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裏切り者として死んで転生したら、私を憎んでいるはずの王太子殿下がなぜか優しくしてくるので、勘違いしないよう気を付けます  作者: みゅー


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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 その宿は必要最低限の物しか置いていない小さく簡素な宿だったが、それでもべっどがあり手足を伸ばして寝られることはありがたいことだった。


 翡翠はすぐに割り当てられた部屋へ行きしばらくぼんやりした。


 こうしている間にも、きっとミリナはカーレルの部屋に行って会っているのだろう。そんなことを考え、二人が仲睦まじく過ごしているのを想像したりした。


「こんな不毛なこと考えるの、やめよう……」


 そう呟くと、エントランスに本があったのを思い出し、気晴らしに読むのも悪くないかもしれないと考え取りに行くことにした。


 リビングにいた宿の主人に、本を借りてもよいか尋ね許可をもらうとエントランスに向かった。と、そこでミリナに鉢合わせる。


「あれ? 翡翠? どこかへ行くの?」


「いいえ、エントランスに本が置いてあったのを思い出してそれで。ミリナ様は?」


「私? 私はほら、ちょっとカーレル殿下のところに」


 やっぱり、そうだよね……。


 翡翠はそう思いながら、なんとか微笑んだ。


「そうなんですか。本当に仲がよろしいですね」


 そう答え、ミリナの胸元に視線を止めた。なぜならミリナの着けているペンダントに見覚えがあったからだ。


「あの、ミリナ様? そのペンダント……」


 するとミリナは少し照れくさそうに微笑む。


「あれ? 気がついちゃった? そうなの、これカーレル殿下とお揃いなの!」


 それはどう見ても、ジェイドのペンダントだった。


「そのペンダントは一体どこで?」


「それがね、拾ったものなの。もちろん、持ち主を探したわよ? だけどみつからなくて、それで逆に着けておけば持ち主が気づくんじゃないかな? って思って」


「そうなんですか……」


 翡翠がそう答えると、ミリナはとても嬉しそうに言った。


「それでね、そうしたらカーレル殿下がお揃いのペンダントを着けてたの! それを見たとき、やっぱり私たち運命なんだ! って思っちゃった」


 それを聞いて翡翠はとてもショックを受けた。ジェイドだったころ、カーレルがこのペンダントを着けているところを一度も見たことがなかった。


 だが、あえてカーレルがそのペンダントを着けたということは、きっとミリナがこのペンダントを着けていることに気づいたからだろう。


 だとすると、きっとカーレルはミリナがイーコウ村で出会った女の子だと思っているに違いない。


 翡翠はその事実に打ちのめされた。


 嬉しそうにまだしゃべっているミリナに、落ち込んでいるのを悟られないよう、笑顔で適当に相槌を返しながら考える。


 楽しそうにペンダントのことやカーレルとのことを話し、カーレル自身も誤解している中で『そのペンダントは、ジェイドのものです。返してください』とは言えないと。


 ミリナが去っていったあと、翡翠はエントランスに行ったが本など読む気にならず、結局手ぶらで部屋に戻ると悲しみから無気力になり、寝ることもできずただひたすらぼんやりして過ごした。


 翌朝、朝食を食べない翡翠を心配して使用人が声をかけてきたので、少し風邪気味で食べられそうにないと伝えた。


 すぐに心配したカーレルが部屋へ訪ねてきたので、その優しさがつらいと思いながら言った。


「カーレル殿下、お気遣いありがとうございます。ですが、殿下に風邪を移すといけませんからあまり近づかない方がよろしいかと思います」


 翡翠はそう言って、ドア越しに馬車にも同乗しないことを伝えた。


 移動中の馬車の中でもミリナとの仲のよさを見るのはつらかったので、反対されてもなんとか説得しなければと思っていたが、カーレルはあっさりそれに同意した。


 きっとカーレル自身もミリナと二人きりになりたかったのだろう。


 こうしてミデノフィールドまでの移動中、翡翠はラファエロと同乗することになった。


 馬車に乗るとラファエロは翡翠の頭を優しくなでて言った。


「ミリナが同乗するかもしれないんだ、一緒に馬車に乗りたくないだろうな」


 そんなことを言われ、ラファエロは翡翠の気持ちには気づいているのかもしれないと思った。


 馬車に乗って間もなく、寝不足からか翡翠はすぐに眠りに落ちた。





 肩を揺さぶられて目が覚めると、自分がラファエロの肩にもたれかかって寝ていたことに気づき、慌てて体を起こした。


「ラファエロ様、すみません」


「いや、無防備で可愛い姿を見られたんだから役得だった」


 ラファエロはそう返すと歯を見せて笑った。


 窓の外を見ると、どこかの村に着いたようだった。


「もう、水晶谷の村に着いたのですか?」


「そうだ。それにしてもお前よく寝てたな。昨日しっかり眠れなかったのか?」


 そう聞かれた翡翠はとりあえず苦笑してごまかした。


 水晶谷の村は、近くに水晶谷という水晶の鉱脈がある谷がある。


 その谷には文字通りいたるところに水晶のクラスターがあり、とても美しい谷で観光地としても有名だった。


 翡翠は馬車を降りるときに思いきってラファエロにお願いする。


「あの、水晶の谷に行ってみたいのですが、連れて行ってもらえますか?」


 ラファエロは一瞬驚いた顔をしたあと、嬉しそうに微笑むと翡翠の手を取っていった。


「嬉しいお誘い喜んでお受け致しますお嬢様」


 そして恭しく翡翠の手の甲にキスをした。


 貴族たちの間では通常の挨拶かもしれないが、こんなことに慣れていない翡翠は恥ずかしくなり顔を赤くすると、フードの縁を引っ張り顔を隠す。


 ラファエロはそんな翡翠を愛おしそうに見つめると、翡翠の降車を手伝い手をつないで歩きだした。


「暗くなる前に行っておこう。明日は出発が早いからな」


 そう言うと、カークに声をかけてから水晶谷に向かった。


 水晶谷へは、村の裏手から数百メートル進んだところにある。ラファエロはゆっくり歩き翡翠の体調を気づかってくれた。


 その時背後から翡翠の名を叫ぶ声が聞こえ、二人とも振り返ると背後からファニーが走って追いかけてきているのが見えた。


 ラファエロはあからさまにがっかりした顔をした。


「なんだよ、せっかくのデートが台無しじゃないか」


「なにさぁ! 水晶谷に行くなら、僕に声をかけてくれたっていいじゃないか~!」


 ファニーは翡翠たちに追い付くと息を切らせながらそう言った。


「お前は空気を読め!」


 ラファエロかそう言うとファニーは嬉しそうに答える。


「うん、そう! 僕は空気を読んだから来たの! ほら、ほら、こんなところで話してる場合じゃないんじゃな~い? 早く行こうよぉ~」


 ファニーはそう言うと先陣を切って歩き始めた。

誤字脱字報告ありがとうございます。


書籍化希望される方は、高評価・ブックマークをよろしくお願いいたします。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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