〇サブストーリー 「仮想空間・人間とGM」
サブストーリーはメインストーリーに関係するお話となっています。
~仮想空間・ギルドハウスにて
私、織姫はこのegoというギルドにお世話になることになった。
つい先程『私に人間を教えろ』とパンダみたいな見た目の淘汰っていうややこしい人間に頼んだ上ここに居させろと言いたい放題言ってみたが割と通ってしまった。
しかしパンダみたいな人間ってなんだ、本当にややこしい。
そしてギルドマスターのスミスという赤髭のサングラスが淘汰とチャラ民とかいう口の悪い魔女に現実世界でなんちゃらとか話してそのままログアウトしてしまった。
明日までここに待機するようにとは言われたものの暇で暇で。
そこにたった1人居たのはねこさんという名前の猫耳とぐるぐるメガネ、そしてしっぽを生やした女だ。
目が合った。
ねこさん「……、あ、あの」
織姫「何」
女が怯むのが見えた。
別に怒ってる訳ではないが感情が希薄なせいかそう感じさせてしまったようだ。
何か言葉を交わしたいのが伝わってくる、仕方ないから話題くらいは振ってやるか。
織姫「別に怒ってないわよ
あんたこれから何すんの?」
ねこさん「!
もし織姫さんが良ければ、私の家を見せようかなって
あの駄目なら大丈夫す」
織姫「織姫、そう呼んで。
あと怒ってないからいちいちビビるのやめてイライラする。
そうね人間の家なんて見たことがないわ。
本当は淘汰の家を見せて欲しかったけどあいつら勝手にどっか行ったし。
案内されてもいいかしら?」
ねこさん「は、はいっす!」
普通に話したつもりだがこの女はかなり怯えているようだ。
なら何故私に家を紹介するのか。
まだ人間というのはよく分からない。
外へ出るとすっかり夜更けのようで涼しい風が吹いていた。
仮想世界で体を持ってから感じる独特であり人間と同じであろう感覚だ。
しかし空を見上げると綺麗な星が見える。
織姫「ねえ、人間の女。
なんであいつら帰ったの?
こんなに綺麗な空、天ノ川が見えるのに」
するとぐるぐるメガネからは察しにくいがハッとした表情を見せた。
ねこさん「GMさんも綺麗って感じるんすね?」
織姫「人間の女、ちゃんと質問に答えて
私はなんで帰ったの?って聞いてるの」
ねこさん「ごめんなさい……」
……。
何故人間は不合理なのだろう。
質問を質問で返し、再び質問をすれば謝罪をする。
まだ私は人間の事がよく分からない。
もしかしたら彼女を傷つけてしまっているのかもしれない。
なら私も彼女に合わせ説明の上謝罪をしよう。
織姫「人間の女、私には人間としての記憶がなくて人間と接するのにあたり衝突があるかもしれない」
ねこさん「……!?」
織姫「だから私に不手際があったらこちらこそ謝罪をするわ。
人間の女、ごめんなさい」
ねこさん「いいんす、いいんす!
そんな織姫さん」
織姫「織姫!」
ねこさん「お、織姫はGMにしては人間らしさが強くて人間として見ちゃって……。
あ、その人間になりたいってって言ってるのにまた失礼言ってすまないっす……」
織姫「人間は謝罪を互いに何回返すのかしら?
今回の会話を総合すると私が悪いって判断したから謝ってるの、顔を上げて」
とりあえず下げた頭を上げさせると女は口を震わせながらこう言った。
ねこさん「分かったす。
じゃ、じゃあもし許すとしたら条件があるっす」
織姫「何よ?」
結局なぜ淘汰達がログアウトしたかは分からず仕舞いだが人間との会話は妥協が必要なのかもしれない。
ねこさん「普通に人間の女じゃなくてねこさんと呼んで欲しいっす。
その方が織姫も呼びやすいすよね?」
織姫「人間の本で呼び捨ては失礼に値するって聞いたけど良いの?」
ねこさん「いや普通に人間の女って言う方が失……。
そうっすね!失礼どんとこいっすよ!」
~仮想世界・ねこさんの家
ねこさん「こ、ここが私の家す!」
織姫「ふーん」
私は小さな一軒家に案内され入った途端明かりが付いた。
暗い空間なだけかと思ったら1つの白と黒を基調とした部屋が現れた。
ベッドとテレビとふわふわのマットどれも白と黒のモノクロだ。
ポスターが貼られている。
これは色付きだがポスターに映った人間がギターとマイクを持ってポーズを取っている。
色白で黒髪なせいで白黒に見える。
背は高く頬はこけ死人のような顔に見え冴えない顔だ。
ずっと見ていたのをねこさんが反応し嬉しそうに話しかけた。
ねこさん「この人はJINYAさんっていうVスターす!」
織姫「Vスター?」
ねこさん「仮想空間、バーチャルのスターっす!
仮想空間で歌手をしつつ最大ギルド『猩騎士団』の団長つまりギルマスをしていて!
そして……」
織姫「ああ分かったわ、分かったわよ
とりあえず落ち着いて。
でも感じたのは『残念な見た目ね』」
私はその今にも死にそうなやつれた彼をそう表現した途端だ。
急にねこさんはメガネで分かりにくい表情を変えると
ねこさん「もう我慢ならないす……!
出てってくれっす!」
そう言われ弱々しく彼女に押されると外に追い出されドアを目の前で強く閉められた。
私はキョトンとし、見たものをそのまま述べたのに何故ここまで怒られたのか分からなかった。
ただひとつ言えるのは彼女は気難しいという事だ、ならどう接すればいい?
私は考えながら夜明けの外を見つめギルドハウスへ歩き始める。
~仮想空間・静かになったねこさんの家
ねこさん「ねぇ、私我慢したよね?
それにこれまでしてた事とあの人まで貶されたらここまで怒っていいよね?」
暗い部屋でパンダの小さな抱き枕を抱きながらねこさんは涙を流し、目をつぶった。




