魔法回路
ジンは肉体強化を習得し、次のステップに進んでいた。
今日はセツナに魔法回路について学ぶことになっている。
「ジン、まず魔法の仕組みを教える。
仕組みは簡単で魔法回路を組み立て、魔力をエネルギーにして事象を引き起こす。たったこれだけだ。
なお、肉体強化は固有回路という魔法回路を身体中に張り巡らせた状態であり、固有回路は人によって異なる構造を持つ」
「通常私達魔導師、又は魔法使いはこの固有回路を引き延ばすことで新たに回路を作る。ジン、魔法回路を一から作る大変さをお前は知っているな?
今までのお前の訓練は魔法回路の形成に他ならない。もちろん体力作りの意味合いもあったがな。
お前が魔法回路に費やした時間はおよそ4ヶ月だ。
それだけ時間がかかるということだ。
だから固有回路を使って新しい回路を組み立てるのさ。すでにあるものの形を変えるのにさほど時間はかからない」
ジンはセツナの説明を聞いて理解した。
なぜかセツナのかけた肉体強化と自分でかけた肉体強化の感覚が違っていたのだ。
そして始めてシルバと会った日のあの感覚はシルバの魔法回路が関係しているのだろうということをジンは理解した。
「ではまずジンは魔法回路を引き延ばす感覚を覚えてもらう」
セツナはそう言って小さな赤い実を差し出してきた。
「セツナ?これはなんなんだ?」
ジンは尋ねた。
セツナは答える。
「それはジャックマメだ、食べた者のもつ固有回路を乱れさせる効果を持つ。魔法を使う者からすれば毒みたいなもんさ」
毒!それは食べたらいけないんじゃ、、、
「心配せずとも死にはしない。まあジャックマメの煮物でも作ってガツガツ食べたら話は別だがね。きっと魔法回路がボロボロになるだろうさ」
「今回はジャックマメ1粒だけだから安心せい!
ただし食べるのは1日に一粒だけだよ!
だが食べた後には少し吐き気がすると思う。
まあ、そんなもんさ。
そしてジャックマメを食べる理由とは
少し無理やり固有回路を引っ張ってやるためさ」
「ジン、あんたはその引っ張られる感覚を覚えるんだ。分かったね」
ジンは頷いた。
ジンの隣ではシルバが心配そうにジンの顔を見て見ていた。
ジンはジャックマメを受け取り、水と一緒に一息で飲み込んだ。
その瞬間体の中で何かが掻き回される感覚を味わってジンは地面にしゃがみ込んだ。
少し気持ち悪いなんてもんじゃなかった。
体がバラバラになりそうだ。
それでもジンは何か感覚を掴もうと必至に戦った。
「ジン、しっかりしな!青い線をイメージするんだ。必ずそこに何かが起こる」
セツナの声がした。
青い線、魔法回路
ジンは意識を体の内側へ向けた。
青い線、ジンの固有回路、、、
はじめジンは意識の内に黒い世界の広がりを感じた。
そこからさらに意識の深いところへ向かう。
記憶の参照とは異なる感覚だ。
すると黒い世界は細い糸の集合であるように見えてきた。
黒っぽい青だった。
これが俺の固有回路かとジンは思った。
ピシリ、グワグワッ
痛みが走る。
ジンは回路に違和感を感じた。
ピシリ
ああ、そこか。
回路に歪みが生じている箇所をジンは発見した。
ジンは回路が引っ張られる方向と逆方向に力を加え、自身の感じる違和感をなくそうと踏ん張った。
しばらく抵抗感が続いた。
やがて抵抗がなくなり、
ジンは意識を外側に戻した。
痛みはなくなっていた。
よく見るとシルバがクッションのようにジンを包みこんでいた。
シルバ、ありがとう。
ジンの痛みが引いたことに気づいたのだろう。
セツナがこちらに向かって歩いてくる。
「ジン、おつかれ、今日はこれで終わりだ。夕飯にしよう」
セツナが言った。
いつのまにか夜になっていた。




