニケーション一つでどうにかなっちゃうものなんですか?」

「なるよ。しっかりコミュニケーションを取れる人間が一人でもいればね」


 そう言って俺は、冒険者ギルドへと足を踏み入れる。


「やあやあみなさん。お久しぶり」


 俺がカウンター前からみんなに挨拶すると、水が打ったように静寂が訪れる。


 そして、


「「「アル!!」」」


 わっと大勢の職員、冒険者たちが俺の下へと走り寄ってきた。

 俺はみんなに嬉しい包囲網を張られる。


「お前、ローランドにいるらしいな!」

「なんでクビになっちゃったのよ! 寂しかったじゃない」

「アルー! 帰って来てよぉ!」


 みんなが笑顔で、俺に声をかける。

 その様子をペトラはポカンと見ていた。


「やっぱりアルさんって、人気ありますね」

「ははは。俺が教えたことをやれば誰だって、ペトラだってこうなるんだよ」

「はぁ……」

「おお、アル!」

「テロンさん」


 大きな体をしたテロンさんが、奥から嬉しそうに飛び出てきた。


「よく来たな! 今日は何か用事か?」

「みんなに会いに来ただけだよ。と言いたいところだけど、ちょっと用事があってね」

「用事? 何の用事だ?」


 テロンさんは眉をひそめてそう訊いてきた。


「テロンさんをスカウトしにきたのさ。ローランドのギルドを大きくしようと考えていてね。素人ばかりだし、どうしても指導係が必要になるんだ」

「指導係ねぇ……」

「駄目かい?」


 うーんと唸るテロンさん。


「給料は?」

「現状はまともに支給できないと思う」

「町の連中は聞き訳がいいのか?」

「一癖ある連中ばかりだね」

「……最悪じゃねえか」

「ははは……確かに」


 テロンさんはギロリと俺を睨む。


「…………」


 が、急にニカッと歯を見せて笑う。


「でも、最高だな! お前と一からギルド作りなんて最高だ! 面白そうじゃねえか!」


 ガハハと大笑いするテロンさん。

 俺も笑みをテロンさんに向けて話を続ける。


「ありがとう。テロンさんなら来てくれると思ったよ。このギルドのこともあるし、いつから来れる?」

「いつから? 今からに決まってんだろ。こんなギルドに未練もなければ思い入れもねえよ」

「あ、そう。じゃあ今日から来てもらおうかな」


 しかしシモンの奴、人望がないんだなぁ。

 こんなにあっさりベテランを引き抜けるんだもの。


「私も行っていい? というか行く!」

「俺も行く! アルがいるなら、ローランドで冒険者するよ!」


 これまた大勢の職員と冒険者たちがローランド行きを熱望してきた。


 まさかここまで俺の誘いに乗ってくれる人がいるなんて……

 俺は嬉しさのあまり感動していた。

 そしてみんなに一言、こう言ったのだ。


「みんな、よろしく頼むよ」

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― 新着の感想 ―
[一言] もう一人のヒロイン候補?どこ行った?もしかしたら方向音痴ヒロインに抜擢するのも面白そうです
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