第28話 アルたちはグロートの森に行く①
「うう……ううん?」
早朝、眠る俺の上に、やけに柔らかいものが乗っかかっている。
目を開けて確認してみると、それはカトレアであった。
彼女はすーすー寝息を立てて、俺の上で眠っている。
俺は強引に彼女を引き離そうと力を込めるが、ギューッと抱きついてきて離れそうとしない。
あ、なんだかちょっと幸福感。
こんな綺麗な子に抱きつかれて嬉しくないわけはない。
だけど、
「おい。お前起きてるだろ」
「あれっ? バレちゃいました?」
カトレアは顔を上げて、舌をペロッと出す。
いや、可愛いけどさ……
俺は現在、自分で創った塔の最上階を自室として眠っていた。
石造りの広々とした空間で窓が二つついてある。
部屋にはまだベッドが一つあるだけで、ティアたちは床に毛布を敷いて眠っていた。
そしてカトレアは今朝早く、俺のベッドに忍び込んできたというわけだ。
俺は起き上がりカトレアから離れようとするが、彼女は俺の首に腕を回し、背中に張り付いてきた。
「あのね。もう起きるから離れてくれない?」
「ええ~。もっとアル様とくっついていたいんですけどぉ」
「今日もやることは多いんだ。くっついている暇なんてないぞ」
「じゃあ今日はお休みにして一日中くっついてるというのはどうですか☆」
「うん。却下だな」
口をとがらせてぶうぶう言うカトレア。
俺は彼女をベッドに座らせ今日することを思案する。
「おはようございます。ご主人様」
丁度ティアも目覚めたようで、サッと床から起き上がる。
「今日はギルドの仕事をしようと思う。これからお金も必要になってくるしな」
「かしこまりました。ではレイナークへ行って仕事をいただいてくることにしましょう」
「ああ。頼むよ」
ギルド本部でこちらに回してもらえる仕事を探し、ローランドのギルドでそれを達成する。
ローランドの評価も上がり、金も入るという、一石二鳥のよい計画。
螺旋階段を下りて行き、一階のフロアへと移動する。
そこはギルドの受付として利用するつもりでカウンターと掲示板があり、その横には酒場兼食堂も備え付けられている。
酒場にはテーブル席が8つ設置していて、まだ誰も使用していない新品の状態だ。
「おはようございます」
ペトラが大きな扉を開いて中へとやって来る。
彼女はソワソワして周囲を見渡していた。
「前の店とは比べ物にならないぐらい広い……カウンターも大きいし、これなら一杯冒険者が来ても大丈夫ですね」
「ああ。だけどワクワクするよな。ここが人一杯になるって想像したらさ」
「……そうですね」
ペトラはその情景を想像しているのだろう、目を輝かせてブルッと震えていた。
俺はそんな彼女に、笑顔を向ける。
「俺たちの手でそれを現実にしよう。みんなが協力してくれたら、絶対にできるはずだから」
「……はい」
そんな話をしていると、ローズとカトレアが一階へと下りて来た。
「アルベルト様! 私たちにご指示を!」
「今日は昨日言ったように、自身のレベル上げをしてきてくれ。ついでに素材の回収も忘れないようにな」
「はーい☆ じゃあ行ってきまーす」
ローズとカトレアが塔を出て行き、俺はペトラと会話をしながらティアの帰りをまった。
「ただいま戻りました」
【空間移動】でレイナークとの空間を繋げてティアが戻って来る。
彼女は何枚かの紙を持って帰ってきて、その中の一枚を俺に手渡す。
「ご主人様の名前を出したら、中々よい条件の物を用意してくれました」
「ふむ。グロートの森でのはぐれオークの討伐……レイナークの西にある森だな」
報酬は1万ゼル。
確かに悪くはない条件だ。
「よし。じゃあボランとジルをつれて森に向かうか……悪いけどボランとジルの仲間たちを呼んできれくれないか?」
◇◇◇◇◇◇◇
俺の頼みに従い、ティアがボランたちを呼んできてくれた。
施設に集合する男たち。
「「「おはようございます、親分!」」」
「お、おはよう……」
なんか慣れないな、親分って。
と言うか、親分になったつもりはないんだけどな。
「みんなには、ここで冒険者登録をして仕事をしてもらおうと思う。最初は簡単なものからでいいから、確実に仕事をこなして行ってくれ」
「「「うっす!」」」
ティアが持っている紙を受け取り、男たちは仕事を確認する。
「ボランとジオは俺と一緒にグロードの森に行こう」
「ああ? なんでそんなとこ行かなきゃいけねえんだよ?」
「強くなるためさ。強くなって、また町を燃やした連中がきても対処できるようにする。抵抗できないまま燃やされるのはごめんだろ?」
「そういうことなら行ってやる! バキバキに強くなってみんな守ってやんぜ!」
「俺も強くなって、今度きたらあいつらぶっ殺してやりますよ。もう何もできないままなんて嫌っすから」
ボランもジオもやる気は十分のようだ。
「よし。じゃあすぐに向かおう」
俺は【空間移動】を開き、レイナークとの空間を繋げた。
変に興奮している二人を見ながら、俺はニコリと笑う。
この二人はドンドン強くなる。
きっと町にとってなくてはならない存在になるのではないだろうか?
そんな期待を胸に、俺はみんなを引き連れて穴をくぐり抜けて行く。
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