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裏切り者として死んで転生したら、私を憎んでいるはずの王太子殿下がなぜか優しくしてくるので、勘違いしないよう気を付けます  作者: みゅー


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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 それを思い出し、翡翠は複雑な気持ちになりながらカーレルの誘いを受けた。


「よろしくお願いいたします」


 翡翠がカーレルの手を取ると、カーレルは部屋の中央へ翡翠をエスコートする。


 周囲の者はさっと場所を開ける。と、楽団もカーレルたちに合わせて音楽を変えた。


 こういったこともあるかもしれないと、何度もダンスの練習したとはいえ、それはジェイドだった頃の話。


 翡翠はかすかな記憶を頼りに音楽に合わせステップを踏むので精一杯だった。だが、カーレルのサポートがとてもうまかったのでなんとか一曲踊りきった。


「楽しいひとときだった。また私と踊ってくれるね?」


 カーレルは翡翠をじっと見つめてそう囁く。


「はい」


 そう答えると、翡翠は恥ずかしくてうつむいた。


「疲れただろう、少し休もう。喉が乾いたんじゃないか? シャンパンはどうかな?」


 カーレルはそう言って壁際に翡翠をエスコートする。翡翠はカーレルの態度に戸惑った。


「あの、カーレル殿下。一つ質問してもよろしいでしょうか」


 翡翠がうつむきながらそう尋ねると、カーレルは優しく答えた。


「もちろん、なんでも訊いてほしい」


「先ほどからなにかその、いつもと感じが違うようなのですが、一体どうされたのですか?」


 すると、カーレルは翡翠の顔を覗き込む。


「君の意見を参考にした。それに私自身もそうするべきだと思った」


 そう言って優しく翡翠の額にキスをした。


 晩餐会が終わり、カーレルに部屋までエスコートしてもらうと翡翠はカーレルの言った意味を考えた。


 だが、どうしても自分の都合のよいように考えてしまいそうになり、そんなはずはないとそれを必死に打ち消した。


 翌日は朝早くからの移動だったが、翡翠は色々考えてしまい寝付けず、結局寝付いたのは朝方だった。


 エミリアに起こされ、起き上がるとぼんやりとエミリアを見つめ続けた。それを見てエミリアは心配そうに言った。


「なんだかお疲れのようですけれど、眠れなかったのですか?」


 そこで翡翠はハッとする。


「大丈夫です。早く食堂に行かないと、みなさんを待たせてしまっているかも」


 翡翠はそう答えると慌ててベッドから降り、よろめいて自分の鞄を倒して中身をぶちまけた。


「ごめんなさい」


 そう言って謝りながら、鞄の中身を拾おうとしたとき以前ミリナからもらった茶葉の缶が目について拾い上げた。


 そんな翡翠にエミリアは優しく声をかける。


「翡翠様、あとの片付けはこちらでやりますから、慌てずにゆっくり支度をいたしましょう」


 そう言ったあとに、翡翠が手に持っている缶を見つめ驚いた様子で言った。


「まぁ、その茶葉はフルスシュタットの丘で取れる稀少な茶葉ではありませんか。それをどうされたのです?」


 翡翠はミリナからもらったと答えようとして、秘密にしてほしいと言われたことを思い出した。


「えっと、あの、いただきもので、勿体なくて飲めなかったんです」


 するとエミリアはクスクスと笑った。


「勿体ないだなんて、翡翠様らしいですね。でも、プレゼントされたなら飲まれたほうが相手も喜ぶと思いますよ」


「そうですね、今度からお茶の時間にこれを淹れてください」


 翡翠はそう言ってその缶をエミリアに渡し、身支度をした。


 ちょうど支度を終えたところで、ドアがノックされる。


 なにかあったのだろうか?


 そう思っていると、訪ねて来たのはカーレルだった。


「カーレル殿下、一体どうされたのですか?」


 カーレルは小さく咳払いをすると、恥ずかしそうに視線を少し逸らして言った。


「君を迎えに来た」


「迎えに?」


「そうだ。食堂へ行こう」


 そう言うと、手を差し出した。今までどこへ行くにも絶対に一緒に行動はしていたものの、ここまでされることはなかった。


 翡翠は戸惑いながら差し出された手を取ると、カーレルは嬉しそうに微笑み翡翠の腰に手を回し自身に引き寄せ、食堂までエスコートした。


 朝食の間もカーレルにじっと見つめられることがあり、翡翠はどうしてよいかわからずひたすら食事を口に運んだ。


 朝食を終えると、すぐの出発となった。


 馬車の中でもカーレルは翡翠の隣に座り、じっと翡翠を見つめてくることが多かった。そして絶えず翡翠を気づかってくれた。


「翡翠、眠ければ私にもたれてもかまわない」


 そう言ってフードの上から翡翠の頭を撫でた。


 向かいの席で二人を見ていたラファエロは、呆れたような顔をしてため息をついた。


「朝食の席でもだが、俺も一緒にいることを忘れないでほしいね」


 そう言うラファエロを完全に無視し、カーレルは翡翠をただ見つめた。


 カーレルの態度に緊張したが、昨夜寝ていなかったため流石に睡魔に勝てずに翡翠はいつの間にか寝てしまっていた。


 ふと目を覚ますとカーレルの胸に抱かれた状態で寝ていることに気づいて、慌ててカーレルから体を離した。


「殿下、申し訳ありません!」


「なぜ?」


 そう言うと、ハンカチを取り出し翡翠のよだれを拭った。


「えっ? あ、あの、申し訳ありません!」


 するとカーレルはふっと笑った。


「途中、君は口をもぐもぐさせていた。とても可愛らしくて私は見ているだけで癒された」


 そんなことを言われ、翡翠は恥ずかしくてうつむいた。


 本当にカーレル殿下は一体どうしてしまったの?!


 そう思っていると、カーレルに肩を抱かれて引き寄せられた。


「まだ次の村に着くまでには時間がある。休むといい」


「は、はい……」


 翡翠は恥ずかしくてそのまま動かずにぎゅっと目を閉じると、次に休憩するビスに着くまで寝たふりをして過ごした。


 村に着くとすぐに宿泊先の割り当てられた部屋へ行き、疲れたからと部屋で夕食をすませてすぐに横になった。


 明日もあんな調子でカーレル殿下に甘やかされ続ければ、心臓がもたない。そんなふうに思った。






 翌朝、翡翠が疲れているだろうと気づかってくれたのか、自然に目が覚めるまで誰も起こしに来なかった。


 目覚めると昼近くになっており、慌ててベッドから出ようとしたがエミリアがそれを止めた。


「旦那様より、今日はゆっくりでよいとお話がありました。朝食はお持ちいたしますから、お部屋でゆっくり召し上がっていただいてそれからお着替えをしましょう」


 エミリアがそう言うと、すぐに朝食のカートが運ばれてきた。


 翡翠はみんなの好意に甘えて、ゆっくり部屋で朝食を取ることにした。


 暖かい野菜たっぷりのスープを口に運んでいるとき、翡翠はぼんやりと昨夜のことを思い出した。


 ニクラスは翡翠に会えたことを、純粋に喜んでいるように見えた。それに、カーレルやラファエロも本気でいつも翡翠を心配してくれている。


 その心配はジェイドではなく翡翠に向けたものであることはわかっていたが、それにしても裏切り者の生まれ変わりに、あんなに心配することなど普通できるものなのだろうか?


 それにヘルヴィーゼ国の者たちは、翡翠の容姿を見ても誰も翡翠を責めたりしなかった。


 もしかしたら、ニクラスが言い聞かせているからかもしれないがそれにしても、なにかがおかしい。


 考えてみれば、この世界に召喚されてからサイデュームでも少しずつだが違和感を感じていた。


 裏切り者であるはずの翡翠を賢人という名目とはいえ、あっさり教会の内部に入れる許可をだしたり、町中でフードが外れたときに町民が頭を下げたり、その上ミデノフィールドでエルレーヌに顔を見られているが、彼もなにも言わなかった。


 これは一体どういうことなのだろう? もしかしたらジェイドの死後に誤解が解け、ジェイドは裏切り者ではなく世界を救おうとしていたことを知られたのではないか?


 それに一番おかしかったのは、一昨日からのカーレルの態度だった。その理由を尋ねたとき、カーレルは『君に言われた』と言っていた。

誤字脱字報告ありがとうございます。


書籍化希望される方は、高評価・ブックマークをよろしくお願いいたします。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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