第27話 みんなは一歩ずつ歩きはじめる②
能動的に、効率的に、計画的に、ブラックローズとホワイトカトレアのレベルを上げた。
ティアの時の経験があったので、あっという間にヒューマンモードの解放に成功。
その日の夕方にローランドへ戻り、近くの草原で人間の姿になってもらうことにした。
カッと眩く光り、人間の姿が二つ現れる。
一人は、黒く長い髪が波打っていて、吊り目の気の強そうな美人な女性。
軍服風のものを着飾っており、緑をベースにして赤いラインが入った上着に、太腿辺りが膨らんでいるズボンと、硬そうなブーツを履いている。
頭には狐の耳があり、お尻からは黒く大きな尻尾がついている。
「アルベルト様! この度は【自我】を与えていただいたこと、大変感謝しております!」
両手を後ろに回して、堅苦しくそう言ったのはブラックローズだ。
そしてもう一人、顔はブラックローズと全く同じ。
俺が設定したわけではないが、どうやら双子のようで大変美人な女の子。
だが、彼女とは違い波打つ髪は白く、頭についている狐の耳も尻尾も白い。
お召し物は異世界の『アイドル』と呼ばれる存在に近い物を選択した。
白い服にネクタイをつけ、黒と赤のチェックの上着を羽織っている。
下は短い赤黒のチェックのスカートを穿いていて、なんとも魅力的なおみ足が伸びていた。
「はじめましてアル様っ! 人間の姿になれて、私嬉しいっ☆」
自身の目の辺りで横向きのピースをするホワイトカトレア。
そのままなぜか、俺の腕に手を回してきた。
柔らかい何かが、俺の腕に触れる。
「ねえねえアル様。私たちに【自我】を与えて、人間の姿にしたってことは、やることがあるってことですよね。私、アル様の言うことならなーんでも聞くから、気軽に言って下さいねっ」
「あ、ああ。よろしく頼むよ。二人は……ローズとカトレアでいいかな?」
「はっ! 構いません!」
「はーいっ☆」
ローズは姿勢を正して、カトレアは俺にウィンクしながら応えた。
「おいカトレア。アルベルト様から離れろ。アルベルト様は困っているんじゃないか?」
「ええ~。アル様、困ってるんですかぁ?」
「いや、困ってはないけれど……明日から頼みたいことがあるんだよ」
カトレアは花が咲くような笑顔を俺に向け、なんでもどうぞと言ったような様子だ。
「とりあえず……自分たちのレベルを上げて来てほしい」
「はっ! しかし恐縮ではありますが、私はまだ戦う術がありません」
強そうな外見はしているが、そこはティアと同じなんだな。
まぁレベルは1からだし、仕方ないか。
俺はいったんティアを呼び出し、錬金術で武器を錬成することにした。
ティアは俺の呼びかけに応え【呼び出し】でこの場に現れる。
「もう人間の状態になったのですね」
「よろしくお願いいたします。お姉様」
「よろしくねっ、お姉ちゃん」
初めて会話をする3人。
ティアは姉か……
どちらかと言えば、お母さんに当たるのかと思っていたけど。
ま、どちらでもいいんだけどね。
「じゃあ早速武器を作ろうか。そうだな……ローズは鞭を、カトレアは弓なんかでどうだろうか?」
ローズもカトレアも異論はないようで、首肯する。
「ティア。素材を頼む」
「かしこまりました」
まずカトレアの弓だ。
素材は木材。
そんなにいい物を作れそうにないが、とりあえずはこれで十分だろう。
【上級錬金】のおかげでそこそこの物はできるはずだしな。
俺は錬金術を発動し、カトレア用の弓を作る。
そして次はローズの鞭だ。
鞭は……レッドヒドラの革を使おう。
地面に置かれたヒドラの革の下に、錬成陣が発生する。
革はキラキラ輝き、鞭の形へと変化した。
特に問題もなく、あっさり完成。
【鑑定】でこれらの性能を確認する。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
木の弓+
ランク:C+
攻撃力:41
追加性能:命中+
ヒドラの鞭+
ランク:B+
攻撃力:378
追加性能:毒付与
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「これは……すごい性能ですね」
ローズはヒドラの鞭をピシピシいわせながら、高揚しているようだった。
分かってはいたけど、ランクCとBじゃ性能が段違いだな。
カトレアも武器の性能の違いに文句を言うわけでもなく、笑顔で弓を引いたりしていた。
良かった。これだけの性能差だから、何か言われるかもと思っていたけど、俺の杞憂に過ぎなかったようだ。
「今日はもう遅いから、明日から頼んだよ」
「はっ!」
「りょうかーい」
「私はまた狩りに戻ればよろしいですか?」
「いや、今日はもう遅いし、それにもう一度錬金術を使いたいからついて来てくれ」
俺たちはローランド跡へと足を踏み入れ、中央辺りまで移動した。
「アルさん……その人たちは誰ですか?」
そこにはペトラがいたので簡単にローズたちの紹介をすると、一瞬顔を引きつらせるが納得してくれた。
なんで顔を引きつらせてるんだ?
「……また綺麗な人たちが増えましたね」
「ああ。大いに役立ってくれそうだから嬉しい限りだよ」
なんとも微妙な顔をするペトラ。
俺は首を傾げながら、錬金術に必要な素材をティアに伝える。
「あの……何かするつもりですか?」
「ああ。何かするつもりだよ」
ペトラは何をするのだろうかとキラキラした目で俺を見出した。
周囲にいた人たちも集まってきて、俺のすることに注目する。
「…………」
これだけ人に注目されてたらやりにくいなぁ。
ま、いいけどさ。
「では、素材の方を出させていただきます」
「わ……わわわわ!」
ティアの目の前から膨大な数の木や石などが溢れ出てきて、ペトラは驚きの声をあげていた。
それは焦げた家屋跡に積み上げられていく。
俺はこれから創ろうとしている物を、頭の中でイメージする。
巨大な錬成陣が地面に浮かび上がり、ペトラも周りの人たちもざわついてその様子を見届けていた。
数多くの素材が錬成陣の中で一つになっていく。
そして激しい光を放ち――
それは大きな建物になった。
「え……えええっ!?」
建物を見上げて、ペトラは仰天していた。
町の人たちも突如現れた建物に、困惑している。
「な、なんで建物が急に……」
「なんなんだよ……すげーな、あいつ」
「アルって、名前らしいぜ……」
「アル、か……」
なぜか尊敬の眼差しを俺に向ける人々。
だが俺はそれに気づかないふりをして、建物を見上げる。
石造りの高い塔に、みんなが仮住まいするための木造の大きな施設。
中は吹き抜けの広い空間だが、とりあえずはこれで十分だろう。
「アルさん……あの塔は何ですか?」
「あれは、これから俺たちが働くための施設だよ」
「あれが私たちの……」
ペトラは塔を見上げて身震いをしていた。
これから始まる日々に、喜びを感じているのだろう。
それは俺も同じで、ワクワクした気分で塔を見上げていた。
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