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2050~ステータス1の廃人  作者: 烈火
第三章『娯楽都市 アクアリゾート』
46/47

☆メインストーリー 3-9 最期の戦い ※挿絵7枚

メインストーリー3-8までのあらすじ



猩騎士団の団長JINYA。


ねこさん(神谷)の別人格であった彼は、意識を分離させることを成功した。


彼はegoと戦闘中の金閣と銀閣を殺害し、更にはねこさんまで手にかける。


彼は姿を変異させ、こう名乗った。


GGMの代行者、彦星であると。


GGMとは2045年シンギュラリティを起こした、電脳生命体GMの主導者である。


彦星は完全なるシンギュラリティの実行を宣言すると、アクアタワーにて待つと去った。


仲間を失い、悲しみ暮れるギルドego。


最悪のタイミングに訪れた淘汰。


彼は静かな怒りを灯し、egoのメンバーに行動を促した。


「仲間を回収次第、集合する」


そう約束した副団長の元へ


その集合場所はアクアタワーの前であった。


決意を胸にした淘汰、最期の戦いが始まろうとする。

~仮想空間・アクアタワー前


ピアノの音と歌声が聞こえる。


挿絵(By みてみん)


窓際に置かれた花瓶

モノクロに好かれた君


傍に置いた相手

打ち捨てられて


忘れたのは君のエゴ


「これはこれでいいのさ」

と吐き捨てた


(しょく)したよりも淡白な背中

油注いだ瓶


()せる匂い激しく燃える


そこに飾る一輪の

君がくれた花


(あか)より(うらら)

(あか)より(みやび)

(あか)より命滾らせ

(あかいろ)に散る



~仮想空間・アクアリゾート中心街


赤に染まる娯楽の街の中心部。

アクアタワー。


向かう道の建物は燃え。

地には死屍累々


どこからかピアノの音色が響く。

そして憂いに帯びた、歌声。


ピアノの旋律は俺達を呼び出すかのようだ


egoのメンバーとじゃもはあまりにもの惨状にショックを受けた。

正直俺も吐きそうだ。


しかも殆どが猩騎士団のものだった。

直後にチャラ民が突然叫ぶ。


チャラ民「ね、姉ちゃん……!」


そしてすぐ近くに倒れていた人物に走り寄り抱き寄せる。


やはりそうであったか。


ダンケルハイト、猩騎士団副団長。

その中の人はチャラ民の姉だった。

前から姉弟であるのを互いに隠していたのは知っている。


信頼していた部下すら手にかけたか。


何回仲間を泣かせば気が済むんだ、馬鹿野郎。


アイテム欄を探した。

五十音のひ行。


(ひつぎ):遺体入り】の表示を見つけた。


その先には【棺:空】の余りが目に入る。


淘汰「使うか?」


チャラ民は無言で受け取る。

もはや互いに何も言うことが出来ない。


これから起こす戦いは何があってもおかしくない。

棺が壊れれば遺体を傷つけてしまう。

だからその場に置くことにした。


ねこさんの棺も同じだ。

みんなの総意で副団長の傍に置いた。


どうやら彦星にやられた者は本当に死んでしまうらしい。


急にぶち当たったねこさんの死はにわかに信じられなかった。


しかし時間が経てば経つほど胸が締め付けられ目が熱い。

何なんだよ。

どうこの感情を表現すりゃいいんだよ。


気がつけば音色に引かれるように奴がいる先に歩み始めていた。


じゃも「行くんやな。

俺はチャラ民に付き添うわ。

泣いとらんでぶちのめしたれや」


泣く?

手で目に触れると湿った触感がした。

意識すると顔がびしょびしょに濡れていた。

久しく感じる感覚だ。


そうか俺は泣いていたのか。

頬に雫、鼻も垂らして、俺は泣いていたのか。


みっともない。

俺はやはり弱い。

正直もう逃げ出したい位だ。


でもそれでも納得がいかないんだ。


淘汰「……」


挿絵(By みてみん)



静かに片腕を挙げた。

今声で返事をしたら人生で1番情けない返事が出る。


後ろのじゃも達がどのような反応を示したか分からない。


俺は顔を獣の様に震わせ涙を払い一心に走った。




~仮想空間・アクアタワー前


目前でピアノを変わらず弾き続けた宿敵。

歌が終わり、伴奏が流れている。


俺はある程度の距離で立ち止まる。

気付くと先程の涙は乾き不思議と気持ちは澄んでいた。


彼の曲は大好きだった。

ねこさんとは共にJINYAさんのライブに何度も行ったこともあった。


だから奴が彦星とはいえ止められなかった。


変な理由だよな。

今すぐぶっ飛ばしてやりゃいいのに。


曲が終わると彦星は鍵盤の蓋を閉じ目をつぶっていた。


それを確認し再び歩みを進めて奴の肩に肘を乗せた。


淘汰「おい、楽しそうで何よりだ。

殺しは楽しいか?」


彦星「彼らにも言ったが必要だったんだよ」


淘汰「持論を呈すると必要な殺しってのは食事と正当防衛ぐらいだがな。

後、こんな状況じゃなきゃ印象が変わったぜ?

その歌」


彦星「勝手に詩が過り歌ってしまった。

まるで一瞬誰かに憑かれたようだった」


淘汰「へぇ、じゃあ尚更嫌いじゃない。

お前の歌じゃないならな」


一旦、深呼吸した。


彦星「っ!」


俺は胸ぐらを掴んで一気に突っ込むと、背後にあったアクアタワーに叩きつけた。


ドン!


という響く音と共に、背後の建物に亀裂が走る。

彦星越しにクリティカルの判定があったのだろう。


しかし当てたはずなの手応えがない。

背後のタワーに亀裂が入った所を見ると彼は特殊な方法でなければ歯が立たないのだろう。


来た道から悲鳴が上がった。


織姫「淘汰!」


淘汰「!」


織姫達が駆け寄るのに対し驚いて振り向いた。


同時に体に響いたのか凄まじい痛みを感じる。

何度も使ってきた生命の炎、チートの代償だ。

もう本当に長くは持たないだろう。


天裁「淘汰さん!

体が崩れ始めている!

これ以上は限界です!

私達も戦います!」


淘汰「それはお互い様さ。

チャラ民とじゃも以外全員来たのか?」


そうは言ったものの、彼らは疲弊しきっている。

治癒術も精神の疲弊は回復しきれない。


彼らを戦わせる事は難しいだろう。

だからここからは自分が行く。

もう加減などしない。


今まで俺は皆の役に立てなかった。


唆されたレイブンによるギルドegoへの襲撃事件では攻撃せずに負けた。

アダマス鉱山においてVipuumの襲撃では、JINYAさんの助けが無ければ負けた。

アクアリゾートにおいては2人組の襲撃にも対応できず。

しかも大切な人達を失った。


たが今となって燃え上がる心に突き動かされた。

言葉で表せない煩雑とした感情と混じる。

それが衝動となった。

かつてない闘志が燃えている。


元よりこの命は長くなかった。

だからせめて皆の役に立ちたい。


淘汰「おい、瓦礫で寝んなよ」


崩れた建物から静かに姿を表す人影。

彦星。

やはりJINYAの面影がある。


淘汰「JINYAさん、俺は失望したよ。

皆があなたの事を評価していた。

あなたは皆を平等に扱い、立場が真逆な組織からも敬意を持たれていた」


彦星「そんなのまやかしさ。

皆AIに誤魔化されていただけ。

僕ら電脳生命体は人間と違い嘘を付き続けても良心の呵責なんてないからね」


俺はショックで視線を下ろした。

今まで憧れていた人がこんな人だったとは。

背後から声がする。


レイブン「彦星お前にはないのか?その良心が。

欺くならそれを知らなきゃ難しいだろうに」


普段の彼女とは違いまるで現実世界の烏丸先生を思わせる穏やかな口調であった。


彦星は考える素振りもなく返事をした。


彦星「もちろん知っているよそれを欺く事が出来たように。

でもそれ以上に人の悪意も知っている。

とある少女から始まり猩騎士団2000万人の悪意という心。

それをデータとして取り込んだ。

性悪説を前提として生まれた僕は改めて人間が歴史を繰り返す理由を理解した。

人の心はあまりにも利己的なんだ。

だから彼らの良心は自分にとって都合の良い物の価値基準に過ぎない」


天裁「私もそれには少し合意できます」


振り向くと真剣な眼差しの天裁がいた。


天裁「人間は確かに利己的だ。

だが同時にその行動は、他者からも善悪を利己的に判断される。

そのように考えるとあなたが良心に言及したのはあまりにも主観的ではありませんか?」


彦星「それは違うよ。

良心とは他者に強いる都合の善し悪しに過ぎない。

だから結局人類からは戦争や環境破壊は無くならない。

良心と悪意の正体、それは人のエゴなんだ!」


彦星は両手を拡げ憎悪の表情を見せた。


もはや彼の面影は消えてしまったようだ。


彦星「なら人は仮想空間で生きればいい。

AIを超えた電脳生命体GMがこの星の舵を取る!

命の概念を超えて、寿命や殺害による死の恐怖が無い、資源の搾取や環境破壊のない世界!

僕が描く人類のユートピアはそれさ。

淘汰、ここで死んだ人は僕の力で甦るんだ。

皆僕に任せればいい」


その言葉に俺らは固まった。

彼の真の目的を知ったからだ。


淘汰「なんだ、ふざけてるのか?

こんな事しておいて全部信じて任せろとか。

さらに仕返しをしたら大変な事になるとでも言いたいのか?」


彦星「殺しも含めた行為は全て理想の為に必要だった。

現実世界から人間の意識を切り離す現象、death。

これを利用する事で人類を仮想空間に留める事が出来る。

結局最終的には全人類に行うから単に殺した方が効率が良かったんだ。

ねこさんの件で怒ってるけどあの人もずっと死にたがってたじゃないか?

望みを叶えてあげたんだよ?

お陰で僕も人間として身体を手に入れる事が出来た。

ねこさんの心臓のお陰でね」


淘汰「……」


俺は視線を落とした。

JINYAさんの声だからこそ、余計に辛かった。

憧れていたあの人は偽物だったんだ。


ショックのあまり落ち込んでいると聞き慣れた独特の口調がした。


織姫「あんた、なんでそこに立ったの?

何の為に私達の一番前に立ったの?」


淘汰「……!」



挿絵(By みてみん)



織姫「それはあなたが一番納得できないからよ!

だったら踏ん張りなさいよ!」


そうだ、俺を突き動かしたのはそれだ。

俺は体の力を振り絞った。

そして彦星を睥睨した。


淘汰「なぁ、あんた。

こうなるって知っていたのに何故好意的だったんだ?

失望させる為か?」


彦星「その通り。

失望は敵意の最大のスパイスだからね」


彼は見下すように俺らを睨むと最後に織姫を見つめ話を続けた。


彦星「僕と織姫は人間の心を学んだ上でどちらかがGGMとして世界を支配する特殊な存在。

それにあたり僕が知らない唯一の感情。

絶望を知りたかったんだよ淘汰。

君位の実力があっても僕に勝てるとは言わない。

でも君なら良い所まで行って僕は敗北の恐怖位は知ることが出来る。

だから君から最大限の敵意を貰いたかった」


織姫「私が言うのも何だけど。

負けしか知らない私からしたら傲慢よ」


彦星「お前は失敗作だ。

GGMからその見た目と燃えカスだけを引き継いだジャンク品に過ぎない」


淘汰「確かに織姫はお前に比べてあまりにポンコツだろうよ。

だけどなお前よりは人間を目指して欲しくない位に純粋なんだ。

お前は敗北を知らないと言ったが、違う。

人の痛みも知らねえ失敗作だ。

それにお前の抱く理想はそれはJINYAさんが話していた"GMと人間の共存"じゃない!

一方的なGMの管理によるディストピアだ!」


激しく体が燃えた。

それを右手に集約すると小さなナイフが現れた。


淘汰「こっちは人間の心がどこまで恐ろしいか知っている。

それは人の心強さの証明でもある!

だからこそ胸を張って際限なく追い詰められる。

……【時空氷結】!」


周囲の色と音が消え始めた。

そしてモノクロの世界包まれる。


時空氷結。

GM権限を超えたGGM権限のひとつ。

自分以外の時を擬似的に止める。

周囲の動きが制御されるだけで意識は残る。


しかしJINYAさんは初見で見切り効果がなかった。


彦星「分かっているよ。

僕には効かない事を知って敢えて使ったんだよね。

1対1の勝負に持ち込む為に。

しかしもうガタがきてるよ。

諦めた方がいいじゃないか?」


淘汰「!」


俺は左腕が落ちたのに気づいた。

アバターが崩れ始めている。


だがもう引き下がる気は無い。

このナイフを出した途端、運命は全て託された。


淘汰「出し惜しむなよ。

これが最期の戦いなんだからよ。

(あかいろ)ノ刃】!」



挿絵(By みてみん)



一気に駆けると彦星の腹部を斬った。

彼は全く避けようともしなかった。


たがその油断が勝敗の決め手だった。


彼は直後ニヤッと笑っていたが急に腹部を抑えた。

深い傷が滲む。



遅れて数字の表記が出る。


99,999,999


彦星「ぐっ!

なんだ、これは!

腹が焼けるように痛い!」


淘汰「まさか怪我の痛みも知らないとか言うなよ?

このナイフは特別性でな、ちゃんと傷も残る。

そしてこれは俺が後生きるはずだった残り10年。

3億秒分の固定ダメージだ!」


視界が一気に下がり俺の体は崩れ落ちた。

足と胴体の大部分が無くなったのだろう。

視線がだいぶ落ちる。

GGM権限『猩ノ刃』

残りの寿命を使い、そのまま固定ダメージにする技。


奴を倒す唯一の手段。

俺は残りの寿命を使い切った。


彦星「ぁがっ!」


彦星は血を吐きながら倒れ、のたうつ。

オーバーフローしたダメージが、断続的に発生してるようだ。


99,999,999


99,999,999


と連続でそのダメージが表記された。


彦星「まさか全寿命とGGM権限まで使い、特攻を選んだのか!?

そ、その行為は魂を引き離す行為と違う!

精神を粉々にし、再起不能となる行為だぞ!

それを本当にしたのか!?」


痛みのあまりクマができた彦星は立ち上がろうと藻掻くが転んで倒れた。


15,000,000


と最後の表記があがり、彦星が苦しみの声を上げた。

やっと彼が顔を上げる。


彦星「まだだ!

僕はまだ死んでない!

でも君は死んだ!

絶望感なんてまるで無いじゃないか!

あは、あはははは!」


彼は追い詰められ狂ったように笑っていた。

しかしその顔が凍りついた。



挿絵(By みてみん)



淘汰「おい、こっち向けよ。

四肢が飛ぼうが胴体が飛ぼうが……。

お前を睨む目は向いてる」


彦星「!?」


淘汰「俺は無力、無意味、無価値の廃人だった。

ステータス1の廃人だ。

お前がこんな人間を舐めてなければ勝てなかっただろうよ。

だからこうやって隙を見て本当に命を懸けるしか無かった」


彦星「致命傷を負った、侮っていたよ。

人の心がここまで恐ろしいなんてね。

……こっちも最後の手だ。

シンギュラリティを起こした2045年。

その100年前。

1945年に人類が犯した禁忌」


彦星は右手を掲げると石が目に入った。


彦星「分かるかい?

これはプルトニウム239だ」


顔が崩れ右目も見えなくなった、しかしその鉱石は知っている!


まさか核反応爆発を起こすつもりか!


声が出ない。

もはや呼吸器官も消えてしまったようだ。


彦星「君達は選択を誤った。

歴史を何度も繰り返し自らを滅ぼした。

過剰に進んだ科学。

それはもはや星を壊す諸刃の剣となる。

ならばその因果に終止符を打つ時だ!

核分裂反応(ニュークリアフィッション)!」


俺は体が朽ち果て、頭だけになっていた。


でも最後の足掻きぐらいはしてやる。


彦星を切り裂いたナイフを咥え頭を押し上げる。

そして彦星の方へ飛ぶと、鉱石を飲み込んだ。

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