第13話 アルは王都に行く①
「おはよう、ペトラ」
「アルさん。おはようご……って、その方誰ですか?」
朝ペトラの店に顔を出すと、彼女は俺に続いて入ってきたティアを見ながらそう訊いてきた。
「あー……実はさ」
ペトラはうんうんと二回頷き、前のめりになり話を聞く。
「ほら、昨日まで俺が背負っていた剣、あっただろ?」
「ああ……そうでしたよね。それが何か?」
「あの剣が人間になってさぁ。それがこの子なんだよ」
「は……?」
ペトラはキョトンとティアを見て、数秒思案し、それを冗談だと捉えてしまう。
「あの、あまり面白くないですけど……」
「いやいや。冗談ではなくてだね、本当にあの剣があの子なんだよ」
「…………」
ジト目で俺を見るペトラ。
まぁ、こんな話、そう易々と納得できるわけないかぁ。
「初めましてペトラ。私はご主人様の剣、ブルーティアでございます。私のことはティアとお呼びください」
「……ふ、二人して私をからかってるんですか?」
俺はため息をつき、ティアに向かって命令を出す。
「ティア。ソードモードだ」
「かしこまりました」
ティアの身体が光に包まれて、剣の姿に変貌する。
俺はブル―ティアを手に取り、肩をトントンと叩く。
「な?」
「……どうなってるんですかー!?」
「あー、いや……説明すると長いんだけど……」
◇◇◇◇◇◇◇
「はー……神剣ですか……あ、そういえばアルさんのジョブ、【神剣使い】でしたもんね」
「信用してくれた?」
「はい。まぁ……」
俺はパンと目玉焼きを用意してもらい、口に運びながらペトラと会話していた。
ティアは俺の真後で目を閉じ静かに立っている。
横に座ればいいのに。
「でも、何でそんなこと私に説明してくれたんですか? 別に詳しく話しなくても、黙ってればよかったじゃないですか」
「ペトラには知っててほしかったんだよ」
「私に知っててほしかったって……もしかして私のこと特別だと思ってくれてるんですかー!?」
ペトラは顔を真っ赤にし、大慌てしている。
「まぁ、そうかな」
「えええ、うえええええっ!?」
「だってペトラとは、パートナーになりたいからな」
「パパパ、パートナーだなんて話が飛躍しすぎですよー! もっとこう、恋人だとかそういう段階が……」
ペトラは目を回して、頭から煙を噴き出した。
この子、何か勘違いしているな。
「いや、俺が言っているのは仕事のパートナーになりたいって言ってるんだよ」
「し、仕事?」
「ああ」
ペトラは自分の勘違いに気づき、パニック状態で話を続ける。
「ししし、仕事って何ですか? 私お酒出すぐらいしか能がありませんし、アルさんにお酒出しながら戦えばいいんですか?」
「俺にお酒を出さなくてもいいし、戦わなくてもいいんだよ。簡単に言えば、この町で一緒に仕事しないかなって話」
「し、仕事ですか……えっと……ええ?」
「ま、今すぐどうのこうのって話じゃないし、考えておいてよ」
「は、はあ……」
「アル様」
ティアの声に俺は彼女の方を振り向いた。
微笑を崩さないままティアは言う。
「私、そろそろモンスター退治に出かけてもよろしいでしょうか?」
「ああ。頼むよ」
「かしこまりました。では」
ティアは頭を下げて店を出ようとする。
が、俺はふとティアがいない時――ブルーティアがない時にトラブルに巻き込まれたらどうしようかと考えた。
どう考えてもよろしくないよなぁ。
「あー、ティア」
「なんでございましょう?」
「ティアがいない時に誰かに襲われたら困るから、その、何かいい方法はないものだろうか?」
「そうでございますね……では、離れていても会話ができる【通信】とご主人様が呼んでくだされば一瞬で駆けつけることができる、【呼び出し】。この二つのサポートを習得しておくというのはどうでしょうか?」
【通信】と【呼び出し】か。
なんて便利な機能なのだ。
そんなの、取らないわけにはいかないだろう。
「じゃあその二つの習得を頼む」
「かしこまりました」
ティアが目を閉じると、体が一瞬淡い光に包まれた。
そして大きな瞳をパチッと開け、俺に頭を下げる。
「では、行ってまいります」
「ああ。気をつけてな」
俺は笑顔でティアを送り出した。
ペトラはそんなティアを見て、いまだに信じられないと言ったような顔をしている。
「……なんだかよく分かりませんが、【神剣】って凄いんですね」
「ああ。本当に便利……と言うか、便利を通り過ぎてチート性能だよ」
「チート?」
チートという単語に首を傾げたペトラだったが、ハッと急に何かを思い出す。
「あ、そうだ。ルカにお店頼んでおかなきゃ」
「ルカ?」
「あ、私の妹なんですけど……留守にするから代わりにお店を任せようと思って」
「ふーん。なんで留守にするんだい?」
「アルさんから受け取った素材を本部の方へ納品しに行こうと思っていて」
「ギルド本部か……たしか、レイナークにあるんだっけ?」
「はい。そうですよ」
「……だったらさ、それ、俺も付いて行ってもいい?」
「え……何でですか?」
ペトラは頭に疑問符を浮かべてそう訊いた。
「後学のためにさ」
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