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SS:みさきとねてるりょーくん

 みさきが目を覚ますと、見慣れた天井とは違うものが見えた。


 ビックリするくらい柔らかかった布団は無くなっていて、ゆいちゃんの「すぴー」という寝息も聞こえない。代わりに少し硬くて温かい感覚がある。それから、とっても落ち着く匂いがする。


 すりすり。頬をくっつけるみさき。

 すりすり。すりすり……………………あれ?


 不意に、みさきの意識がハッキリとした。

 この温かいの、なに?


 ゆっくり顔を上げると、直ぐにりょーくんの顔が目に入った。

 そして全てを思い出した。


 りょーくんの所に戻ってきて、それから……


 りょーくんにギュッとされた時のこと。

 自分でもビックリするくらい甘えてしまったこと。


「……」


 みさきはどんどん顔が熱くなるのを感じた。

 慌ててりょーくんの腕の中から抜け出して、猫のような動きで反対側の壁まで後退する。


 ……ねてる?


 じーっと観察した後、みさきはゆっくりとりょーくんに這い寄った。


「……」


 ツンツン。


「……」


 むにむに。


「…………ん」


 手をつついて、ほっぺをつまんで、みさきはりょーくんが三十分は起きないと確信した。


 これまでは寝ている龍誠の寝顔を見ているだけだったみさき。しかし、これからは違う。思い切り甘えても受け入れてくれると知ったからだ。だけど起きてる龍誠に甘えるのは少し恥ずかしい。


「……」


 チャンスである。今なら、あんなことやこんなこと、口にするのも恥ずかしいことだって出来る。

 

 ごくり。


 そーっと、そーっと手を伸ばす。


 ピタリ。

 チラ。

 よし。


 ちょこんと、りょーくんの大きな手に触れた。

 りょーくんは眠ったままだ。


 ごくり。


 そーっと、そーっと手を動かす。

 りょーくんの大きな手を撫でるようにして動かして、ついにみさきは親指を握る事に成功した!


「……ひひ」


 みさきは満足した。

 小さな手で大きな親指を握ったまま、いつものように寝顔を見つめる。


「……みさき?」


 突然名前を呼ばれて、みさきはビクリとして龍誠から手を離した。すると龍誠はみさきを追いかけるようにして手を動かして、直ぐにまた動かなくなった。


 寝言。ゆいちゃんのせいでスッカリ慣れていたみさきには、それが分かった。

 ゆいちゃんはよく食べ物の名前を呟いていたから、もしかしたらりょーくんはみさきを食べたいのかもしれない。それは困る。


 でも、ゆいちゃんはママって呟くこともあった。それは……こまる。


「……」


 こそこそ。

 みさきは龍誠の膝の上に乗ってみた。


「っ!?」


 その瞬間、龍誠の両腕がみさきのお腹を撫でた。

 

 ……おきてる?


 みさきは恐る恐る顔を上げる。

 やっぱり寝てる……と思う。


「……ん」


 みさきは龍誠の大きな手の上に自分の手を重ねてみた。


「……」

「……」


 とても静かで、温かくて気持ちがいい。

 だけど新たな眠気はいつまで経ってもやってこなかった。


 だって、ここで寝たらもったいない。


 ふわふわした気分で前を見ていたみさき。

 ふと、ピアノが目に入った。

 そこで自らに課せられた使命を思い出す。


 たららん、たららん。


 ゆいちゃんと一緒に考えた大作戦は、もう始まっているのだ。

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