☆導入部分5
~仮想空間・ギルドハウスにて
GMはグランドマスターの略である。
AIは人間が必要な教養と健康の為1日決められた仕事を行った上で十分な食事、居住、医療、公共事業等を無償に生涯提供することを約束した。
その代わり人間を指導するAI達は自らを最高の責任者、グランドマスターと名乗る。
彼らは仮想空間でも人間の代わりに運営や治安の維持、イベントのサポーター、カウンセラー等の面倒事全て引き受けている。
そういやGMの数値については高くなるほど人間に近づくらしいとは聞く。
数値で言うと仮想空間で機械的な演説をしたイベント管理責任者GM1.5位だ、GM2以降など見たことがない。
態度が砕けている為空気は軽いが正直このGM2.5というとんでもない名前の人物には少し恐怖感さえも感じている。
ま、それはともあれ先程ねこさんと一悶着はあったが弁解があり落ち着いた。
スミスは椅子に座り葉巻を吸いながら
スミス「なるほどな大胆な告白だなとは思ったが純粋に人間になりたいAIというわけなのだな。
GMの数値の値が高くなるほどシンギュラリティ時に作られたAIから離れた多様性を持ったAIが出てくると言うが……。
今回は人間になりたいAIか、全くを持って奇っ怪な物だね」
GM2.5「まぁこの数値が高いおかげかなんか崇められてこの世界に存在してからGMに囲まれてお城で飯と酒三昧の毎日だったけど。
一応は夢である人間になる為に彼らが作った創作物を酔っ払い半分で勉強してたわ」
淘汰「いやぁこんなにだらしねぇ織姫初めて見たぞ、彦星が泣いてる」
スミス「いや彦星はお前さんじゃけぇ」
チャラ民「冗談はよしよしこいよだよ!
まったくなんなのこの薄汚い姫。
まるで酒焼けハスキープリンセスだね」
GM2.5「あんたあんまり変なあだ名付けるとぶっとばすわよ!後汚くないし声は独特なだけ!」
ねこさん「でもGM2.5さん……?
人間になるのが夢っすなら
まずは名前とか付けてみる気は無いすか?
呼び名でも良いので数字で呼ばず自分の好きな名前で呼ばれた方が人間に近付くと思うんす」
先ほどは特徴であるぐるぐるメガネにヒビが入ったり尻尾がバタバタ犬のように振るほどほど焦っていたねこさんだが事情を知り親身になっていた。
しかし2.5はあまり乗り気じゃないようだ。
GM2.5「呼び名?
他のGM同様2.5とでも呼べばいいじゃないシンプルだし短くて済むし」
まぁAI目線から見たら妥当だろうな
でもねこさんの意見の方が俺としては頷ける、こいつが人間として扱って欲しいなら番号で呼ぶのはなんか違和感がある。
それよりねこさんが面倒見が良いのは分かるがこいつをまさかギルドに入れるんじゃないだろうな?
周りの雰囲気もそんな乗り気な感じだ。
ねこさん「え、と。
織姫さんとか?」
GM2.5「却下」
ねこさん「え、ええと」
俺はギルマスを見た、じいさんは口から葉巻を取り彼女を見つめていた。
仕方ない。
淘汰「織姫
これでいいだろ?」
織姫「わかった」
ねこさん「あれ名前が。
それより織姫さんなんで私が言った名前を無視したんすか!?」
淘汰「さんはいらないようだとよ。
呼び名として2.5(にーてんご)と織姫さん(おりひめさん)で文字数が一文字多いんだ
人間にとってどうでもいい違いだがこいつらGMにとっちゃあ大きいらしい」
チャラ民「面倒くさい女は嫌われるよ」
ねこさん「ダルい男も嫌われるっすけど。
それは置いてその、皆もしかしたら反対するかも……
でも織姫さ、織姫をその」
スミス「私は構わんよ。
このギルドegoはわがままな連中が集まる場所さね。
サブマスの淘汰に関しても乗り気だしな」
現実でも昔からの付き合いだ。
じいさんもこちらも互いに大体言いたい事は伝わる。
俺達としては今まで見てきたGMとは違う織姫という存在に対し気になる事もある。
それ以上に賑やかなのが好きというのがこのギルドの特色だ。
チャラ民とは相性の悪そうな存在ではあるが彼の方を見ると一言。
チャラ民「ふーん、いいじゃん」
織姫「いい玩具とか思ってるなら本当に毅然とした対応をするから」
チャラ民「まったくAIって人の考え読むの下手だなぁ」
じゃあ他に何を思ってるんだこいつは
ただ気になることがあり俺は織姫に話しかけた。
淘汰「この事はGM側は問題ないのか?」
織姫「変な質問ね、上官が部下の言葉を助言としては考えるとしても命令として捉える訳ないじゃない?
私は好きな事を好きな人と好きに学ぶ。
そして人間側が許可くれたなら問題なし」
随分と高飛車な奴だ。
まぁさておき俺とチャラ民はじいさんに一言声をかけられた。
スミス「うっし1番勉強になるであろう現実世界に関して技術屋の私が手を打とう。
明日淘汰、チャラ民わしの家に来い」
まさかその手が面倒事を起こすことは全くの想像が付かなかった。
~現実世界・夕暮れの教室
速水(チャラ民)が何かの説教で遅れてしまう為俺、那藤(淘汰)は放課後の教室にいた。
机に肘を立て顔を乗せたままぼーっとしていたが
「いつまでそこで睨んでんだ?」
「……」
他の生徒はいつも通りそそくさ帰っているのに真後ろの生徒だけはずっと座ったまま。
神谷だ。
かけた質問も相変わらずいつも通り無言で返事。
ずっとだ。
何年もこうして繰り返されてきた。
だが急にその沈黙を断つ強い一言が放たれた。
「七夕、私は大嫌い」
「……!?」
驚いて振り向いたその頃には彼女は背を向け教室を出ていった。
なんの事だ?
全く伝わらないが、だが。
とても嫌な気持ちになったのは確かだ。
~現実世界・住研究所前
「んで!はやみんやっぱあの鼻声ハスキープリンセスにこう思ったのよ!
って聞いてる?なっち?」
「あ、ああ。
どうでもいいが酒焼けハスキープリンセスとかって名前じゃなかったか?」
「さっすが記憶力いいねぇ!」
学校の帰り道で速水は仮想空間での織姫に対する見解を述べていたが全く頭に入らなかった。
あの神谷の一言が強く胸に刺さる。
またぼーっとしていたが速水がとあるボロ家を指さしていたのに気付いた、声をかけられる。
「こっこ。
着いたよ!」
~現実世界・住研究所
スミスの中の人は住住男という名前だ。
元工学博士らしく俺が小さい頃から色んなロボットやら玩具やらを研究所で作り近所の子供達にその作品を配っていた。
変わった名前なので昔からこちらの世界でも皆からスミスと呼ばれている。
AIが特に発達した2045年のシンギュラリティ以降は趣味でその関連する研究を主としているらしい。
今度はGM達と共同でアンドロイドを作るなどしていた。
まだ上手くは行っていないようで不可解な行動を取る人間のような物が徘徊し近所に嫌がられているらしい。
俺と速水はいつもの客間に案内され久々にスミスと顔を合わせる。
現実世界の彼は細身で白髪と白髭に眼鏡を付けた静かな印象である。
物腰も柔らかく現実世界の煙草や酒は体を悪くするからしないそう。
お茶とお菓子を出し本人も食べながら話題を切り出した。
「まぁ、近所のスーパーのお菓子と適当に入れた紅茶だが好きに食べてちょ」
「やった!はやみんさこのお菓子昔から好きなんだよね!
じいさん流石分かってる!」
速水は遠慮なく菓子に手を出し笑いかけた
俺は食欲が無く両方手が付かなかったがその様子を見たスミスはすぐに反応した。
「やはり拒食症かね?
最近仮想空間での満足感で陥る人は多いが君の場合はやはりあの事件が要因だな。
ああすまない、今日は暗い話はしないつもりだ」
「いえいえすみません気を遣わせてしまって……今日はお話があるのでしたね?」
重くなった空気をスミスは流したのに対しホッとして俺は本題に触れた。
俺自身が抱えている問題は今始まった事じゃない。
スミスは本題を切り出した。
「即席だが仮想空間と現実世界を繋げるアプリを作った。
那藤くん君にはこの二つの世界を繋げる橋渡しをしてほしい」
そう言って見せられたのはデバイスに写ったのは他のアプリの横を歩く2頭身の織姫の姿だった。
ぷち姫から吹き出しが出て文字を読む。
『案の定あんた残念な見た目ね』
そのまま言葉を返したい。
7月7日、七夕から始まった奇妙な出来事。
七夕を終えても空へ帰らない織姫。
それをおもちゃ?としてみるネカマ。
そわそわした様子のぐるぐるメガネ。
何かを企てているじいさん。
そして幼馴染と久々に話し後悔した俺。
まだ照明の当たらない役者達。
それぞれの思いは現実と仮想の中無数の主題と外伝となり交わる。




