13
文章が稚拙なのでちょいちょちょいと改稿します。
翡翠が首をかしげて見つめ返すと、ラファエロは微笑んだ。
「ジェイドの瞳や髪色も美しかったが、翡翠の瞳や髪色も美しいな」
そんな歯の浮くような台詞を言われ、翡翠は口に含んでいたオレンジジュースを吹き出しそうになり、慌てて飲み込んで盛大にムセた。
「なんだ、そんなに驚くことはないだろう? ほら、大丈夫か?」
ラファエロは翡翠の背中をさすろうとするが、それをカーレルが払った。
「触るな!」
そう言って、カーレルは翡翠の背中を優しくさすった。
「大丈夫か? ラファエロのことはいないと思えばいい」
それを受けてラファエロが言い返す。
「おいおい、そりゃないんじゃないか?」
カーレルはラファエロを一瞥すると言った。
「当然だろう、お前は翡翠に余計な影響しか与えてない」
喧嘩になりそうな空気だったので、翡翠は二人を止めなければと慌てた。
「あの、もう大丈夫です」
そう言いながら、昔もよくラファエロからからかわれたことを思い出す。そのときもこうしてカーレルは不機嫌になったものだった。
本当にこの二人の関係は変わらない。
そう思い、この先この三人で旅を続けることに少し不安を覚えながら、ラファエロが翡翠の取り皿の上にどんどん食べ物を乗せているのを見つめた。
この日は特になにもせず休養ということで、食後部屋に戻ると翡翠は読書して過ごすことを護衛のカークに伝え図書室へ向かった。
翡翠の滞在する宿泊先はかなり大きな屋敷で、貴族たちも宿泊することがあるためかありとあらゆるジャンルの本が取り揃えられていた。
もともと読書が好きだった翡翠は本の背表紙を見つめ、読む本をゆっくりと選んだ。翡翠はこの時間も好きだった。
少しずつ横に移動しながら本の題名を目で追っていると、背後にいる誰かが翡翠の肩越しに腕を伸ばし本棚に手をついた。
驚いて振り向くと、ラファエロが立っていた。
慌てて反対側から逃れようとすると、そちらにもラファエロが手をついて退路をふさいだ。
「あの、ラファエロ様なんでしょうか?」
翡翠がフードのしたからラファエロの顔を見上げると、ラファエロは翡翠をじっと見つめて言った。
「俺にしておけ」
「え? あの、どういう意味なのかわかりません」
「俺を選んだ方が絶対にお前は幸せになる」
「選ぶもなにも……」
そう答えているとラファエロの顔がグッと近くなった。
キスされる!!
そう思い目を固く閉じ、顔を少し横へ背けていると急にラファエロの気配が消えた。
からかわれた?
そう思いながらそっと目を開けると、カーレルがラファエロにつかみかかっていた。
カーレルにつかまれ睨まれているラファエロは、挑発するようにニヤリと笑いながらカーレルを見つめ返した。
「ラファエロ、お前いい加減にしろ。こんな状況で自分の気持ちばかり翡翠に押し付けるな」
「よく言うよな、お前もそうじゃないと言いきれるのか?」
「それでも、私はお前よりは翡翠の気持ちを優先している」
「そうかよ、だがやっと会えたのに本当になにもせずにいられるのか? 俺は無理だね。しかも学校内にいたときよりも一緒にいられる時間が長い。このチャンスを逃すわけがないだろう」
そうやって言い合っている二人を見つめ、翡翠はふと思う。
もしかしてラファエロは、人を出しにしてカーレルに喧嘩をふっかけたいだけなのでは?
そう考えると二人を止めてもいいものなのか戸惑った。
カーレルは戸惑っている翡翠に気づくと、冷静さを取り戻して言った。
「翡翠、すまない。君を置き去りにしてしまったようだ」
「いいえ、大丈夫です。いつもお気遣いいただきありがとうございます。ラファエロ様も、いつも元気付けてくださってありがとうございます」
すると、ラファエロが苦笑する。
「お気遣い、ね。まぁ、元気付けることができてるならそれだけでもよしとするか」
その返答に翡翠は自分がもしかしたら見当違いのことを言ってしまったのかもしれないと思いながら、とりあえず微笑んで返した。
「今日は屋敷内で本を読んで過ごすつもりです。外に行くときは必ず報告しますし、お二人ともご自由になさってください」
そう言って頭を下げると、また本を選ぶ作業に戻った。
すると、横からカーレルが手を伸ばし一冊の本を取ると、それを翡翠に差し出した。
「この本、私はまだ読んだことはないが王宮の使用人たちが面白いと言っていた本だ」
翡翠は渡された本の題名を読み上げる。
「『皇帝の花嫁』、恋愛ものですか?」
そう訪ねると、カーレルは微笑む。
「そのようだ」
「面白そうですね、読んでみます」
そう答えると、反対側からラファエロが翡翠の手元を覗き込んで言った。
「『皇帝の花嫁』か。その本、妹も読んでたな。感動したとか泣けるとか話してた。翡翠はこういった恋愛ものが好きなのか?」
「はい、ラファエロ様。大好きです」
そう言って微笑むと、ラファエロは顔を赤くしてそっぽを向いた。どうしたのだろうかと思いながら尋ねる。
「ラファエロ様は好きですか?」
するとラファエロは顔に手を当てて、さらに恥ずかしそうに言った。
「嫌いじゃない。むしろすごい好きだ」
「そうですか、それはよかったです」
そんなに恥ずかしがることだろうか? そう思いながら、とりあえずカーレルとラファエロのおすすめである『竜帝の花嫁』を窓際のソファに座って読むことにした。
翡翠と同じく読書したいと思ったのか信用がないのか、翡翠は外に出ないと宣言したにも拘わらずカーレルとラファエロも翡翠の隣に座った。
カーレルは気を利かせてか、図書室までお茶を持ってこさせ翡翠に入れてくれた。
美味しいお茶とお菓子を堪能しながら本を読みふけっていると、カーレルの視線に気づいて顔を上げた。
「殿下、どうされたのですか?」
「君は本当に本が好きなのだな。ジェイドはそんなに本を読んでいたイメージがないから少し驚いている」
確かに、ジェイドのころは勉強を目的とした読書しかしていなかった。
そもそもジェイドの家は娯楽として本を読むほどの余裕などなく、こんなに面白い本があることも知らなかった。
誤字脱字報告ありがとうございます。
書籍化希望される方は、高評価・ブックマークをよろしくお願いいたします。
※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。
私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。




