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死に損ないは笑う  作者: 真咲 タキ
第1章オハヨウ
15/28

欠陥

 ジンはセツナからステップ3に進める許可を得て、今日は魔法空間座標について訓練を受けることになっていた。



「まずは魔法空間座標とは何かより詳しく説明する。何日か前にお前が目的座標を設定したことがあったな?それを思い出しながら聞いてほしい」


 セツナの講義の始まりだ。


「魔法空間座標とは私達魔導師が魔法を発現させやすくするためのものだと思ってくれ。頭の中にx軸、y軸、z軸を引っ張る。そしてその座標と自身の固有回路を重ね合わせる。するといままで(ここ)や(あそこ)で指定していた目標座標がただ一つの点として扱うことが可能になる」


「目標が点になることで余分に固有回路を引き延ばすことがなくなり、もっともシンプルな魔法回路の形成が可能になるのだ。その結果、魔法は術者の望むものと限りなく同一の事象を引き起こすというわけだ」


 なるほど、分かりやすい解説だ。


 セツナは語りを止めず、次の説明を始めた。


「さらに、より熟練の術者は、固有回路を体の外にまで引き延ばす。魔法を引き起こす原点とも言える固有回路をだ。

 前にも説明したと思うが魔術師は自身の固有回路を引き延ばし、目標物に魔法回路を書き込んで魔力を流して魔法を発動する。


 つまり、固有回路を体の外に延ばしておくことでよりスムーズに魔法を発動できるようになる。

 短かった腕が伸びて長い腕になったことで、今まで歩かないと取れなかった物が歩かずに取れるようになったようなものだ」


 セツナは一息に語り、コップに手を伸ばしてコップを掴んで水を飲んだ。


「私がお前の訓練時に開いたゲートはこれを使ったものだ。この山には私の固有回路を張り巡らせている。だからジンが外にいてもどこにいるのかタイムラグなしに感知できるし、ゲートの設置もできる」


「ジン、ステップ3では固有回路を外に延ばす訓練をしてもらいたい。それに速やかな魔法回路の形成もしてもらう」


 ステップ3はなかなか難易度の高いものだった。

 セツナはいつもそんなに難しいことをやっていたのか。


 ジンは感心した。


 そしてジンはジャックマメなしで行なうステップ3に挑むこととなった。

 ……………






 うぬ、うぬぬぬ。

 頭の中で青い線を引っぱろうとした。

 しかし全然動かない。

 ジンは2ヶ月もの時間をかけて少しずつ、少しずつ固有回路を引き延ばした。


 その間、固有回路を引き延ばし、魔法を発動する訓練も行った。

 魔法回路の形成が成功してスムーズに魔法を引き起こすことができた。

 どうやら固有回路全体を引き延ばすことは自分にはできないらしいことをジンは悟った。

 肝心の固有回路の拡張はぜんぜん進まなかった。



 2ヶ月、3ヶ月と月日が流れ、ついにセツナから通告が出た。


「ジン、どうやらあんたの成長はここまでらしい。これまでご苦労だった。あんたはこれで卒業だ」


 ジンに下された通告はこれ以上魔法の技術を身につけることができないという重いものだった。


 ジンが何ヶ月もかけて引き延ばすことができた固有回路はたったの1.5メートルだった。

 今はジンを球で包むように広がっている。

 前後左右上下に一歩踏み出せば補える距離だった。



 ジンは悔しかった。


「ジンはよくやった。しかしこればかりは生まれ持ったものだ。いいじゃないか。魔法が使えないわけじゃない。魔法を使えないやつからすればあんたは恵まれているよ」


 セツナは目からポロポロと涙を流しながら言った。

 セツナが泣いていた。

 珍しくシルバがセツナを励ますようにセツナに顔をこすりつけた。


 卒業か

 ジンは思った。

 また1人旅が始まる。

 セツナのいない世界がやってくる。


 別れの時がやってくる。








ジンは異世界出身。もちろん我々同様、魔法を使ったことはありません。

そもそも魔法を使えない世界から来たのです。

ジンの体は魔法を使いには適しておらず、例え調整がされたとしてもこの世界の住人であるセツナのようには生きられないのです。

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