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ジンは走っていた。
あのオオカミを運んだ時の感覚が忘れられなかった。
あれが肉体強化の完成形なのだろうか?
あの感覚はセツナの肉体強化とはまた違っていた。
隣を見るとあのオオカミが自分よりも上手に肉体強化をかけて走っている。
どうもこいつはそこら辺のモンスターや動物とは異なるようだ。
確かセツナがこいつのことを神の使いと言っていた。
ジンは足に力を入れ直し、跳んだ。
あのオオカミを追い越した。
ウォウン
あいつが吠えた。
なんだろうと思って振り返ってみるとあいつがコレが正しい肉体強化だと言わんばかりに跳び上がっていた。
あいつが頭上を飛び越え、10メートル程向こうに着地した。
あいつ、からかっているな?
あいつ、、、!あいつ?
ジンはオオカミに自分の実力不足を咎められたのと同時にオオカミの呼び名が(あいつ)になっていることに気がついた。
ジン慌てて言った。
「おい、お前の名前はなんていうんだ?なんて呼べばいい?」
オオカミが首を傾げたように見えた。
「名前だよ、名前」
ウォウン
返事がそれじゃあ、分からないだろう。
やっぱり神の使いと言えどもただのでかいオオカミだった。
ウォウン?
なんか変なやつを見る目を向けてきた。
ちゃんと首を捻っている。
しょうがない、勝手につけてやる!
ジンはあいつに向かってこっちに来いとジェスチャーをした。
あいつがテクテクと歩いてこっちにやってくる。
そしてジンは名を呼んだ。
「よし、僕はこれからお前のことをこれからシルバと呼ぶ。いいな」
ウォウ
本当にわかっているのだろうか?
シルバが吠えて応えた。
念のため再び名を呼ぶ。
「シルバ!」
ウォウン?
よくわからない返事をした。
まあ、これからきっと長い付き合いになる。
きっと分かってくれるさ。
ジンは訓練を再開した。
この日ジンは肉体強化を失敗する度に背後からシルバにとび乗られた。
相手は2メートルの巨大なオオカミだ。
あの夕暮れとは違い、ジンはシルバの重みに耐えられず、バタンと倒れた。
………
次の日、また次の日とジンはシルバ先生の指導のもとで肉体強化を学んだ。
あそこに力を入れろ!
そこじゃない!
なかなかに厳しい指導だった。
しかし、そのかいもあって、ジンは肉体強化をほぼ完璧と呼べるほどに習得していた。
しかもセツナのお墨付きだ。
「これであんたもぴょん吉とは呼べなくなったねぇ」
セツナがそう言っていた。
肉体強化を習得したのはジンがこの世界に降り立ってから4ヶ月目の日のことである。
そしてセツナが言った。
「もうそろそろ次のステップに進んでみるかい?
次は魔術回路と魔導空間座標について教える」
ジンはもちろん頷いた。
ついに魔法を使う時がきた!
ジンは喜びに身を震わせた。
ジンを祝福するするかのようにシルバが吠えた。




