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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。
おそらく魔法を使ってこの仕掛けを作っているのだろう。
そんなことを思いながら、その光の粒の中を進んでいくと大きな人口の池があり、水面に色とりどりの花びらが浮いている。
さらに空を見上げると、花がなんの支えもなくふわふわと浮きながら巨大なアーチを描いていて、そこから花びらが舞い落ちてきていてとても美しかった。
人工池の中央には浮島があり、そこにヘルヴィーゼブルーのガラスでできた橋が渡されてある。
それを渡ると、丸みのある真っ白なガゼボがあり、ブルーのガゼボカーテンが風に揺られていた。
ガゼボには白とブルーを基調としたテーブルとイスがセッティングされていて、その周囲を花弁が舞っておりなんとも幻想的な景色だった。
エミリアはその椅子にまで案内し、ピンクの薔薇の蕾がたくさん入ったガラスのティーポットを持ってきた。
そして、ティーカップにそのお茶を淹れた瞬間、あたりに薔薇の香りが広がる。
「いい香り」
「はい。最高級の薔薇茶でございます。存分にお楽しみください」
そう言ってテーブルにティーポットを置くと、エミリアは一礼して下がっていった。
ふと見るとガゼボの横にある花壇の中にバードバスが設置してあることに気づき、そこにやってくる小鳥を眺めながらゆっくりとお茶を楽しんだ。
そのとき、ガラスの橋を渡り誰かが向こうから歩いてくるのが見えた。その人物が誰なのか見つめていると、それはカーレルだった。
殿下も庭でお茶を楽しみに来たのだろうか? だとしたら邪魔をしてはいけないから、部屋に戻った方がよいかもしれない。
そう考え、翡翠が立ち上がるとカーレルはそれを制した。
「そのままで、一緒に過ごしたい」
カーレルにそう声を掛けられ、翡翠がもう一度椅子に座ると、カーレルもほっとしたように微笑み隣の椅子に腰かけた。
エミリアが素速くカーレルのお茶を入れると、一礼して去っていきそれを見送るとカーレルが口を開いた。
「昔話をしても?」
先ほどニクラスと勝手に出かけたことを注意されるのだと思っていた翡翠は、驚きながらもとりあえずうなずいた。
するとカーレルは優しく微笑み話し始める。
「昔からとても愛している女性がいた」
翡翠はその告白にショックで目の前がぐるぐると回るような感覚に襲われながら、無言でうなずいてカーレルに話の先を促す。
「その女性はとても素晴らしい女性で、こんな私のことをあふれんばかりの愛情で包んでくれていた」
このとき翡翠はその女性がミリナのことだとピンときた。きっとジェイドの知らないところで二人は出会い、愛を育んでいったのだろう。
これ以上話を聞きたくなくてこの場を離れたい気持ちをグッと抑えると、目の前のティーカップを見つめる。
カーレルはそんな翡翠の気持ちを知ってか知らずか話を続ける。
「だが、私は彼女に優しくすることができず、彼女をとても傷つけた。そして、彼女が大きな使命を果たすために私のそばにいなくなって、とても後悔することになった」
翡翠はなんとか笑顔を作ると言った。
「仲直りを」
「仲直り?」
翡翠はうなずくと続ける。
「もし彼女に会うことが出来たら次はうんと優しくして、仲直りすればいいと思います。そんなに愛情深い女性なら、絶対に許してくれるはずですから」
そう返すと、カーレルの表情が明るくなった。翡翠はそのカーレルの表情を見てさらに暗い気持ちになる。
カーレルはミリナをとても愛しているのだ。いつも冷たい態度を取っているが、あれは愛情の裏返しだということなのだろう。
翡翠にこんな話をするなんて、翡翠がジェイドだったころ素直に伝えていた気持ちなど、カーレルにとっては取るに足らないことであり、どうでもよいことだったのだと思い知らされる。
そうでなければ、ジェイドの記憶を少しでも思い出しているはずの翡翠にこんな話をするはずがない。
翡翠は美しく舞う花弁に視線を移すと、それをぼんやり見つめ、いたたまれない気持ちになり立ち上がった。
「翡翠? どうしたんだ?」
そう言って不思議そうにカーレルは翡翠を見つめる。
「疲れてしまったので、先に部屋に戻ります。殿下はごゆっくりなさってください。それと、その愛する女性とお幸せに」
それだけ言って微笑むと、足早に部屋へ向かった。途中振り向くが、カーレルは翡翠を追いかけてくることはなく、それは当然のことだと分かりながらもさらにショックを受けた。
部屋に戻るとエミリアに手伝ってもらいながら、準備されたドレスに着替えるとぼんやりした。
エミリアはそんな翡翠をとても心配してくれたが、なんとか作り笑顔を返すのがやっとだった。
晩餐会までには戻ると言っていたニクラスは、宣言通り戻ってきてはいたが挨拶に追われていた。
今回の晩餐会は表向き外交の催し物となっているためか、外部からの参加者も多く含まれていたからだ。
ビュッフェスタイルで立食だったため、カーレルが翡翠のエスコートをしようとしたが、カーレルも挨拶に追われていたため、目立ちたくないからとそれを断り、少しそばを離れて部屋の隅でうつむいて過ごした。
ラファエロは晩餐会が始まってすぐに護衛長のストックに呼ばれ、なにやら話し込んでいる。
昼間のこともあり、そうして暗い気持ちで晩餐会の参加者たちをぼんやり遠目に眺めていたとき声をかけられた。
「ちょっとぉ~! なんでこんなところで壁の花になってるのさぁ~」
その声に驚いて顔を上げるとファニーが仁王立ちをしていた。
「ファニーさん。壁の花と言うか、今日は政治的にも大切なシーンのようですし、私が邪魔するわけにはいきませんから。それに、私はあまり目立ちたくないんです」
「そ~いうことじゃないよぉ~。だったらさぁ、それなりの配慮をするのが当たり前じゃん? エンジェルを放っておくなんて言語道断!!」
そう言って怒っているファニーに、エミリアが近づくとなにやら耳打ちし、それに対してファニーは楽しそうな顔をしてエミリアに指示を出した。
「あの、ファニーさん? 私、本当に大丈夫ですよ?」
なにやら企てているようだったので、慌てて翡翠はそう返す。
「なに言ってんのさぁ~。壁際で悲しげな顔をしていたくせにぃ。そもそもぉ、こんなふうに放っておかれるぐらいならさぁ、晩餐会なんて出る必要ないって!」
そう言うと翡翠の手を取り歩き始めた。
「あの、私はカーレル殿下の目の届く場所にいないといけないので、ここから離れられません」
するとファニーはピタリと立ち止まり、振り返って驚いた顔で翡翠を見つめる。
「はぁ? なにそれぇ?! あの根暗王子ときたらどんだけ束縛すんのさ! それに、別に屋敷を出るわけじゃないし、使用人たちにも翡翠がどこにいるか伝えてあるもん。少し離れるぐらい問題ないって! ほったらかしにしてるんだからさぁ~、文句言われる筋合いもないしねぇ」
そう言って肩をすくめると、歩き始めた。
確かに、屋敷から出なければカーレルもそこまで怒ることはないだろう。翡翠は黙ってファニーのうしろに続いた。
どこへ連れて行く気なのだろうと思っていると、小さな食堂へ通される。そこには晩餐会で供されたものと同じものが準備され、サイデューム国から翡翠に仕えてくれている使用人たちが待ち構えていた。
使用人たちの代表でエミリアが笑顔で出迎える。
「翡翠様、こちらでごゆっくりお過ごしください」
「えっと、私のために準備を?」
すると執事のブランドンが言った。
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※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。
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