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裏切り者として死んで転生したら、私を憎んでいるはずの王太子殿下がなぜか優しくしてくるので、勘違いしないよう気を付けます  作者: みゅー


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文章が稚拙なのでちょっちょりげす改稿します。

 研究所をあとにし、ニクラスのエスコートでフンケルンの街中を通ると、街が見渡せる場所に出た。


「この街は本当に美しい街ですね」


 翡翠がそう言うと、ニクラスは嬉しそうに微笑む。


「ありがとうございます。私もそう思います。そして、今はこの美しい街を守りたいと思っている」


 そう答えてニクラスは街を見渡した。翡翠はそんなニクラスの横顔を見つめると、同じように街並みを眺めた。


 街は活気に溢れ、子どもたちが楽しそうに笑う声や、売り買いする行商人たちの声が飛び交い、そこには軍が支配し自由が制限されていた頃の面影はない。


 翡翠はしばらくその平和な街の音に耳を傾けたあと言った。


 「守りたいものがみつかってよかったですね」


 思わず翡翠がそう言ってニクラスを見つめると、ニクラスも翡翠を見つめ返す。


 「本当に、そう思います」


 そのとき、風でニクラスの髪が少しなびいて、美しく紫色に輝く宝石のついたイヤリングをしているのが見えた。


「そのイヤリングは……」


 思わず翡翠がそう口にすると、ニクラスはそのイヤリングを片方だけ外しながら言った。


「よくお気づきになりましたね。このイヤリングは『ククルカンの宝石』でできています」


 そうして翡翠の手を取ると手のひらに乗せた。


 『ククルカンの宝石』は『レリック』として語り継がれている宝石で、それを身に付けるとどんな魔法や毒物からも身を守ることができると言われている。


 それで過去研究所へ忍びこんだとき、ジェイドのかけた幻覚魔法がニクラスには効かなかったのだと、美しい輝きを放つ宝石を見つめながら納得した。


「とても美しい宝石ですね。この目で見ることができる日が来るとは思いませんでした。大切なものなのに、見せてくださってありがとうございます」


 そう言ってニクラスにそのイヤリングを差し出すが、ニクラスはそれを押し戻した。


「そのイヤリングは差し上げます。片方だけでも十分その役割を果たせますから」


 翡翠は驚いて、首を横に振った。


「こんな大切なものいただけません!」


 そのとき背後から誰かがニクラスの肩をつかんで無理やり振り向かせた。驚いてそちらを見ると、そこにカーレルとラファエロがいた。


 カーレルはニクラスの襟首をつかむと、顔を近づけて言った。


「貴様、こんなことをしてどういうつもりだ?」


 翡翠はいつになく怒りをあらわにするカーレルに驚き呆気にとられたが、ニクラスは余裕の笑みを浮かべて返す。


「『こんなこと』とは? ここはヘルヴィーゼ国だ。私は私の思うように行動する。それをお前にとやかく言われる筋合いはない」


 するとカーレルはニクラスを睨みながら言った。


「このことは覚えておくがいい」


 そのやり取りを見て、ニクラスがカーレルに無断で自分を連れ出したのだと気づいた翡翠は、このままだと二国間で問題になりかねないと思い慌てて頭を下げた。


「勝手に行動してすみません。私がブック首相にお願いしたんです、ごめんなさい」


 カーレルとニクラスは驚いた様子で翡翠を見つめた。翡翠は頭を下げたまま話を続ける。


「ここはヘルヴィーゼ国なのでブック首相と一緒にいれば何をしても許されると思い込んでいました。本当に申し訳ありませんでした」


 翡翠がそう言って顔をあげると、カーレルは酷く悲しそうな顔で翡翠を見つめていた。


 ニクラスは慌ててなにかを言おうとしたが、そのときラファエロがニクラスとカーレルの間に入り二人を止めた。


「ブック首相、それにカーレル殿下、ここは街中です。とにかく場所を移しましょう」


 その言葉にカーレルは我に返ったようにニクラスの襟から手を離すと、自分が乱したニクラスの襟を整えて微笑んだ。


「とりあえず、ブック首相の屋敷に戻りましょう」


 ニクラスはカーレルに触られた部分をゴミを払うようにすると、カーレルに微笑み返す。


「そうだな、そのほうがよさそうだ」


 そこでラファエロが呆れたように呟く。


「二人とも翡翠に関することになるとすぐこれだ」


 そう言うと一度言葉を切って、少し考えてから呟く。


「まぁ、俺も対してかわりないかもな」


 そして翡翠に向きなおると手を取った。


「翡翠、あんな奴ら置いて一緒に戻ろう。言っておくが、お前はなんにも悪くないことはみんな知ってるからな」


 そう言って、翡翠の手を引いて屋敷に向かって歩き始めた。


 ニクラスとカーレルは、ばつが悪そうにその後ろに続いて歩いた。


 屋敷へ着きエントランスに一歩足を踏み入れた途端、書類を手にした恰幅の良い中年男性がニクラスに駆け寄る。


「ブック首相! 帰りをお待ちしておりました。早急に対処していただきたい事案があるのです」


「スローン、ここまで押しかけるとは何事だ」


 そう言いながらニクラスはスローンから書類を受け取ると、その場でざっと目を通して言った。


「わかった、すぐに対処しよう」


 そして翡翠に向き直る。


「申し訳ありません。そういうことで、私は少し失礼させていただきますが、晩餐会には間に合わせます」


 カーレルが間髪入れず満面の笑みでそれに答える。


「ブック首相はお忙しいようだ、ならば無理をなさらなくても結構です」


 それに対してニクラスは笑顔で返す。


「ならばなおのこと、私は早く用事を済ませる必要がありそうだ」


 そして、翡翠の手を取り甲にキスし翡翠を正面から見つめた。


「必ず戻ります」


 ラファエロは口元をひきつらせ、カーレルは笑顔のまま凍り付いた。


 こうしてニクラスがスローンと共に屋敷を出ていくのを見届けると、翡翠は疲れていたのでカーレルに断って一度部屋へ戻ることにした。


 部屋に戻るとニクラスにイヤリングを返していないことを思い出し、翡翠はいつでもニクラスに返せるよう大切に袋に入れると首から下げて持ち歩くことにした。


 『ククルカンの宝石』は国宝級の代物である。そんなものを受け取ることはできない。それに、なくしてしまったら大変なことになるので、早いところ返してしまいたかった。


 部屋で一息ついていると、エミリアが心配そうに翡翠に行った。


「翡翠様、とてもお疲れのご様子ですね。このお屋敷は庭がとても素敵なんですよ? お庭でお茶を楽しみませんか?」


 気遣ってくれる存在をありがたいと思いながら、翡翠はその提案を素直に受け入れることにした。


 エミリアが言った通り、この屋敷の庭の造形はとても素晴らしいものだった。庭に入るとすぐに薔薇のアーチがあり、それをくぐると急に開けた場所にでた。


 そこには様々な花が円状に規則的に植えられ、周囲にはキラキラと輝く光の粒がふわふわと舞っていた。


 翡翠はその光の粒の正体を知るために一粒握ってみた。すると冷たい感触がありそっと手を開いて見てみると、手のひらが濡れていて光の粒が水の粒だということに気づく。


 その粒はこちらが触ろうとしなければ触れることはなく、翡翠がその中を歩いても濡れてしまうことはなかった。

誤字脱字報告ありがとうございます。


書籍化希望される方は、高評価・ブックマークをよろしくお願いいたします。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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