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第26話 みんなは一歩ずつ歩きはじめる①

「アニキ。俺はアニキの子分だし、どこまでもついていくつもりっすよ」

「ジオ」

「なあ、お前ら!」

「「「おおっ!」」」


 ジオと、その子分たちが俺に応える。

 

「まぁ、これ以上悪くなることはないっすよね」

「ははは。これ以上って、もう死ぬぐらいしかないからな」

「あの……」


 俺に声をかけてきたのは、以前子供をたくさん連れていた女性、キャメロンだった。

 その隣には、なぜかボランもいる。


「あなたに任せれば、この子たちが平和に暮らせる町を作ってくれるんですか?」

「いや、違うよ」

「?」

「俺に任せるんじゃない。みんなが立ち上がるんだ。さすがに他人任せだけでできるほど甘いものじゃない。再建にはどうしたってみんなの力も必要になるからね」

「……私もできる限りのことをします。だからこの子たちの未来を創ってくれますか?」

「それなら、俺も最善を尽くすと約束するよ」


 ニッコリと笑みを向けると、パッと明るくなるキャメロン。

 次に隣にいたボランが大声で俺に言う。


「おい! ぜってーだぞ! おおお俺も力を貸してやっから、ぜってー最高の町にしろよな!」

「分かってる。約束だ」

「よし! おいクソガキども! これまでの最低な毎日を終わらせてやっから、覚悟しろ!」

「うん! ありがとうボラン!」

「ボラン……ありがとう」


 子供たちと、キャメロンにそう言われ、ボランは顔をボッと真っ赤にする。


「おおお、おう! 別にお前のためじゃねえし、気にすんじゃねえ!」

「……なるほど」

「何がなるほどだ! ああっ!?」


 俺の呟きに反応を示すボラン。

 あれだな、こいつ、キャメロンに惚れてるんだな。


「でもこんなに子供いて、人妻じゃないの? キャメロンって」


 俺はボランの耳元でそう囁く。


「バッ! キャメロンは人妻なんかじゃねえよ! 孤児のこいつらの世話してるだけだ! ってかなんでそんな話を俺にすんだよ!?」


 分かりやすいぐらい照れてるな。

 もうバレバレだからね。


「あの……アルさん。私も、もし可能なら、一緒にお仕事したいです。本当にローランドが生まれ変われるなら、私も努力します」


 何人かの人も、ペトラに同調するように首を縦に振っている。


「ああ。ペトラにもみんなにも、できることはいくらでもある。だから……やる気のある人だけここに残ってくれ。もし再建なんて不可能だと考えている人は、ここから立ち去ってほしい。いてもみんなの足を引っ張るだけになるし、そんな気持ちじゃどうせ居づらくなると思うよ」

「…………」


 その場にいる大勢の人は、俯き、思案していた。


 実際残ったところで、気持ちに差があれば離れ離れになってしまう。


 再建しようと尽力する人と、適当に生きている人。

 いつか衝突するのは目に見えている。


 それにここから離れてた方が、とりあえずはましな生活もできるだろうから、出て行っても問題ないだろう。


 俺は一度深呼吸し、全ての息を吐き出した。


「よし……早速始めていかないとな」

「アニキ。俺たちは何をやればいいっすか?」

「まず瓦礫の撤去をたのむ。できることから一つずつ終わらせていこう」

「了解っす! 行くぞ、野郎ども!」


 男たちはジオの言葉に応え、町跡へと向かって行く。


「ペトラたち女の人たちは食事の用意をしてやってくれ。熊肉ぐらいしか今はないけど、無いよりはましだろ」

「分かりました。腕によりをかけます!」

「子供たちは大人の手伝いをしてくれ。頑張ったらお腹一杯ご飯食べさせてやるからなっ」

「「うん!」」


 俺がニカッと笑みを向けながらそう言うと、笑みを向けてそう答える子供たち。


 まずできることを一つずつだ。


「ご主人様、私は何をすればよろしいでしょうか?」

「ティアにはみんなより働いてもらうことになる。すまないけど力を貸してくれ」

「私はご主人様のために存在しているのでございます。なんなりと遠慮なく申しつけ下さい」


 ペコリと頭を下げてティアは言う。

 ちょっと本気で嬉しくて、ジーンとくる。


「ティアには建物を建てるための素材を回収して来て欲しい。それと北の山へ向かってワイルドボアを狩ってきてくれ。あれならデビルグリズリーみたいに食料になるだろうから」

「かしこまりました」


 俺はティアにそう伝えると、顎に手を当て思案する。


 「次にどうするべきか……これからローランドを再建させるにしても、どうしても人材が足りないよな。どこかでスカウトしてくるかな……」

「ご主人様。もし私レベルの者が手に入るとしたら……どうでございましょう?」

「ティアレベルの? そりゃありがたいどころの騒ぎじゃないな」

「では【眷属】を習得することをお勧めします」

「【眷属】?」

「はい。レベルが上がったことにより新しく解放されたサポートでございます。それを習得すれば、私ほどの拡張性はありませんが、新たなる【神剣】を生み出すことができます」


 なんとありがたい……

 ありがたいどころではない。嬉しすぎて踊りたい気分だ。


 ティアだけでも大助かりなのに、それが他に手に入る?

 そんなの誰がどう考えても入手するに決まってるでしょ。


 俺は踊り出しそうな気持ちを押さえつけながらティアに言う。


「じゃあ【眷属】の習得を頼む」

「かしこまりました」


 ティアがそう言うと身体が光り出し――その手の中に、真っ黒な剣と真っ白な剣が顕在する。


 それは片刃の剣で、端から端まで真っ黒な剣。 

 鍔の部分には黒い宝石がついていて、見た目はなんだか禍々しい。


 それと見た目は丸々一緒の純白の剣。

 その二振りがティアの両手に生まれ出た。


「こちら、【神剣ブラックローズ】と【神剣ホワイトカトレア】でございます」

「ブラックローズにホワイトカトレア……」


 俺は二本の剣を掲げ、それを見上げる。


「その子たちはまだレベルが1なので、少々手間ではありますが、また成長させてやってくださいませ」

「それぐらい手間でもなんでもないさ。将来への投資だと思えば、なんてことはない。じゃあまず俺は、こいつらのレベルを上げることから始めるとするよ」


 一歩ずつ一歩ずつ。

 自分たちのできることをやっていく。


「しかし、ご主人様、えらく嬉しそう見えるのは気のせいでしょうか? それに普段は極力働こうとしないのにやる気がありますし……」

「ははは。ま、気のせいじゃないよ。今すっごく嬉しいしね。自分の手で町を蘇らせて大きくする……なんだか新しい商店を始めたような感覚でさ、妙にウキウキしているよ。ゴルゴの所為でできなかったことが、別の形として俺の下に転がり込んできた……」


 俺は両手をグッと握りしめ、笑顔でティアに言う。


「その上、みんなのためになるのだから、言うことないだろ? まさに利害が一致していると言うものだ」

「なるほど……では私はご主人様の喜びのために、全力で務めをはたさせていただきます」

「じゃあ、また美味しい物を用意しないとな」


 ティアは嬉しそうに、目を細めて俺を見る。

 

 こうして俺たちは希望を胸に、町の復興へと一歩ずつ歩み出したのであった。

【皆様へのお願い】


ここまで読んでいただいてありがとうございます。

大感謝です!


これからもこの作品を他の沢山の方にも読んでいただいて、楽しんでもらいたいと考えております。

ランキングが上がれば自然に読んでくれる方も増えるので、ぜひお力添えのほど、よろしくお願いいたします。


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