第29話 アルたちはグロートの森に行く②
俺たちはレイナークから西へ歩き、グロートの森にやって来た。
ここもルーズの森と同じで、よく光が射す明るみを感じるよい場所だ。
天気もいいし、うとうと眠気に誘われる。
「大きなあくびでございますね」
「ああ……気持ちよくて眠ってしまいそうだよ」
ボランとジオに先頭を歩いてもらい、俺とティアはその後ろをついて行く。
「あっ! モンスターだ!」
「見りゃわかんだよ!」
森の中を進んでいると、四足歩行のモンスターが4匹現れた。
それは茶色い毛並みに犬のような見た目。
だが、鋭い牙を持ち獲物を睨み付けるおっかない視線の持ち主。
ウルフだった。
「ジオ。頑張って倒してきてくれ」
「了解っす!」
ジオはまだ幼さの残る声で俺の言葉に肯定し、突撃を開始する。
「オオン!」
ウルフもジオに向かって駆け出し、互いに激しい視線をぶつけ合う。
一直線に迫って来るウルフの牙を、ジオはひょいっと横に回避し、短剣を首元に突き出した。
「言っとくけどな、俺はアニキ以外には負けねえぞ!」
「ああっ!? 俺にも勝てねえだろうが!」
ボランが空中に飛び上がり、両手で握った剣を振り下ろす。
ウルフの頭部はその一撃で真っ二つに割れる。
「……ぜってーいつか勝つ」
「ああ!? こっち見てんじゃねえ! 敵がまだいるだろ、危ねえぞ!」
ボランを睨むジオに飛びかかるウルフ。
だがそれを、ジオを守るようにボランが間に入って剣で防ぐ。
ジオは町で一番強いボランがどうも気に入らないらしく、敵意をむき出しにしているが、ボラン自身眼中にないようだ。
ボランは優しいから、誰かに勝つような力というよりは、誰かを守るための力を欲しているのだろう。
それが余計にジオの癇に障り、イラッとしていた。
「守ってくれなんて言ってねえだろ!」
残りのウルフの頭上から短刀を突き刺すジオ。
ボランも目の前のウルフに止めを刺す。
「怪我はねえか!? ああっ!?」
「あ、あるわけねえだろ!」
睨み合っているようにしか見えない二人。
だけどボランは純粋にジオの心配をしているだけだろうなぁ。
◇◇◇◇◇◇◇
いがみ合い(?)ながら森の中を突き進んで行くボランとジオ。
次々襲い来るウルフは問題なく退治していく。
退治した後の死体にティアが刀で斬り付けると、それは素材となってティアに吸収されていた。
「何かあった時のために援護をしようかと思っていたのですが……私は必要なさそうですね」
「いやいや。素材を回収してくれるだけでも大助かりだ」
ティアはその言葉に喜びを感じているのか、尻尾を左右に揺れせていた。
俺はボランたちが頑張ってくれているので、のんびりと歩いてついているだけ。
うーん。楽でいいなぁ。
「おい! 止まれ!」
「はぁ?」
ウルフを狩りながら先頭を走っていたジオは、ボランの言葉に顔を振り向かせる。
「なんだってんだ?」
「ウルフじゃねえ奴がそこにいるんだよ!」
怪訝そうにジオは、視線をボランが指差す方へ移す。
そこにいたのは、太った人間の体に豚の頭をくっつけたようなモンスター、オークだった。
だがオークにしては大きすぎる気がする。
だいたいオークは大きくても2メートルといったところだが……
こいつは4メートルほどある。
「……はぐれオーク、か」
通常、モンスターは同じ場所に生息し、その場を離れることは基本しない。
そしてこのオークのように、単独で別の場所へ移動する場合が稀にある。
孤独なモンスターは強くなって、その場で必死に生きていくしかない。
同胞がいないから強くなるしか生き延びる術がないのだ。
故に、はぐれモンスターは強力だと言われている。
そして目の前にいるはぐれオークもそうなのだ。
孤独でこの森で生き延び、強く強大になりここにいる。
「……何これ?」
「はぐれオークだよ。これは俺が始末するから、二人は下がってろ」
ゴクリと息を飲むジオ。
だが。
「こいつぐらい倒せねえと……いつまで経ってもボランに追いつけねえ! 俺がぶっ倒してやる!」
「おーい。無茶はするなよ」
ジオは駆け出した。
ボランも同時に走り出し、正面から衝突する。
「うおっ!?」
はぐれオークは武器を持たず、その拳だけでボランを吹き飛ばした。
ボランは木に激しく頭を打つ。
が、すぐに立ち上がり再度突撃する。
「このっ!」
素早い動きで、ジオがオークの背後に回る。
短剣で腰辺りを切り裂こうとするが……効果がない。
「え? ちょっとどうなってんだよ!?」
唖然とするジオは、オークの振り回す拳に顔面を捉えられる。
「ぶほっ!」
物凄い勢いで吹っ飛ぶジオ。
地面で数回転して体は止まる。
足に力が入らないらしく、起き上がれないままオークの背中を睨んでいた。
「この野郎!」
鬼の形相でボランは剣を振り下ろす。
が、それを腕で防がれて剣はパキンと折れてしまう。
「バケモンかよ、ああっ!?」
ボランに拳が襲い来る。
「くっ!」
が、俺はボランの体を背中からぐいっと引っ張りそれを空振りにさせた。
「ああっ!?」
驚くボランを後ろにポイッと投げ、俺は軽く飛び上がりオークの顔面に回し蹴りを放つ。
「グボォオオオ!」
ギュルンギュルンと空中で何回転もするオークの身体。
ズジンとそのまま地面に落ちて、オークはこの世を去った。
「バケモン以上のバケモンかよてめえは……」
ボランとジオが仰天し、ポカンと口を大開きしている。
「マ、マジですげーんすねアニキ……」
ティアは「当然です」とでも言うように眼鏡をくいっと上げてジオを見る。
「ま、そのうち二人も強くなるよ」
いつまでも驚いていた二人はその後、必死にウルフを狩っていた。
やる気がさらに増したようで嬉しくなり、俺はホクホク顔で二人の成長を見届けていた。
【皆様へのお願い】
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
大感謝です!
これからもこの作品を他の沢山の方にも読んでいただいて、楽しんでもらいたいと考えております。
ランキングが上がれば自然に読んでくれる方も増えるので、ぜひお力添えのほど、よろしくお願いいたします。
そのため、もし少しでも、面白かった、続きが気になる。
そう思っていただけたなら、ブックマーク、高評価をお願いします。
評価はこの小説の下にある【☆☆☆☆☆】を押してもらえたらできます。
ブックマーク、高評価は、作品作りの励みになり、モチベーションに繋がります。
是非とも、よろしくお願いいたします!




