☆メインストーリー3-2 ego集結 ※挿絵有
~仮想空間・ギルドハウス内
夏休みに入った俺、淘汰達はギルマスによる招集を受けた。
それによりギルドハウス、ロビーで各々椅子に座り待っていた。
夏休みまでの数日、退院や期末テストの返却、終業式等あったがそれはいつか話すわ。
とりあえずする事もないので、集まったギルメンを一人一人見回す。
ねこさんに至っては色々あったが、天裁の件は和解した。
彼女の正体が神谷である。
と発覚した時は驚いたがドタバタが一段落ついて良かった。
まぁ天裁に対して残る多少の意地悪さは、ねこさんの照れ隠しと受け止める。
度が超えれば多少は注意をするつもりだ。
それを除くと普段通り、誰に対しても気さくに接してるので少し安心した。
織姫は相変わらずである。
延々とカツ丼ばかり食べる生活をしてたようなので、この前寿司屋に連れていった。
すると食事に目覚めたようで、俺やねこさんのどちらかを毎日、飯に誘うようになった。
体にも変化が訪れたらしく、後で皆に相談するようだ。
見た感じ分からんけど体重でも増えたのかな。
そもそもGMに体重って概念あるのか?
チャラ民は仮想空間でも、もちろん現実世界でも俺に気をかけてくれた。
体の負担もそうだが、メンタルの負担もさり気なく気にかけている。
ねこさんと神谷との関係に気付いているのは、流石を通り越して驚きだった。
ねこさんとの約束もあり、直接彼女が神谷である事は言わなかった。
しかしチャラ民・速水の行動から察するに、神谷と俺を何とか繋げようとしてくれているようだ。
速水の提案で、神谷とは今度電話をする予定。
俺としては古典的な手段だとは感じる。
しかし顔を合わせるより、その方が緊張しないと神谷は了承をした。
なんだかんだで神谷、速水には支えられている。
俺はそれに負けないように俺が出来る事、ギルドを守ったりはするつもりだ。
しかし現実世界での俺は廃人と同じ。
期待された以上の事は、良い意味でも悪い意味でもできない。
そうネガティブに考えてたらレイブンの中の人、烏丸先生に
「ガキが考え過ぎないの。
大人でも誰かを頼って生きてる。
逆に上手く報連相ができる奴。
そいつが要領の良い奴じゃない?
そう言うあっしも上手く出来ないけど。
あはは」
と先生に成り切れてない、ぶれぶれな話し方で諭されてしまった。
アル中なレイブンやドジな烏丸先生のイメージはある。
しかし何だかんだ本性は真面目で、熱意と正義感を感じさせる。
そんなレイブンは、遅刻するとだけメッセージを残し別室にいる。
スミスに何かとやり取りをしていたから、大人の事情って奴だろうか?
んで問題の天裁はテーブルでタブレットを使わずに、わざわざ紙に鉛筆で書き込んでいる。
おい、まさかそれを見せるんじゃないだろうな?
面倒くさいからそこはデジタルで頼むよ。
さてあいつの目的はこの仮想空間の秩序。
その点では俺らとの目的は同じで、GMの支配に賛成する点が俺らと違う所だ。
俺らはあくまで猩騎士団と同じ中立派であるからな。
まぁチャラ民がちょっかいを出してる様子を見ると、やけに仲が良いようだ。
ねこさんとは違い、Mr.Bの喪失の落胆を埋めようとしてる。
落ち込んだ奴を見ると大抵チャラ民もとい速水は、放っておけない。
いや放っとかないからな。
現実でも一緒に帰り始め、俺と天裁の二重で気を遣っている。
だから1番負担があるだろう。
俺に対しての対応について。
ライバル意識というのか、好敵手と呼んで毎回マウントを仕掛けてくる。
奴は勉強もできるし、運動も出来る、だがVipuumとの戦いで思う所があったらしい。
一通り見回した後ふいに、織姫が目に入る。
淘汰「ん、織姫?
お前服装変えたのか?」
織姫「今気付いたの?
高二病みたいに人間観察してるくせに。
あー、あんた高二だったっけ?」
俺は思わず声を出した。
髪型や服装が急に変わったのだ。
先程まで黒い長髪に黒い浴衣だった。
しかし髪型をツインテールにし、白の服に黒のスカートと服装にも変化があった。
チャラ民が早速反応した。
チャラ民「せっかく娯楽都市に行くんだもん、イメチェンさ!
織姫が頼んだ要素からチャラ民が選んだんだ。
ただ素人らしさを出すのも考えて、狙ったような狙わなかったような、間を取ってみました!」
ねこさん「ブラウス、しかも肩出し……!
着物に隠れてたけれど、現れた圧倒的なそれ!
なんか敗北感が凄いす。
そして長い髪を2つ結びにしてくるとは!
……ホント、いつもずるい」
ねこさんは爪を噛んでいた。
俺はオシャレとかに疎いが、そんなにその服が高価だったり優秀だったりするのか?
そもそもパンダの格好だから服関係ないけれど、詳しいチャラ民がやっぱ羨ましい。
織姫「どうかしら?
その、何か感想が欲しいのだけど」
視線が集まる。
いや、俺は期待されても上手く答えられない。
こういう時は何を答えればいいか。
とにかく投げやりに言ってみた。
淘汰「いいんじゃない?」
織姫「それは疑問形」
淘汰「いや、感想」
織姫「そう。
悪くないって事ね、100点中何点?」
淘汰「ああ、1点中100点だな」
織姫「??」
緊張して何を言ってるかわからなかった。
だが織姫は一瞬フリーズした後、急に顔を赤くしてニコッと笑った。
だがねこさんが唇を噛むのを見て、素直に喜べなかった。
何となく純粋に喜んではいけない気がしたからだ。
俺は昔からよく、相手を観察して考察はするが、気持ちを理解するのが苦手だ。
だからその場の空気が読めず、踏み込むのは怖い。
困ってぼーっとしてると、チャラ民が助け舟を出してきた。
チャラ民「まぁ前の服がキツくなったから変えたいって、織姫が言ったのもイメチェンの理由だけどね。
カツ丼の食い過ぎで太っ……うがっ!」
織姫「食べ過ぎたら胸囲だけが増えたのよ!
これ以上要らないのに。
もう一度説明するわ、太ってない!!」
チャラ民の軽口にパーで頭を叩く織姫。
アイコンタクトをチャラ民が向けてきたので、やはりまた気を使ってくれたんだろうな。
暴力沙汰があったのか学級委員長、もとい天裁が割り込んできた。
ああ、あいつの事だからまた説教か?
天裁「いいですか?
平手は表面積が広いので、上方から頭部へ手を用いた攻撃は、拳を使った鉄拳の方がいいです。
ですが織姫さんの身長は約140cm弱と思われます。
また、チャラ民さんの身長は155cm前後と思われますね。
そこで顎にアッパーまたは頭突きをする事が、私は最適解だと思います。
検証してみて下さい」
織姫「分かったわ」
仮想空間には、あの正義の委員長は存在しなかった。
チャラ民「いやいやいや効率性の問題じゃないから!!」
淘汰「確かに間違っちゃいない。
ただ仮想世界では、Vipuumのねるが提唱のデスクリティカル理論を使った方がいい。
いやごめん話が脱線した。
試すならどこかシミュレーター室を借りて行おう。
てかじいさんが作ってくれたんだっけ最近?」
チャラ民「オーバーキルをかましてくるかと思ったよ。
あ、そういえばレイブンが
……って!」
天裁の言葉に乗ったのを反省しつつ、返事をしようとした時だ。
突然チャラ民が声色を変えた。
無理もない。
奥の部屋から、スミスと血だらけのレイブンが現れたのだ。
だいぶ疲労を重ねスミスが肩を貸している。
スミス「すまん、ねこさんか他に治癒術使えるやつ手を貸してくれ。
このバカがシミュレーターで、とんでもないオーバーワークをした、ロストは無いがこの量の血だと痛みが酷い!
パンダは命の炎を使うな、また体に負担をかけぶっ倒れたら本末転倒だ」
ねこさんに加え、天裁も駆けつけ治癒術をかけ始める。
俺は回復手段をアイテムぐらいしか持ってない。
アイテムは即効性がないため、このような緊急時は治癒術が求められる。
俺は治癒術は命の炎を使うことでしか行えない。
残りの寿命を燃やす事で、GMが持つあらゆる権力を使う最終手段だ。
だが命の炎は使うと寿命のみならず、この前のように倒れる危険があり、結局簡単には使えない。
何も出来ないのがもどかしい。
天裁が大きく声を上げた。
天裁「これは酷い、すみません。
一時間以上は掛かります!」
ねこさん「私たちヒーラーが専門って訳では無いすから、限度があるっす!!」
状況が混沌とし始める中。
織姫「手を貸すわ」
織姫が割行って入った。
あいつに何が出来る?
俺はそう言おうとした時だ。
レイブンからなにか声がした。
レイブン「ん、あ。
これなんだ?
くすぐったいしぬめっとする。
てか、汗ばんだ手で触んな!」
織姫「汗ばんではないわよ!
生きてんならよかった!」
やっと騒ぎが治まって俺は織姫に声をかけた。
淘汰「お前いつの間に、ヒーラー専用の技を使えるようになったのか?
水系魔法と風魔法を組み合わせた泡魔法。
属性を織り交ぜた強力な治癒はヒーラーにしか出来ない」
織姫「すごいでしょ。
あの時、アダマス鉱山の時、淘汰に何も力貸せなかったから、頑張って勉強した」
淘汰「お前にしては珍しい」
織姫「褒めてるの?」
淘汰「褒めてる」
素直にそう告げると、またニコリと織姫は笑顔を見せた。
不思議と七夕に出会った時から表情が増えた気がする。
じいさんのおかげか?
~5分後
スミス「反省なさいね。
場合によってはシミュレーター出禁よ?」
レイブン「それは困る!
あっしはパンダより強くならねぇといけないんだ!
もう身がバレてるから言うけど、教え子が命懸けてるなんてほっとけない!」
天裁「もう、年甲斐もなく青いんですから。
ですが頷ける面がありますね」
やっとギルドego7名全員が集合した。
各々、長いテーブルの周りに座っている。
3名、3名で向き合い爺さんが真ん中席だ。
織姫はツインテールが気に入ったらしく、振り回している。
顔に当たるチャラ民が、不機嫌な表情を浮かべているので、不憫に感じる。
それに対して天裁は呆れた様子で頷いた。
見られているのに気付いたのか、織姫が素っ気なく反応する。
織姫「ん?」
天裁「GMにとって、最も重要な鍵GGMを抱えながら、当の本人はThe 雑魚。
ギルド自体のレベルも、パンダさんがずば抜けているだけで全体的に弱すぎる。
肝心のパンダさんも真面目に闘えば、命の危機。
これでは私達と同じく所属数7人、対抗勢力であり、仮想空間最強組織であるVippuumに、太刀打ちすら出来ません!」
織姫「雑魚で悪かったわね」
チャラ民「雑魚だよー」
ねこさん「へぇ?
随分な自信っすね?」
天裁の提言に各々様々な返事をする。
言葉の選びは不愉快ではあるが、言われてみれば、困ったら俺が負担するの一点張りで捨て身だったな。
ねこさん自体は天裁に匹敵するだろうが、タンクつまり守りに徹した戦い方だ。
そしてギルマスのじいさんの強さは……。
スミス「私も、長期戦じゃないと本気出せないからなぁ。
待ってくれないとスパナで殴る事くらいしか出来ん……」
チャラ民「はは、ギルマスしっかりしてよー」
スミス「わはは、雑魚を自認した奴に言われた無いわー」
天裁はあまりの危機感の無さに頭を抱える。
じいさんは言葉通り、長期戦においてはとんでもなく強い。
しかし準備に時間がかかる能力なので、その間倒されたら勝機が一気に無くなる。
そもそものじいさんのステータスは非常に低く、チャラ民でも物理で倒せる程だ。
俺はぼーっと考えながらじいさんを見ていると、ため息をついて彼は決心をした。
スミス「まぁでも、今までお前に頼り過ぎたなパンダ。
これからの情勢で何が起こるか分からん。
お前の命を燃やして、ロウソクを灯しても、強い雨が降れば消えてしまう。
わしらが傘をさしてやらんと」
チャラ民「文学風だねぇ。
でも火は灯すんだね?」
スミス「頼る時は頼るぞ?
皆でやれる事はせなあかんじゃけ。
私らでパンダを支えるんじゃけぇ!」
周囲の目が集まる。
すぐにねこさんが反応した。
ねこさん「ねえ、今度は私が淘汰の代わりに攻撃も覚えるっす!
多少耐久ステータスを落として、攻撃を上げれば私は役に立てると思うす。
だから淘汰はもう無理しないで」
パンダ「じいさんが言うことに賛成。
俺が無理するなっていうのが無理って、ちゃんと理解した上での言葉だろ?
大丈夫。
無理しない時は絶対無理しない主義だ。
なんなら基本戦闘チャラ民に任せてるし」
チャラ民「パシるんすよ、ギルマス」
スミス「あっはは、どんどんしばけ。
さて。
んじゃあ、あれだな。
夏休みで娯楽都市と言えど、ego強化合宿も兼用で考えとくわ」
レイブン「まじか!?
やった!」
チャラ民「ええー」
強化合宿か。
それは全く考えてもいなかった。
チャラ民が露骨に嫌そうな顔をする中、レイブンは珍しくはしゃいでいた。
そのトレーニングで死にかけたのに、ストイックだなこいつ。
織姫はさっきから喋っていない。
と思ったら、テーブルの下からバレないように何か食ってる。
おい、何今寿司食ってんだ!?
何か言ってやろうと思ったが、議論は加熱しているみたいで天裁が指を立てた。
天裁「では、指南役を私とパンダさんでお任せ下さい。
スケジュール等はギルマスのスミスさんを含め、3人でしましょう!」
ねこさん「ホント、私の事なめてるっすよね、この人」
天裁「もちろん娯楽都市、自由時間も組み込みます。
私天裁は、時間だけやるというのが嫌いです!
効率よく楽しみながら向上しましょう!!」
ねこさん「聞けよ!メガネ!
あっ、私もだったっす」
淘汰「こんな一方通行な、一人ボケツッコミ初めて見たわ」
スミス「んじゃ突然だが、やること決まったしお前らギルドハウス、発進する。
上空飛んでくので、揺れ注意な」
「!?」
返事もするなく、スミスはどこからか取り出したボタンを思いっきり押した。
すぐにギルドハウスは凄まじい音を立て、動き出す。
出だしから色々あったが、俺らの夏休みはこれにて始まった。




