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2050~ステータス1の廃人  作者: 烈火
第三章『娯楽都市 アクアリゾート』
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☆メインストーリー3-8 death

声がする。

しかしよく聞こえない。


目の前の事実が視界を奪っているのだ。


因果応報だった。

ちゃんと向き合えなかった後悔。

見て見ぬふりをした結果。


焼けた街で周囲は各々の感情を向ける。


不思議だ。

俺は元々おかしかったのかもしれない。


本来なら感情を一番顕にしなければならない人物なのに。


しかし思うことはあった。



~仮想空間・アクアリゾート商店街


ねこさんを口々に蔑んだ金閣と銀閣。

そこに駆けつけたのはチャラ民だった。


チャラ民「要らない人間なんてない!

むしろねこさんを見習うべきだ!

常に皆の気を遣ってくれて優しいんだ!

いつもお世話になって返せない位。

だからチャラ民はいやegoの皆ねこさんの事を大切に思ってる!」


ねこさん「あ、ありがと!」


金銀の狐に強い口調で反論するチャラ民。

天裁も畳み掛けた。


天裁「私もこのような事を言うタチではありません。

しかし言います。

仇である私をねこさんは受け入れました。

それだけで底辺の貴方達と人徳を比べるのは失礼に値しましょう。

そもそもねこさんを巻き込むのは見当違いだ。

そして死にますごっこはもうやめなさい。

少しは考え直してはいかがですか?」


ねこさんがハッとした表情で天裁を見つめる。

金銀がそれに対し睨みつけた。

その瞬間だ。


ザクッ


という嫌な音と共に金銀の狐達は倒れた。


JINYA「お疲れ様、また来世でね。

転生の約束は必ず守るから」


床に血が広がる。


death


という見たことの無い表記が現れた。


レイブン「死……だと!?

それにお前は猩騎士団の団長!」


JINYA「ありがと覚えててくれてたんだ。

レイブン。

君とは話したことは無いがアダマス鉱山で1回会ったね。

さて彼女たちには死んでもらった。

やはり自決をさせるのはあまりに可哀想だ。

本当だったら早く来れたんだ。

でも途中でおじいさんが粘ってね」


JINYAの顔が顕になる。

頬に乾いた血がついていた。

すぐにねこさんが反応する。


ねこさん「まさかスミスさんまで!?」


JINYA「仕方なかったんだよ。

止めるって言うから斬り捨てるしか無かった」


その発言にegoのメンバーは震撼した。

チャラ民は涙を流し膝を着く。

しかしJINYAは穏やかな表情で続けた。


JINYA「それとねこさん、君と直接会うのは初めましてだね。

君には本当に苦しめられた。

何度も君が死のうとして別人格である俺ごと巻き込もうとした。

だから人格を切り離したのさ。

そして必要なものを取りに来た」


彼は歩み寄るとねこさんを蔑むように見下ろす。

周囲が止めに入ろうとしたが彼は急に距離を詰めた。


それは瞬間的に移動するような速さで、誰も止めることが出来なかった。

直後押し殺したような声がする。


ねこさん「ぅがっ!」


JINYA「君の心臓だ!」


ねこさんから何かを引き抜くと血が飛ぶ。

そして同じく表記が出る。


death


周りから悲鳴が上がった。

地面が赤くなる。

召喚されていたぽちが静かに姿を消した。


JINYA「ごめんね。

これも仕方ないんだ。

体を取り戻すには宿主の心臓が必要だった。

俺が、いや彦星がね」


彼は自分の胸にそれを押し込む。

遺されたメンバーはJINYAの豹変に気付いた。

髪色がエメラルド色に変わったのだ。

同時に空が満天の星空に変わる。


彦星「僕の名前は彦星。

猩騎士団団長、JINYAを操作していた人格の正体。

そしてGGMの代行者」


その言葉が終わらない内に、レイブンが彼の腹に剣を突き刺す。


レイブン「おい、ふざけんな。

そんなのを聞いて納得するか!?」


ダメージ表記はなく、刃が通った後がない。

何度も攻撃をするが全く表記がない。



挿絵(By みてみん)



彦星「これは皆の為。

仕方ない事なんだ。

しかし体を得た事で、力の制御が解除されたか。

特殊な武器が無くてもダメージが入るな」


軽く弾かれたレイブンは遠くまで吹き飛ばされ戦闘不能となった。

彼女は先程の金銀との戦闘で既に限界を過ぎていたようであった。


天裁「お前は私から許しを乞うべき相手すら奪っていくのか!

その仕方ないという言葉で」


地面が揺れ始めた。

天裁に超高圧力の魔力が集まっている。

彦星は目を細めた。


彦星「君は金銀との戦闘で魔力を使ったはず。

だけど寧ろ魔力が数段も上がったね。

喪失による火事場の馬鹿力。

リミッターが外れLvが100になったのか」


天裁「周囲に人は居ない。

チャラ民さん。

ねこさんを連れ、今すぐ離れて下さい。

ケリを付ける……!」


全ての魔力が彼に手に集約する。


チャラ民「分かった!」


その冷静かつ強い口調にチャラ民はねこさんを連れ距離を取った。


天裁「デストラクションレイ!」


手のひらから放たれたそれは普段放つレーザーより太く、高濃度の魔力であった。


すると彦星はそれを真似するように手をかざした。


彦星「【鏡魔法・ミラーカウンターβ(ベータ)】

……デストラクションレイ」


それは鏡のようだった。

放たれた波動同士がぶつかる。

中央で大爆発を起こし全員が吹き飛んだ。


唯一無傷で立つのは彦星であった。


彦星「やめよう。

君達では僕には勝てない。

僕はGMによる世界平和を望んでいる。

君達を傷付ける為に戦ってる訳じゃない」


天裁は魔力を使い切ったのか、膝をつき地面を叩いた。


しかし瓦礫の中から立ち上がる者が居た。

チャラ民だ。


チャラ民「じゃあなんでチャラ民達から大切なものを奪ったんだ!」


彼はねこさんの遺体を静かに置いた。


爆破に巻き込まれ満身創痍の状態であるにも関わらず彦星に歩みを進める。


その様子を見て彦星は表情を曇らせた。


彦星「平和の為に必要なものが君達の大切なものだったからさ。

申し訳ないがさらに僕は織姫も殺さなければならない」


チャラ民「っく!」


その言葉にチャラ民は魔力を集めるとそのまま手から放った。


チャラ民「ジュースプレッド!」


カラフルなジュースを放つ。

敵に当たると強い酸で焼き、味方が当たると傷が少し癒える魔法だ。

しかし


彦星「ジュースプレッド」


彼は直後に全く同じ魔法を繰り出し、それがまた鏡のようにぶつかる。

魔法を切り替えた。


チャラ民「ガトリングミ!」


彦星「ガトリングミ」


グミによる銃撃。

これも敵が当たればダメージを与え、味方に当たれば回復する。


しかしこれも同じ結果。


むしろ流れ弾がチャラ民の体を傷付ける。


チャラ民「ソードロップ!」


彦星「ソードロップ」


同じ技を返され剣の形をした飴がチャラ民を刻む。


ボロボロになった姿を見かねた彦星。

彼は手を向け静止させた。


彦星「無駄だよ、止めよう。

意味が無い。

もうボロボロじゃないか」


チャラ民「うるさい!

勝てるから戦ってるんじゃない。

負けられないから戦ってるんだ」


天裁と同じやり方で魔力を全て手に集めた。

それは最もリスクのある手段であった。


魔力を使って戦う者が、魔力切れとは敗北を意味するからだ。


しかしチャラ民はその一撃にかけた。


チャラ民「チョコメット!」


直径3M程の大きさのチョコが一つ空から彦星に向かい落ちる。


だが彼はため息を付き軽くサッカーボールが如く、そのチョコを蹴りあげた。


チャラ民「……!」


チャラ民は魔力が尽いた。

それでも目線を彼に向けていた。


全滅したegoに彦星は憐れむ。


彦星「遺憾だよ。

こんなに仲間想いで優しい人達なのに相容れないのは。

でも命をかけて戦うその姿勢、僕は君達も気に入った。

淘汰や忠実だった金銀の次位にはね。

君達もいち早く転生を選べる権利あげるよ。

死にたくなったらおいで

アクアリゾートの中心地、アクアタワーで待っているから。

さて」


彦星は空にある天の川を指さした。


彦星「2050年7月7日。

本来起きるべきであった事を始める時だ。

今こそ人類に完全なシンギュラリティを」


彦星は金銀の死体ごと浮かび上がると姿を消した。


そこに淘汰、織姫、じゃもが着いた。

凄惨な様子に織姫は目を覆う。


織姫「なんなのよ……これ」



~数分後


不思議だ。

俺は元々おかしかったのかもしれない。

目の前の状況に立ち尽くすしか無かった。


誰かの声が遠くで響く。


チャラ民「ここは?」


じゃも「ここは彦星と君らが戦った場所。

駆けつけたらあんたら倒れてたんだで。

織姫の回復術は目を見張るもんがある。

ヒーラーとしては異例の力やな。

ああ、俺は今回味方だから安心するだで」


チャラ民「それより、淘汰は!?」


誰かが話しているがよく頭に入らない。

そして振り向くことも出来なかった。

目の前の事実が視界を奪っているのだ。


因果応報だった。

ちゃんと向き合えなかった後悔。

見て見ぬふりをした結果。


焼けた街で周囲は各々の感情を向ける。


俺はただただ黙っていた。

本来なら感情を一番、顕にしなければならない人物なのに。


しかし思うことはあった。

俺は立ち尽くしていたが、冷たくなったねこさんを抱いた。


チャラ民が走り寄ると抱きつき涙を流す。


チャラ民「ごめん、ごめんね淘汰」


俺はまた黙ってしまう。

にわかに信じ難いのだ。


話は聞いた。

deathという表記は現実世界にて死亡と判定された場合起きる表記だ。


この死体となったねこさんは胸元が赤くなっただけで傷痕もなく綺麗だった。

だから殺されたのが信じられない。


JINYAさんがこんな事をしたのも信じられない。


レイブンが歩み寄ってきた。

無言で何かを渡す。


受け取るとそれは新品の首輪のようだった。


淘汰「これは?」


天裁「あなたへのお土産だったそうです。

服選びで一緒に行動出来ないからと」


レイブン「何に使うのかは分からね。

言いかけて邪魔をされたからな」


このアイテムは知っている。

これはスペアの首輪。

という事は。


俺はスペアの首輪を静かに投げた。

やはりぽちだ。

いつもの先制はせず、飼い主の亡骸に走った。

そして目の前に立つと大きな遠吠えをした。


ぽちはねこさんにとって大切な存在だ。

それを俺と共有しようしてくれたのか。


飼い主を失った犬。

その鳴き声は悲しみを帯びている。


感情が燃え上がった。


だが今は情に動くのは良くない。

指を鳴らし、彼を首輪に戻す。

そして淘汰はパンダの姿を解いた。


チャラ民「淘汰それは!?」


パンダの中身。

それは滅多に見せることは無い


淘汰「ねこさん誓うよ。

ちゃんと仇は取る。

死体を放置するのは悲しい。

だから粗末だが今持っている、ロスト者を収容する為の収縮可能な柩を使う。

その中で見ていてくれ」


アイテム欄から棺を取り出すとねこさんが吸い込まれる。

冷静な口調を保ち皆に話しかけた。


淘汰「なぁ、本当にじいさんはいないのか?」


チャラ民「うん、殺された。

あいつに」


淘汰「そうか。

電波が通らないから何の通信も出来ない。

アクアタワーの前で、猩の副団長と待ち合わせをしてる。

とりあえずまずはそこへ行こう」


淘汰は再びパンダの姿に戻った。

終始淡白に感情を抑え歩み始める。

織姫が急に声を上げた。


織姫「ね、ねぇ!

私が面倒ごとに巻き込んだせいよ!

もう無理しないで!

私を差し出せば終わるから!」


立ち止まった。


淘汰「無理は極力しないって言ったろ?

俺は無理をしてないんだ。

これからする事も理にかなってる」


織姫「顔が溶けてる!?」


振り返った時恐ろしいものを見たように周囲が反応した。


そうか、とうとう。


じゃも「アバターが崩れ始めてる……?」


淘汰「ああ、悪ぃ。

寿命が近いようだ、形を保つのが難しい。

思ったより生命の炎のデメリットが重過ぎた。

GM権限。

言わばチートを使ってたツケが来たんだ」


レイブン「おい!

もうそれこそ無理だろ!」


淘汰「いや無理を超えて理にかなってるんだ。

もう後もない。

だからこそもう出し惜しみもしない」


顔の形を整え淘汰は歩みを始める。

残されたegoのメンバー。

そしてじゃもが着いて行った。


じゃも「決戦をしかけるのか?

後悔はするなよ」


頭の後ろに手を組み横を歩く彼。

その言葉は彼なりの気遣いだろうか、それとも忠告だろうか。


宿敵の方向を一心に見つめた淘汰。

彼は何も言わずただ歩き続ける。

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