☆メインストーリー1-1 紅き決闘者
~仮想世界・夜の路地裏
青ざめた表情の若い男二人が追い詰められていた。
下っ端B「ま、まただ!
あいつ殺られたのに立ち上がりやがった!」
三下J「頭もラリってやがる……。
おい、来るな!止めろ!」
気分が高揚し大音量のロックを聴いてるかの様に頭がガンガンする。
鼓動が早鐘のように全身に鳴り響き熱湯のような血がジェットコースターのように駆け巡った。
手には剣、いや銃か?何なのか分からない。
だが殴る物であるのは確かだ。
呼吸は犬のように激しくなり、まるで気分はオーガズムを迎えるかのように感じる。
目の前の男の表情はよく見えない、しかし決闘を一度受け入れたんだ、どっちも潰れるまで楽しみたい。
手に持った物が何か思い出し飲み干す。
レイヴン「おい、かかってこいやぁ!」
~現実世界・教室
帰りのホームルームで烏丸先生は緊張で名簿を持ったまま生徒に呼びかけていた。
「最近バク転で駆け巡る変なアンドロイドが出てるらしいの。
絶対に話しかけちゃダメ。
見つけたらちゃんとおじきに言うのよ。
それじゃあええと今日は」
「え」
「あ、おじきというか頼れる人です!
今日は終わりです!
気をつけて帰ってくださいね!」
~
やってしまった。
挨拶が終わり生徒が帰る中私は心の中でため息をつく。
私は教師なんて全く向いていない。
なのにあのGMとかいう奴らは成人後少しした私にこんな仕事を押し付けやがった。
あの頃をふと思い出す。
地元の高校でバット持ってバイク乗って毎回友達と補導補導の毎日。
髪を赤色に染めジャージを着て黒マスク。
好きな格好して好きな事してこれからも好き勝手生きていきたかった。
「またね、仮想空間でもちゃんと休み入れるのよ?」
「……はい」
目の前の仮想空間とやらにハマっている目にクマのできた生徒ににこやかに声をかける。
私の今の姿は保母のような優しい口調に茶髪、緑と黄色の穏やかな服にスカート、これらはGMが強要した物だ。
吐き気がする。
そんな奴らが作った仮想世界にこのヒョロっ子はよく楽しんでるもんだ。
~現実世界・とあるアパート
現実世界での娯楽は廃れた。
つまりエンタメ、テレビ自体が廃れた。
やってるものはGMによって統制されたニュースやドキュメンタリー等。
娯楽の全てはここ数年で仮想空間へ行ってしまった。
ベッドの上で酒を飲みながら見てもテレビは全くつまらない。
地獄だ、暴れてやりたい。
でもGMは人間より強い。
私がよく生徒に言うアンドロイド達でもちゃんとした奴はいて、奴らは事を起こすと即座に麻酔銃を的確に撃ってきやがる。
この学校に来るまでに何度酷い目に合ったことか。
仕事して、ストレス貯めて、酒買って、家で飲んで寝る、起きて、仕事して、ストレス貯めて……
思った、今後の現実世界に賭ける価値はあるのか?
不意にあの死んだ目をした男子生徒を思い出す。
デバイスを手に取り重要設定から
『仮想世界へ』
という項目を出した。
これを開いたらもしかしたら今の私は消えてしまうかもしれない。
でも行動を起こさず平穏を保つのは一番嫌いだ、問題が起きようが楽しみたい。
私は強い意志でその項目を押した。
『周囲・体調・状況確認。
一部イエロー、しかしログイン可能。
ログインしますか?』
何度も聞くな、とデバイスの画面押した瞬間意識は遠のいた。
~仮想空間・キャラメイク
気付くと青い立体のウィンドウが広がる空間に私は居た。
体が無く驚くが同時に出だしから非日常を感じ急に胸が高鳴った。
すぐに頭に響く声に加え視界に文字が現れる。
『あなたのこの世界での名前を教えて下さい』
※「烏丸だ、覚えとけ」
『その設定はあなたプライバシーに関わります』
※「は?じゃあ……レイヴンとか?」
『危険度イエローですが大丈夫ですか?』
※「いちいち人の名前に文句つけるな」
『了解しました、次は性別、歳、声……』
レイヴン「付き合ってやるか」
酔いが仮想空間に入って以降さらに回りぼんやりとしながら設定はしたが見た目だけは真剣に過去の自分を思い出して描いた。
サラシを巻き黒と金色のジャケットとズボン、そして染めた赤色の髪。
職業やスキルが何とかって聞かれたが酔いが進みぶん殴れればいい、ひたすら立ち上がってぶん殴りたいと言ってたら勝手に決めてやがったようだ。
~仮想空間・夜の路地裏
その後色々あり二人組を追い、今にも手に持った酒瓶を振りあげようとした時だ。
その手を掴んだ者がいた。
天裁「やめてあげてください。
いくら喧嘩を振りかけられたとはいえここまでぼこぼこにするのはやり過ぎです」
三下J「あんたは厄災軍師。
天裁!」
下っ端B「助けてくれるみたいだ。
とにかく逃げろ!」
二人組は隙を見て走り去っていった。
天才……?しかも姿も白髪を除きあの学級委員長にそっくりだ。
いやまさかな。
それは置いて、止められたことに苛立ちは感じていない。
レイヴン「逃げんなよ?
人ぶん殴る遊びなんだろ?これ
なら楽しみはこれからだろーが」
その腕を強く握り返すとポケットから瓶を取りだし飲み干した。
天裁「それは……!
なるほど変わった能力をお持ちなのですね。
先程の戦闘も無茶苦茶であった、これは好都合だ。
あの、もっと面白い事なら私に一つ提案があります。
この先にとあるギルドハウスがあるのですが」
レイヴン「ちょいたんま」
天裁「はい?」
とても魅力的な話が聞けそうだ。
だがそれ以上に私には緊急事態が起きていた。
レイヴン「吐きたい」
天裁「え」




