第23話 アルはB級モンスターを退治しに行く②
誰もいない草原を颯爽と走り続ける。
『ちなみにでございますがご主人様。バイクモードは攻撃力が0でございます。その分、防御力にパワーを全て振っているので急な攻撃にもビクともしないとは思いますが』
バイクの前面にある、二つ目のようなライトをピカピカさせながらティアはそう言った。
「オッケオッケ。だけどモンスターが出てきたところで、今の俺たちに追いつけるはずもないだろうさ」
『確かに、そうでございますね』
◇◇◇◇◇◇◇
歩きなら結構な時間を要したはずだが、バイクだったおかげで比較的早くホライザ迷宮に到着した。
人間の姿に戻ったティアと共に、迷宮へと足を踏み入れる。
中は天然の洞窟となっており、道がいきなり二つに分かれていた。
ゴツゴツとした壁にいくつものタイマツが備えらえていて、奥の方まで見渡すことができる。
迷宮内の通路はあまり広くなく、4人ほどが横並びになれるぐらいの広さだった。
「あ、もしかして君がアルベルトくんかい?」
中にいた3人の兵士が俺の下へと駆けつけて来る。
「ああ。で、話してたモンスターってのはどこにいるんだい?」
「一番奥の、祭壇がある場所だ」
迷宮の奥には祭壇があり、そこに兵士たちが訓練を終えた証として持ち帰る銀貨などを置いていて、まさにここは訓練場と化した迷宮となっている。
「じゃあさっさと奥に向かおう」
ここに出現するモンスターは、犬と人間を同化させたような、白いコボルト。
そして骨のみで歩き回るアンデット系代表とも言えるスケルトン。
どちらもスライムやゴブリンと同じく、Eランクに分類されるモンスターだ。
訓練には丁度いい相手だろう。
ティアを先頭に俺たちは道を進みだした。
奥にB級モンスターが出現していて場の乱れが酷いのであろう、敵の数が半端じゃない。
モンスターは止めどなく出現し、俺たちに襲い掛かる。
が、ティアが刀を振るい、俺に到着する前にモンスターどもを薙ぎ払っていく。
美しく息が漏れそうな一閃。
チンッと刀を帯刀する音が、迷宮内にこだまする。
「しかしティアも強くなったんじゃないか? 現在どれぐらいのステータスなんだ?」
「どうぞ、ご覧くださいませ」
ティアは歩きながら、俺の目の前にステータス画面を表示する。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
神剣ブルーティア・ヒューマンモード
レベル:10
HP:5 FP:2500
筋力:27 魔力:15
防守:19 敏捷:30
運:25
スキル 刀2 明鏡止水1
サポート 収納 自動回収 通信 呼び出し 空間移動
遠隔接続
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
まだティアが戦い初めて二日しか経っていないというのに、もう既にレベルが10に到達していた。
いや、これは流石に速すぎだろ……
FPも2500に到達しているということは、ブルーティアの性能もデビルグリズリーと戦った時と比べると倍ほどになっている。
メキメキ強くなっていくなぁ、ティアもブルーティアも。
「あ、【空間移動】も一人で使用できるんだ」
俺はステータス画面を閉じ、ティアに話しかける。
「はい。スピレイ洞窟にも瞬時に移動できましたので、向こうで戦っている時間もそこそこありました」
「なるほどなぁ」
勝手に戦場まで飛んでくれて、勝手にレベルアップしてくれる。
最高だよ。最高すぎるよティア。
頑張っているご褒美代わりでもないけれど、敵を蹴散らしてくれていたティアの頭を撫でてやる。
彼女は気持ちよさそうに耳と尻尾を動かしていた。
「あの、戦いに集中できませんので、そういうのは後でやっていただけた方がありがたいのですが……」
「あ、だよね」
後ではやってほしいんだ。
ま、彼女が喜んでくれるなら、頭を撫でるぐらいいくらでもやってあげるけど。
「しかし、君の仲間も結構強いものだな」
「いや、中々のものだよ。うちの新人でもあれだけ戦えるのはいないよ」
「まぁ、うちの期待の新人ですから」
俺はティアが褒められたことを自分のことのように喜び、胸を張ってそう言っておいた。
身内が褒められるのって、案外嬉しいものだな。
道中はティアがずっと戦ってくれ、俺は楽々奥へと進んでいた。
スケルトンが全身をカラカラ鳴らせながら襲ってくると一閃。
コボルトが吠えながら飛び込んで来ると一閃。
刀の攻撃力もあり、ティアが苦戦するような場面も無かった。
その後小一時間ほど歩き続けて、最奥の祭壇へと到着した。
ここまでの通路と違い、気持ちいいぐらいの広い空間。
何百人と入ることができそうなぐらい広々としている。
天井も高く、見通しもよく、適度な戦いの末にここに到着したのなら、ちょっとした感動があるだろう。
確かに訓練場所としては申し分なさそうだ。
左右の壁にはタイマツが備え付けれていて、一番奥に膝をつく女性の像があった。
「……こいつか」
「そのようでございますね」
俺とティアは、その祭壇の前にいる巨大なモンスターを見上げていた。
赤い皮膚にニョロニョロと動くふと長い胴体。
尻尾の先まで赤く頭は三つある。
レッドヒドラ。
毒と相手をマヒさせる焼け付くような息を吐く、B級モンスターだ。
「た、頼んでおいてなんだが……こんなのに勝てるのか?」
兵士の一人が、声を震わせながら俺に言う。
「B級モンスターとか、普通の冒険者なら一人で戦うような真似はしないんだけどな。一人で戦うのは、本当の実力者か自分の実力を過信しているかのどちらかだろう」
「ご主人様はどちらなのですか?」
「俺は……どっちでもないよ。だってこいつと戦うのは俺たちなんだから」
「確かに。二対一でございますね」
ティアは眼鏡をくいっと指であげ、敵を見据えながら笑みを浮かべた。
【皆様へのお願い】
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
大感謝です!
これからもこの作品を他の沢山の方にも読んでいただいて、楽しんでもらいたいと考えております。
ランキングが上がれば自然に読んでくれる方も増えるので、ぜひお力添えのほど、よろしくお願いいたします。
そのため、もし少しでも、面白かった、続きが気になる。
そう思っていただけたなら、ブックマーク、高評価をお願いします。
評価はこの小説の下にある【☆☆☆☆☆】を押してもらえたらできます。
ブックマーク、高評価は、作品作りの励みになり、モチベーションに繋がります。
是非とも、よろしくお願いいたします!




