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2050~ステータス1の廃人  作者: 烈火
第三章『娯楽都市 アクアリゾート』
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〇サブストーリー 「テレビ通話」

~現実世界・那藤の自室


ビデオ通話。

それを代表した年がある。


2020年。


今から丁度30年前。

厄災とも言える、世界的伝染病が流行った時期があった。

当時外に出る事が出来ない人々は、カメラ機能等を用い通話をしたそう。

2050年の今ではホログラムで、目の前に相手を表示できる。

それよりも仮想空間がある今では、そんな面倒くさい事もしない。


俺、那藤は携帯端末の前で、1人ぶつぶつ文句を言う。


よってこのビデオ通話という手段は、もはや古びた行為なのだ。

俺はこの手段は古いと再三言った。

だが速水、チャラ民の中の人にグループで誘われた。

残りは神谷、ねこさんの中の人。

この幼なじみ3人で話すらしい。


『うっさいわね。

1人で話すなんて、ぼっち極めてるんじゃないの?』


電話の時間を待っていると、アプリの間をちょこちょこ歩く、織姫ならぬぷち姫が現れた。

吹き出しではそんな事を言うが、表情は心配そうだ。


「いや、憐れむな。

発声練習してんだよ。

電話って声の聞こえ方変わるだろ?」


『何?

友達と電話しばらくしてないの?』


「……」


『(´・_・`)』


だからその表情を俺に向けるのやめろ。


家族とこの前の病院の電話以外、速水やじいさんとすら何ヶ月かしてない。

リアルの知り合いが二人位で、会って話せば済むんだから、電話する必要は無いだろ。


何か文句を返してやろうと思ったが、どもってしまった。

すると急に電話が震えだして思わず、俺は携帯電話を地面に落とした。


「わわ!」


『ふざけないでよ!

丁重に扱いなさいって!!』


携帯画面を開く際に、ブチ切れたぷち姫が映る。

しかし通話を開くために、弾いて飛ばす。


「もしもーし!

なっち?

元気!?

こちら、はやみん!元気に生きてます!」


やばいやばいやばい。

携帯端末から明るい色の声が溢れる。

速水から来てるのは分かるが、久し振りで緊張してしまう。


画面を開くと、言葉通り元気な速水。

そして同じく緊張しているのか、顔を赤くした神谷が映った。


俺は余計緊張して、言葉が考えなしに投げた。


「あはは、生きる生きる」


「??

まぁ今日は何年振りか、幼なじみ談議と行きましょ!」


やばい、何言ってんだ俺。


速水は普段通り流してくれたが、神谷は確実に引いてる。

ように感じたが突然声を張って、俺に話しかけた。


「私、ねこさんって事でいい!?

あの顔出てるけど、それでも素で居るのは緊張して無理っ!」


「!?」


「どーする?なっち。

はやみんは結局チャラ民で、性格変わらないから良いけど。

仮想空間のはやみん達、ってことで話す事にする?」


急に神谷出た命題。

そして俺は速水に答えを求められた。


その答えは明白だ。

それなら


「それなら仮想空間でよくね?

ってなる。

でも、神谷の事をねこさんって呼んだり、本人の話し方を否定はしない」


「ど、どういう意味なの?」


神谷は珍しく俺の目を見た。

目が合った時、逸らしたい気持ちが強くなった。

だがこらえ、強い口調で答えた。


「神谷自身の考えであると否定しなければ」


「!」


速水が口笛を吹いた。


「やるね。

もしそれを通したら今日はやめようって言うつもりだった」


「え」


穏やかな表情の中に、厳しさを秘めた口調で速水は俺らに言った。

神谷が反応したので、慌てて速水が両手を振って否定する。


「あ、ごめんごめん!

嘘嘘、ちょっと言い過ぎた。

でも心の中では意味無いじゃんって、思ったかもねって」


「速水……」


俺は勇気を出して言ったが、むしろ言って安心した。

問題は神谷だ。


「思ったより皆考えてるんだね。

私いつも自分ばっかだから。

一杯一杯になって那藤君に、酷いこと言ったり。

本当はそれを正す為に、私を呼んだんじゃない?

他にもこの前、速水の友達にも不快な気持ちをさせたし。

私なんか」


「……」


速水が表情を曇らせた。

久々に会話をしたが、神谷は非常にネガティブだ。

とある事故以来、うつ病の診断を受けていたのは知っている。

何年か経ち普通に学校に通っている為、治ったと思っていた。

しかし思ったより深刻だったようだ。


俺はため息をついて神谷に話しかけた。


「お前を責めるためじゃない。

また昔みたいに、穏やかに話そうって事。

仮想空間で色んなことあったし、思ったより俺らはそこでも身近だったからな。

速水そういう事じゃないか?」


「あ、ああうん。

大丈夫だよ!

前も3人で話せてたんだし!」


速水はとにかく空気を良くしたいのか、空元気に笑いかけたが、神谷は怯えていた。


なんとなくだが、気持ちが分かる。

荒んだ心の中、根拠の無い大丈夫、前は出来た、そんな言葉を聞くのは辛い。


速水はずっと何事も諦めず、折れず取り組んできたから、そんな素直な言葉が出るんだと思う。


でも心が折れた人にとっては、その言葉は眩しく鋭い。


出来る兄と自分を比べ、沢山の事を諦めてきた身から言える事を考えた。


「無理すんな。

お前の気が向いたらでいい」


「ちょっと、なっち!」


驚きと怒りが混じった、速水の声が俺に飛んだ。

それでも神谷への視線を向ける。

あっちも目を逸らさない。


しばらく感じたことの無い、とてつもない気まずさがあった。

心臓が痛い。

しかしその時間は、静かに始まった神谷の言葉で終わる。


「那藤くんは裏面の善意しかないと思ってた。

ごめん、今日は落ちるね。

速水くんも気を遣ってくれてありがとう。

もう速水くん達が誘わなくて平気だから」


「ちょ、待ってよ!

神谷さん!

はやみん達が悪かったって!」


もうその時には、神谷との電話が切れていた。

彼女が切る瞬間、ハッキリと表情が明るくなったのが見える。


だが速水はタイミング悪くうつむき、落ち込んだ表情を見せた。

多分焦ってちゃんと、その言葉を聞いてなかったのだろう。


「なぁ、速水」


「なーに、なっち?

反省会でもやるの?

もう2度とない3人の通話談義を?」


「いや、反省会やってもいいけどさ。

次もあると思う」


「え?」


「本人曰く"もう俺達が誘わなくても"平気だからって。

多分次やるとしたらあっちから来るだろ」


その言葉を聞いた速水は、訝しげな表情を俺に向けた。


「それって考えすぎじゃない?」


「あいつはそういう面倒な奴だよ。

まぁ今日は誘ってくれてありがと、お疲れ」


疲れが入った笑みを見せ、俺は通話を切った。


こいつら根本的な面は結局変わらないな。


今回のテレビ通話を通し俺は、これはこれで悪くないとは感じた。


ただめっちゃ心臓が痛てぇ。

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