表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第19章 魔窟
217/221

19-15.連結  (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

 ――きやがった!

 “イーサ”が受信、映像データ。

 第6艦隊旗艦“ゴダード”、その通信スタジオ横――調整室。そのネットワークの片隅、密かに細工を巡らせる。

 映像、マリィの指先が示す先――弾痕。敵意の動かぬ証拠。ズーム。その流れをチャンネル001、合成映像へ流し込む。さらに“ウィル”から引き継いだ“裏口”を経てシンシアへ。


「気遣いってことですよ、シニョール・バレージ」ドレイファス軍曹がコマンド入力。「マシン・パワーは、あって邪魔にもならんでしょう」

 軌道エレヴェータ“クライトン”管制室。ドレイファス軍曹の操作卓へ、宇宙港で稼働する“テルプシコレー・モジュール”から接続認証コード。

「転送、します!」ドレイファス軍曹の視覚、片隅でバレージへ繋がる通信ウィンドウに――表示。『転送確認』。

 その視覚に浮かぶ“放送”ウィンドウ、チャンネル001に――変化。その一角、サブ・ウィンドウ。

「ん?」

 ドレイファス軍曹が合わせて焦点、つい先刻までマリィの姿が――と思う間に映像がズーム。通気口、そのシャッタ――弾痕。9ミリ。


〈くそ!〉ほぼ闇一色の中、聴覚へ鋭く小声――歯軋りを交えてカリョ少尉。〈待機! ボヌール上等兵! 撃つな!!〉

 第6艦隊旗艦“ゴダード”、通信スタジオ――の、その上辺に位置する通気口の、さらに中。

 待機するボヌール上等兵の視覚から、三次元マップがかき消える。カリョ少尉の元でシミュレートされた通信スタジオ――その入り口へ向けていた9ミリの銃口を、ボヌール上等兵は心持ち上方へ。

〈あー、〉ボヌール上等兵は気まずい声をデータ・リンクへ。〈まァ気付かれちまっちゃ、仕方ありませんよねェ……〉

 かき消える直前の三次元マップ上、マリィが指をボヌール上等兵へ向けていた。

〈“放送”に通気口シャッタと弾痕が映ってる〉カリョ少尉の声、その奥に抑え込まれた熱がある。〈手を変える。別命あるまで待機〉


『ケヴィン・ヘンダーソン大佐!』モニタ上のチャンネル035、シンシアから気炎。『手前この下衆野郎!!』


〈“シンディ”、〉“ゴダード”通信スタジオ、ハリス中佐が将星をヘンダーソン大佐に据えたまま、〈通気口の弾痕、ズーム映像をリピート。並行してミス・ホワイトの視点を中継〉


『どうあっても、』さらにチャンネル035、キースの声が一層冷える。『マリィに手を下すつもりか』


 そこでチャンネル001、弾痕のズーム映像が縮小して斜め上、そのままリピート再生へ。空いたスペースに『LIVE』のロゴとマリィの視覚映像、通気口とそのシャッタ。


「押してますな、“K.H.”」ドレイファス軍曹の片頬に笑み。「この流れに乗っかれりゃ……」

『接続を確認』そこへバレージ。『ほう、正規ルートか』

 続いて反応。“テルプシコレー・モジュール”の状態表示、輝点の群れが黄緑から緑へ――点滅加速、さらに常時点灯へ。その下へサブ・ネットワークのリストが――連なる。伸びる。緑の輝点。


「ミス・ホワイト、」ハリス中佐がそのまま声、「あなたの視覚を中継しています。眼を私とヘンダーソン大佐の方へ」


「“K.H.“はそういうことにしたい、と」ヘンダーソン大佐が片頬を釣り上げ、「つまり私を悪役に据えたい、というわけだな。この場で睨み合うのが望みかね?」


「大丈夫ですか?」視点そのまま、マリィがハリス中佐へ問いを投げる。

「次は、」ハリス中佐は低く、「こちらの中継が意味を持つはず」


『スカしてんじゃねェぞこの陰険詐欺師!』シンシアがチャンネル035から噛み付く。『手前のクソ所業を棚に上げんじゃねェ!!』


「ああそれから――」ヘンダーソン大佐は涼しい顔のまま眼を細め、「ハリス中佐は、その立ち位置が望みかな?」


 “放送”映像、振り返ったマリィの視点、その向かう先。ハリス中佐の背――の向こうにヘンダーソン大佐、その冷笑。


『事実を曲げるな』キースから棘。『隙と見るなり細工に出るなら、手札は悪意の証だろうが』


「で、私を悪者に仕立てる、と」ヘンダーソン大佐が肩をすくめる。「悪意が見えるな。実に解りやすい」


『なるほど』バレージの声が緩んだ――とほぼ同時、ネットワーク図の居住区画で緑の網目が急拡張、呑み込んだ。『悪くない』

「感謝します」ドレイファス軍曹が言葉の向く先を変え、〈“ホリィ”、接続認証コードを発行。権限設定、最高位。対象ユーザ――〉

 と、眼をチャンネル035へ。〈――“K.H.”〉


〈相も変わらずか〉オオシマ中尉が視覚、チャンネル001に映るヘンダーソン大佐の冷笑へ。〈舌ばかりよく回す〉

〈こちらデュラック軍曹、〉携帯端末ネットワーク越し、声に合わせて艦内ネットワーク図へタグが立つ。〈レーザ通信機B-1-1、ファームウェア書き換え用意よし〉

 オオシマ中尉の視覚、艦外戦術マップの“オサナイ”から白く破線――が“シュタインベルク”へ。

〈そのまま待機〉オオシマ中尉が言を返して、〈命令に変更なし。合図を待て〉

〈こちらホンダ軍曹、〉艦内ネットワーク図、右舷前方にもタグ。〈レーザ通信機E-1-2、書き換え用意よし〉

 戦術マップ上、破線が遠く“オーベルト”へ――向くが“オサナイ”自体の艦体に遮られる。赤く点滅。

〈艦体姿勢に留意〉オオシマ中尉がデータ・リンク越し、〈ファームウェア書き換え後、自律判断で対策ツールを送信〉

〈こちらナッタ軍曹、〉さらに左舷前方。〈レーザ通信機C-1-1、書き換え用意よし〉

 さらに破線、こちらは“ダルトン”へ――ただしこちらも赤く点滅。

〈よし、〉オオシマ中尉が声を引き締め、〈後はヘインズ次第だ。各自注目、チャンネル035〉


 キースの視覚、その一隅。チャンネル001。ヘンダーソン大佐が浮かべる冷笑、その斜め上へウィンドウ――『【受信】アクセス・コード:軌道エレヴェータ“クライトン”より』。

 すかさず“キャス”からテキスト表示、『並列演算モジュールのアクセス権ね。規模は――へェ、宇宙港区画のプロセッサかき集めたみたい』

『“仕立てる”? 悪者に?』素知らぬ顔で鼻息一つ、キースが戦闘用宇宙服から声を低める。『掌を返す悪党そのものが、何を今さら――ケヴィン・ヘンダーソン大佐』

 言う間にキースが打鍵、《使え、“キャス”》。


『凝りに凝った演出、』ヘンダーソン大佐が眼に光。『ご苦労なことだ。今この瞬間にも――小細工に余念がないようだな』


『言ってくれるわ』“キャス”からテキスト、『艦内プロセッサ、ダミィの介入かますわよ。合図して』

『責任の在り処を』キースの声がなお冷える。『すり替えるな、ケヴィン・ヘンダーソン大佐。そちらが始めた小細工だろうが』

 そこでキースがさらに打鍵、《介入と同時に友軍全艦の回線開放、“ネクロマンサ000”、アクティヴ・ステルス同期権限》

『力業よね』“キャス”がテキストに皮肉を滲ませる。『友軍全艦、こっちから制圧してファームウェア書き換えるわ』


『堂々巡りというわけだ』ヘンダーソン大佐は笑みすら覗かせ、『正当性を欠いた悪あがき、ご苦労なことだな』


《セキュリティは?》キースが打鍵。

『あるでしょ、デカい囮が』“キャス”からテキスト。

 同時に“キャス”がウィンドウの一つを明滅、表示に『“テルプシコレー・モジュール”:軌道エレヴェータ“クライトン”』。

『こんだけ並列処理でぶち込んでみなさいよ』“キャス”が続けてテキスト表示。『反応しなきゃただの木偶だわ』

『“正当性”が聞いて呆れる』キースは声に冷気を潜ませ、『マリィを操り人形にして、神の声でも気取るつもりか』


『実績なくして、』ヘンダーソン大佐の瞳に、鋭利。『何の正当性かね?』


《よし》宙に、キースが打鍵。《やれ、“キャス”》

『“実績”か』キースは鼻息一つ、『恥ずかしげもなくよく言える。救難信号を悪用し、勝手な都合で“事実”とやらをでっち上げ、』

 “キャス”からテキスト、『ダミィ介入開始』。“オサナイ”のネットワーク図、中継機を表す輝点が現在位置から紫を帯び始め――、

 そこでキースは声を低めて、『遂には同志までも使い捨てた、その“実績”で何を語るか』

『アクティヴ・ステルス同期権限ぶちかましたら、』“キャス”がテキスト、『ファームウェア書き換えて、デヴァイスを時間差で再起動――けどその間にバレたら厄介よ。時間稼いで!』


〈ツール起動!〉フォッケ中尉が声を上げる。〈周波数変調!!〉

 電子戦艦“トーヴァルズ”送電中枢。操作卓の船務長、その視覚に展開した艦内ネットワーク図で――増えた。結節。送電中枢から電力線沿い、麻痺した中継機を無視して艦橋へ。戦闘指揮所へ。さらに文字列がポップ・アップ、『データ・リンク確立』。

〈戦闘指揮所へ!〉船務長が声を載せる。〈こちら船務長! 送電中枢、周波数変調を開始! 繰り返す、周波数変調を開始!!〉


 視野が、晴れる――。

 ――通った!?

 “トーヴァルズ”電子戦中枢、“クラリス”が意識を艦内ネットワークへ。

 ――電力線通信……でも中継機をスキップしてる!?

 しかし他に可能性がないではない。

 ――送電の周波数を直接? そういうことなら!

 電子戦中枢のクロック上昇、演算負荷をかち上げる。

 ――ネズミの小細工は、通用しないってことよね!?


 警告音――。

〈始まった!〉ギャラガー軍曹から鋭く声。

 “オサナイ”戦闘指揮所、メイン・モニタに警戒色。敵のセキュリティ・システムが表示をポップ・アップ――『【電子介入】』。

〈バレたか?〉オオシマ中尉が眉をひそめる。

〈いえ〉ギャラガー軍曹の視覚へウィンドウ、『敵・最優先コード展開中』。

 見る間も与えずメイン・モニタが自動表示、『防壁展開』。その横、艦内ネットワーク図に赤い輝点が散発――から増殖、表示が警戒色へ。『異常検出:中継機』。

〈こっちもか〉ギャラガー軍曹から見ても、ネットワーク図上の赤、つまり電子介入の勢いは最優先コードに負けていない。〈“キンジィ”?〉

〈いえ、〉“キンジィ”が低く返す。〈まだアクティヴ・ステルスの同期権限が――“キャス”からメッセージ!〉

 そこでギャラガー軍曹の視覚へテキスト、『陽動、電子介入を実行中』。

〈手を変えたな〉そこへオオシマ中尉。〈いずれ敵の眼を逸らして悪いことはない〉

 ギャラガー軍曹が指を操作卓へ。モニタへ展開、中継機リスト、その詳細。

〈そういことか〉ギャラガー軍曹が舌なめずり、〈電子介入のタイミング、分散させてますね〉

〈“ハンマ”中隊各員、〉オオシマ中尉がデータ・リンクへ。〈ヘインズが陽動に入った。待機継続、だがすぐ来るぞ〉


〈電子介入!〉高く、鋭く、オペレータ。〈“オサナイ”に!〉

 電子戦艦“トーヴァルズ”、電子戦指揮所。サブ・モニタに展開する艦隊ネットワーク図、その一角から警告表示がポップ・アップ――『検知:【電子介入】』、『検知箇所:“オサナイ”』。

〈“オサナイ”艦内から!?〉クィネル大尉が眉をひそめる。〈防壁パターン変更! スウィープ開始!!〉

〈いや、最優先コードを抜いて……中継機、を……?〉思案中のカッスラー大佐から低く声。〈……艦隊の外か!〉

 眼を“放送”、チャンネル035へ。“K.H.”の鋭い眼――を映す“放送”波、その出どころは――軌道エレヴェータ“クライトン”。

〈手繰れ!〉鋭くカッスラー大佐。〈軌道エレヴェータ!!〉

〈くそ!〉クィネル大尉が歯噛み。〈コマンド送信! “オサナイ”のセキュリティへ!!〉

 “トーヴァルズ”内部を襲う撹乱は、艦外への介入を許さない。せめても警戒の指示を下すがせいぜい、つまりは先手を打たれたことになる。

〈警告! “ゴダード”へ!〉カッスラー大佐が指示を継ぐ。〈ヘンダーソン大佐へ!!〉


 ヘンダーソン大佐の視覚、チャンネル035のキースから鋭い眼――の、斜め上にテキスト表示。『検知:【電子介入】』、『検知箇所:“オサナイ”』。

 皮肉を片頬に示して笑み、ヘンダーソン大佐が声に嘲弄。

「では訊くが――“K.H.”、」大佐は小さく首を振りつつ、「綺麗事で、そちらは何を築いたというのかな?」



     *****


本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


Reproduction is prohibited.

Unauthorized reproduction prohibited.


(C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.


     *****



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ