世界
ゴクン
ジンはジャックマメを飲み込んだ。
魔法回路の全てを知るために。
ピシリ
ああ、あの感覚がやってきた。
見なければならない。
目を向けなくてはならない。
ジンは意識を体の内側に向けた。
青い黒い線が無数に絡み合っている。
たしかセツナは自分は木を見て森を知った気になっていると言っていた。
そして全体を見渡せと言っていた。
ああ、森を知らなくてはいけない。
さあ、森に目を向けよう。
意識をいつもより浅くした。
黒い世界だ。
ジンが始めて見た黒い世界が広がっていた。
これが森だ。
この森になにがあるというのだろう?
グワリ
いつもの歪みを感じる。
ジンは違和感を我慢してしばらく待った。
なにも変化が起こらない。
ジンはこのまま待っていてはダメだと思った。
何かしなくては、、、。
たしかセツナは歪みを直すことそのものは褒めていた。
そうだ、歪みを直すことは正しいことなんだ。
ジンはいつも通りに歪みを直した。
そして歪みを直したその瞬間、黒い世界の中心に光が生じ、その光は瞬く間に全体に広がっていった。
黒い世界に葉脈のような筋が走った。
木を見ていては見ることができない光景がそこにはあった。
まさかあの線がこんな綺麗な模様を描いていたなんて。
これがセツナの見せたかったものだと分かった。
ずっと見ていたい光景だった。
しかし、意識は自然と浅くなり、ついに世界は現実に引き戻された。
ジャックマメの効果が切れたのだ。
…………
「・・・」
「ジン!」
「・・・」
「ジン‼︎」
「はい、、、。」
「その反応、見れたのかい。綺麗だったろう」
返事をするのが辛かった。
言葉を話すたびに口からあの世界の光景が漏れ出してしまいそうな気がした。
「はい」
あの光景が忘れられない。
また見てみたいと思った。
あの光景を一生見ていたかった。
しかし
「ジン、魔法を使う者は魔法に魅せられてはいけない。あちら側から戻ってこれないからだ」
セツナは残酷にもそう告げた。
「でもっ」
ジンは言い返そうとした。
「ジン、あんたは魔法を使いたいんだろう?魔法を使いたければ魔法の誘惑に負けたらいけないんだよ。魔法使いはじっと耐えながら美しい世界をただ眺める。そしてその光景を作り出すのも魔法使い自身なんだ」
セツナは言う。
「世界をコントロールしなきゃならん。コントロールを失った魔導師は物言わぬ物体と成り果てる。虫以下の存在になる。きちんと毎回あの世界から戻ってこい」
セツナは真面目に言った。
その後、セツナはは語ってくれた。
どうやら光の正体はジンの魔力らしい。
ジンは歪みを直すために魔法もどきを使っていたのだ。
回路に流すのも魔力、回路を動かすのもまた魔力、そして回路そのものも魔力で形成されているらしい。
だから魔法回路に流した魔力は淀みなく滑らかに回路全体に行き渡る。
そして魔法空間座標について習った。
ジンの魔法もどきは目標座標を歪みに設定したものらしい。
ジンはこの日魔法の全てを知った。
決して呑まれてはいけない美しい世界を知った。
ジンは翌日から「世界から戻ってくる」訓練を行った。
あの世界に入っていけないことが苦しかった。
魔法は美しい。そして悲しい。
シルバがジンを心配そうに見つめていた。




