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死に損ないは笑う  作者: 真咲 タキ
第2章 冒険者見習い篇
22/28

宿

 ジンがシルバの手形(足形?)をとって受付のお姉さんに渡すと彼女は手際よく書類にサインを済ませ、胸ポケットから何かを取り出して蓋を抜いた。


 蓋がとられ、その中身があらわになった。

 中には針がついている。

「ではお客様、この針で指をさして血を出してください」


 彼女はニコリと笑って言った。

 指を針にで刺して血を出すだと!

 なんか簡単そうに言ってきた。


 ジンは日本人。

 自ら進んで指を針で刺した経験などない。


 ジンは恐る恐る針に指を当てた。

 これに指を刺す。

 分かってはいるが体が動かない。

 すると受付のお姉さんが突然上から指を叩いてきた。


 もちろん、指は針に刺さって血が出てきた。

 痛かった。


「たまにいるんですよね。冒険者は怪我してなんぼなのに針を怖がるんですよ。お客様はオオカミを連れていらっしゃいますが、案外普通の方なんですね」


 彼女からどこか硬さが抜けた。


「いつもこういう時は指を叩くんですか?」

 ジンは聞いた。


「私はただマニュアル通りに対応しただけですよ」

「では登録が完了しました。まず、お客様は登録初日ということでEランクに登録されています。ランクによって受けられる依頼に制限があります。掲示板から依頼書をとるときは十分にご注意下さい」


 ジンはギルドランクの説明を求めた。

 ギルドはA〜Eに冒険者のランクを分け、ランクに見合った難易度の依頼を冒険者に受けさせるらしい。


 なるほど、合理的なシステムだ。

 実力に見合った仕事をしなくては死人が出て働き手が減る。

 それを防止できるようにシステムが出来上がっている。

 ジンは納得した。



 ジンは受付嬢に礼を言ってこの建物を出ようとした。

「ちょっと待て」

 コリーが話しかけてきた。


「サリーナ、こいつには監視をつけたい。構わないな」

「ギルドとしましては承諾しかねます」


「ではこいつにはパーティーメンバーをつける。それは構わないな」

「なるほど、それなら問題ないでしょう」

 なぜかジンが答えないうちにパーティーの結成が約束された。

 ジンはパーティーメンバーの顔をまだ知らない。

 しかも実質そのメンバーはジンの監視らしい。


 面倒なことになったとジンは思った。

 ジンが文句を言おうとしたがコニーに遮られた。


 ギルドとして、パーティーの強制はありなんだろうか?


 あれよあれよという間に明日メンバーと会うことになった。


 ………………






 ジンはギルドを出ると宿屋を探した。

 記憶を参照する。


(路地を曲がって正面に古びた宿がある。)


 ジンは記憶に沿ってあるいた。

 目の前に古びた家が見えてきた。

 本当に記憶さまさまである。


 コンコン

 ジンはドアをノックして扉を開けて中へ入った。


「いらっしゃい、お客様初めてみる顔だね?ここの利用は初めてかい?」


 ふっくらとした女性が話しかけてきた。

 どうやらこの宿の女将さんらしい。


「はい、旅の者です。ああ、ついさっき冒険者になったんでした。ここは幾らで泊まれますか?あと、2メートル程の使い魔を泊められますか?」


 ジンは尋ねる。


「ここは一泊銅貨3枚だよ。魔獣も一緒の部屋に入んな!」

 女将の元気な返事が返ってきた。


「女将さん、ここに2年泊まるからまけてくれない?」


「2年かい?2年なら銅貨1460枚だね?うーん、じゃあ1400でどうだい」

 ジンは頭の中で所持金を計算した。


 銅貨に換算して1305枚しかない。


「女将さん?1300じゃあダメ?」

「本当に2年泊まるのかい?」

 ジンは頷いた。



「いいだろう、銅貨1300枚であんたを泊めてやろう」

 女将さんが交渉の終了を宣言した。

 ジンは金貨10枚、銀貨30枚を女将さんに渡した。

 女将さんはまさか一括払いだとは思っていなかったらしい。

 驚いた顔をした。



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