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裏切り者として死んで転生したら、私を憎んでいるはずの王太子殿下がなぜか優しくしてくるので、勘違いしないよう気を付けます  作者: みゅー


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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 こうしてみんなに気を遣ってもらい楽しい時間を過ごし、翌朝は早くに屋敷を出てヘルヴィーゼの首都フンケルンへ向かった。


 ヘルヴィーゼ国は国土がとても小さく、夕方には首都であるフンケルンへ到着した。


 国境付近の街並みは、サイデュームとあまり変わらなかったがフンケルンに入ると一気に雰囲気が変わった。


 フンケルンはサイデューム国と違い丸みを帯びた白亜の建物が多く、その形も独創的なものが多い。


 そしてブルーを好む傾向にあるのか、建物内部の装飾はほとんどがブルーで統一されていた。


 比較的温暖な地域だが湿度が低いのか空気がカラッとしており、どの屋敷もドアを開け放って外の空気を取り入れるだけで涼しく過ごせる。


 そして、どの屋敷も中が見えないよう入口にブルーの布がかけられているため、夕日に染められた白亜の建物から、ブルーの長い布が風ではためいていてとても美しい光景だった。


 そんな美しい街並みを馬車の中から眺めていると、翡翠たちは間もなく首都にあるニクラスの屋敷へ到着した。


 ニクラスの屋敷も例に漏れず白亜の丸みのある建物で、庭の装飾のほとんどがブルーで統一されている。


 ジェイドだった頃は急いでいたため、街中をこうしてじっくり眺める時間はなく、あらためてここに来られて感激していた。


 屋敷内に案内されると、国境付近の屋敷で受けた以上の最上級のもてなしを受けた。


 屋敷内の美しいヘルヴィーゼ・ブルーの装飾品を見せてもらい、その美しさに魅了されているとラファエロが翡翠に耳打ちする。


「ニクラスのやつ、こうやって国力を見せつけているんだろうな。きっと俺らは、国内のどこでも素晴らしいもてなしを受けられるはずだ」


 すると、ニクラスはそれに気づいたのかラファエロを見るとにっこりと笑った。ラファエロは呆れたように呟く。


「嫌みなやつだな」


 そんな中カーレルはいつもと変わらぬ様子で翡翠をエスコートしており、どう思っているのかはその表情からは読み取れなかった。


 部屋へ案内され、引き続きエミリアが身の回りの世話をしてくれたので、翡翠はほっとしたのと同時にゆっくりくつろぐことができた。


 目的であるフンケルンの『スタビライズ』には次の日に訪問する予定だったので、翡翠は早々に休ませてもらうことにした。


 翌朝、早めに朝食を終えて支度をすると、お茶を飲んで出掛ける時間までゆっくりとしていた。


 そこへ、ニクラスが一人で訪ねてきた。


 今までニクラスと会うときはカーレルやラファエロが一緒だったが、翡翠一人でニクラスに会うのはこれが初めてで、なにを言われるのかと少し不安に思った。


「翡翠、おはようございます。お茶を楽しんでいたのですか?」


 ニクラスはそう言って優しく微笑んだ。


「はい、お茶もお菓子もとても美味しいです。それに私がくつろげるようみなさん親切に最大限のもてなしをしてくれているので、居心地がいいんですよ?」


「それはよかった。なにか困ったことがあれば仰ってください。ところで『スタビライズ』には二人で行くことになりました」


 翡翠は首をかしげる。今までカーレルが翡翠になにも言わずにそばを離れたことはない。


 それに、カーレルが離れるときは必ずラファエロが同行していた。カーレルもラファエロも抜きにどこかへ出かけるなど考えられなかった。


「あの、このことはカーレル殿下はお許しになってくださったんですか? いえ、ブック首相を疑っているわけではありません。ただ、カーレル殿下には勝手に行動するなと注意されているので」


 すると、ニクラスは苦笑して答える。


「もちろん許可してくれましたよ。そもそもヘルヴィーゼ国では『スタビライズ』を置いている中央制御室に国家機密となる物が多く置かれていますから、外部の者は立ち入りを禁じているのです」


 それを聞いて翡翠は納得した。確かにジェイドのころ訪れたとき、『スタビライズ』から力を抽出するために様々な機械が取り付けられているのを目にした。


 しかも、それらには一見してかなり高度な技術を使っているのもわかった。


「そうなのですね、わかりました。私はカーレル殿下がお許しになったならそれに従います」


 そう答えると、ニクラスが差し出した手を取った。


 ヘルヴィーゼ国ではサイデューム国と違い、『スタビライズ』を教会が管理しておらず、国の研究機関が管理し専門の研究所に保管されている。


 翡翠はニクラスにエスコートされその研究所へ向かった。


 向かう途中、ニクラスは優しく翡翠に言った。


「この国では、そのフードをかぶらなくても大丈夫です。堂々となさってください」


 だが、翡翠にとって街中でフードを取るなどとんでもないことだった。


 それはニクラスもわかっているはずなのに、なぜそんなことを言うのだろうと翡翠は不思議に思いながらニクラスを見つめた。


 すると、その翡翠の様子に気づいたニクラスが苦笑して答える。


「この国には、元首が連れて歩く人物に対して失礼な態度を取るような愚か者はいません」


 その一言でこの国でのニクラスの権力がどれほど強大なものなのかがうかがわれた。だが、それでもフードを取らない翡翠を見て、ニクラスは付け加える。


「それにあなたはなんら恥じる行動は取っていないではないですか」


 確かに、と翡翠は思う。だが、それは翡翠のことであってジェイドのことではない。


「すみません、フードをかぶっていると安心するので」


 そう答えると、ニクラスは悲しそうに微笑んだ。


「あなたがそうおっしゃるなら」


 研究所に入ると『スタビライズ』の保管場所まで何ヵ所かのセキュリティを通過することになったのだが、もちろんニクラスはチェックを受けることなくそれらを通過し進んでいく。


 そして。その先に『スタビライズ』はあった。


 停止されているとはいえ、(いま)だに研究が続けられているようで、何人かの研究者や技術者らしき人々が『スタビライズ』を囲んでいた。


 ニクラスはそこにいる研究者や警備の者に下がるように命令すると、翡翠に向き直る。


「今は動きを停止していますが、これがフンケルンの『スタビライズ』です」


 翡翠はそっと『スタビライズ』に触れた。そして当時のことをまざまざと思い出していた。

誤字脱字報告ありがとうございます。


書籍化希望される方は、高評価・ブックマークをよろしくお願いいたします。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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