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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第19章 魔窟
209/221

19-7.流入 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

〈け!〉シンシアが舌打ち一つ、〈大した面の皮だぜ〉

 視覚にはチャンネル001、“放送”越しにヘンダーソン大佐、その不敵。

 そこへ声。『けど、大義名分を狙うくらいの計算は働いてるね』

『“トリプルA”!』シンシアの声に怪訝の色。『“トーヴァルズ”は!? 弾かれたのか!?』

『“裏口”を塞がれたよ』“トリプルA”は苦笑気味。『外部からの干渉はこれが限界だね』

『マリィは!?』

『僕は神じゃない――残念だけど』事務的に“トリプルA”。『だけど敵のナヴィゲータを黙らせた。それに“ウィル”と“イーサ”も、ハリス中佐とかいう証人だって残ってる』

『孤立してるじゃねェか!』シンシアが歯を剥いた。『電子戦艦が相手だぜ!?』

『マリィ独りより状況はマシさ』“トリプルA”は悪びれもしない。『それに敵も完全ってわけじゃないらしい』

『遊んでる時間はねェんだ、』シンシアが苛立ちを噛み殺しつつ、『いい報せなんだろうな!?』

『出てこなかったんだよ、』“トリプルA”が声を潜めて、『“キャサリン”が』


「何を勝手な!」後ろ手のハリス中佐が歯を軋らせる。

 第6艦隊旗艦“ゴダード”第1格納庫横、エアロック横でハリス中佐は陸戦隊員らへ睨みをくれる。「これが貴官らの指導者か!」

『優先すべきは惑星“テセウス”と星系“カイロス”の秩序です』カリョ少尉の声が聴覚へ。『大佐の功績なくして、それが成立するとでも?』

「我欲の塊に!」ハリス中佐から怒り。「“テセウス”を売り渡してでもか!?」

『では連邦の首脳部に、』負けず、カリョ少尉の声にも静かな怒り。『――我欲の影がない、とでもおっしゃる?』

「……平行線か」ハリス中佐が歯を軋らせる。

『犠牲を抑えるためなら、』頑然、カリョ少尉。『それも一手というものです――中佐の拘束を解除』

『は』中佐の背後、陸戦隊員がプラスティック・ワイアへナイフを入れる。

「よく言う」鼻息一つ、ハリス中佐――の視覚へ文字列。

 いわく『チャンネル001介入準備完了――“ウィル”』。


 電子音――が手許、携帯端末から。

 キースが眼を一瞬――だけ落としてヘンダーソン大佐へ向き直る。

 フォーク軍曹の携帯端末、モニタに文字列、読み取れたのは『SOS from “Cath”(SOS “キャス”ヨリ)』。

 引き抜く。ケーブル。携帯端末2台が孤立する。

「それで、」“放送”越し、キースが大佐へ厳しく眼。「大佐がマリィを――エアロックにいる“実物”に手を出さない保証はどこに?」

『簡単なことだ』大佐が口の端を吊り上げる。『そちらが干渉をやめればいい』

「よく言う」キースが鼻白む。「マリィを殺す動機がこちらにあるとでも?」

『私を陥れる理由なら』大佐が声を低めて、『事実、今回の“茶番”でも“実物”のミス・ホワイトは無事だった』

『異議あり!』チャンネル001、そこで割り込む声がある。『こちらスコット・ハリス中佐! “ゴダード”第1格納庫前から引き続きエアロックを監視中!!』


〈割り込まれたか!〉カッスラー大佐が眉をひそめる。

 電子戦艦“トーヴァルズ”戦闘指揮所、モニタの一つにカッスラー大佐が仁王立ち。

〈しかもこっちの庭でですよ〉クィネル大尉が舌を打つ――モニタの副表示は『チャンネル001』。〈“クラリス”でも止められなかったか……!〉

〈洗え〉一言残してカッスラー大佐が背後へ、〈電子戦中枢、パワー解放!〉


〈割り込め!〉デミル少佐が号令を下す。〈回頭後主機関全開! 撹乱幕を焼き払え!!〉

 フリゲート“シュタインベルク”が急回頭、主機関の噴射炎を“オサナイ”の傍らへ。プラズマ化した推進剤は撹乱幕の粒子を灼いて、光の柱を描き出す。

〈感あり!〉索敵士の声とともに戦術マップの霧が晴れる。〈敵揚陸ポッド、数――1!!〉

〈1!?〉砲術長席、ウィルキンス大尉が声を尖らせ、〈数が合わん!!〉

 その間にも揚陸ポッドは戦闘機動、ランダムな軌跡を曳きつつ“オサナイ”至近へ。

〈構わん!〉デミル少佐が即断、〈墜とせ!!〉

 すかさず対空レーザ、照準を敵の予測軌道へ――。

 と――。

〈発見!〉索敵手が声を跳ね上げた。〈噴射炎!!〉

〈位置は……くそ!〉デミル少佐が歯を軋らせる。〈“オサナイ”の!!〉

 戦術マップ、敵影――“オサナイ”の陰、輝点が2。


『スコット・ハリス中佐へ、こちら“K.H.”』チャンネル035からキースが呼びかける。『マリィへの支援を感謝する』

「“K.H.”へ」エアロック前、ハリス中佐の声は硬い。「単刀直入に告げる。ミス・ホワイトには護衛が要る」

『異論はない』重くキース。『我々は万能じゃない。護衛役を?』

「引き受けた」即答。

『話は決まった』キースが決然、『惑星“テセウス”、並びに星系“カイロス”の人々へ告ぐ』

 ハリス中佐が陸戦隊へ睨みをくれる。「これで大義名分はこちらのものだ」

『マリィ・ホワイトと護衛役スコット・ハリス中佐、』キースの声が艦内スピーカを震わせる。『二人の中継を絶やしてはならない』

 ハリス中佐が伸ばして右腕、「銃をよこせ」

『マリィを証人としておきながら、』低く、重く、キースの怒り。『偽者を仕立て、あまつさえマリィ本人の抹殺を仕組むなど――卑劣の極みではないか!』

『さて、』そこへチャンネル001、ヘンダーソン大佐。『卑劣なのはどちらかな? この偽者騒ぎが自作自演でないというなら、証拠はどこに?』

 陸戦隊員に躊躇が覗く。ハリス中佐が前へ出る。ライアット・ガンを――掴む。

『減らん口だな』キースの声から嫌悪が覗く。

 ハリス中佐が腕に力。

『その言葉、』ヘンダーソン大佐が肩をすくめて、『そっくりそのままお返ししようか』

『こちらには証人がいる』キースが声を低めて、『スコット・ハリス中佐――彼がどう証言するかな?』

 そこで、チャンネル035に――重い音。それが2度。


〈接舷反応! 複数! 検出区画D-2、およびD-4!!〉データ・リンク越しにオオシマ中尉の声が届く。〈防衛戦! 外殻端末にクラッシャ展開! “クロー・ハンマ”、“アルファ”と“ブラヴォ”はハッチD-2、“エコー”と“フォックストロット”はハッチD-4へ!!〉

〈こちら“クロー・アルファ”、了解〉手信号一つ、“クロー・ハンマ”第1分隊長を務めるシーモア軍曹が壁を蹴る。〈ハッチD-2を防衛〉

〈“クロー・エコー”、了解〉さらにデータ・リンクへ声、リュサック軍曹。〈ハッチD-4を防衛〉

〈“ハンマ・ヘッド”へ〉追従する分隊を視界に収めつつシーモア軍曹。〈こちら“クロー・アルファ1”。防衛優先ですね?〉

〈こちら“ハンマ・ヘッド”、〉オオシマ中尉から即答。〈防衛を優先。繰り返す、防衛を優先。自律戦闘を許可、敵の排除を第一とする〉

〈こちら“クロー・アルファ1”、了解〉シーモア軍曹が再び手信号。

 “クロー・アルファ”と“クロー・ブラヴォ”、両班が進路を分かつ。

〈“クロー・アルファ1”より第1分隊各員へ、〉シーモア軍曹が通路を折れた――外周方向へ。〈挟撃を仕掛ける! 突入位置へ!!〉


〈来ました――発光弾!〉

 第6艦隊旗艦“ゴダード”、戦闘指揮所でオペレータが声を上げる。メイン・モニタの一角からウィンドウがポップ・アップ、“オサナイ”近傍の光学観測データに――光。緑。それが3つ。

〈接舷成功!!〉

〈ヘンダーソン大佐、〉艦長席からシャノン大佐。〈陸戦隊が“オサナイ”に接触〉

〈よくやった〉ヘンダーソン大佐がデータ・リンクの向こうから、〈揚陸ポッドへ指示、手段は問わん。モード“S”、コード“V”〉

〈了解〉シャノン大佐はオペレータへ、〈妨害波停止! 揚陸ポッドへ通信――モード“S”、コード“V”!!〉


〈妨害波が……!〉

 “シュタインベルク”戦闘指揮所。オペレータの声を待つまでもなく、戦術マップが解像度を――増した。

〈通信波!〉さらにオペレータ。〈発信源――“トーヴァルズ”!〉

 戦術マップ上、電子戦艦“トーヴァルズ”にタグが立ち――同時に波が戦場を呑む。

〈通信……!?〉艦長席、デミル少佐が眉をしかめる。〈内容を……いや、そういう意味か!〉

 デミル少佐の睨む先に――戦術マップ、“オサナイ”、そこに取り付いた揚陸ポッド。

〈“ハンマ”中隊!〉デミル少佐が噛み付いた。〈備えろ! 敵が何か考えてる!!〉


〈クラッシャ発動しました!〉

 “オサナイ”艦橋、“キンジィ”がギャラガー軍曹へと告げる。同時に視界、艦内マップに赤。2箇所。

〈来ました!〉ギャラガー軍曹が声を上げた。〈エアロック回線隔離! 対象区画D-2! D-4!!〉

〈やはりな、最優先コードを使いにきたか!〉オオシマ中尉が噛み付く。〈艦内端末にトラップ展開!!〉

〈無茶です!〉抗議、ギャラガー軍曹。〈ヘインズの“放送”までぶった切りますよ!?〉

〈エアロック横だけでもいい!〉オオシマ中尉が声を艦内スピーカへ。〈“クロー・ハンマ”各員、現地到達を最優先! 繰り返す、現地到達を最優先!!〉


 “オサナイ”艦内が警告灯の赤へと染まる。

「力づくというわけか?」キースから冷えた声。「ヘンダーソン大佐」

『なに、自衛というものだよ』ヘンダーソン大佐の声は至って涼しい。『ミス・ホワイトの身はともかく、今の我々は命をやり取りする間柄だ――違うかね?』

『よく言えたものですな大佐!』チャンネル001の一角からハリス中佐が声を尖らせ、『先ほどまでの言葉をお忘れか!?』

『不手際は認めよう』ヘンダーソン大佐は掌をかざして、『悪意ある工作を許した、その一点に関しては』

「ならハリス中佐に武装を……」重い音――キースの眼前、壁面端末に『外殻破損』の警告表示。「………武装を渡せ。それからマリィと中佐の姿を常時中継、陸戦隊の武装も解除」

『我々にもミス・ホワイトを護る義務がある』ヘンダーソン大佐は苦笑一つ、『武装解除は呑むわけにいかんな。だがハリス中佐の武装は認めよう。中佐には事態を見届けて……』

「ハリス中佐は“証人”だ」衝き込んでキース。「“不手際”を晒す大佐には務まらん。違うか!」

 重い音。響く圧。振り向くまでもなく近い。

〈キース!!〉“ネイ”の声とともにモニタへ警告――『内殻ハッチ破損』。

 キースの背に感触、ロジャーの掌。

『いいとも』ヘンダーソン大佐が小首を傾げ、『あとは“K.H.”の健闘を祈るとしようか』

 チャンネル001、ハリス中佐の手へライアット・ガン。それだけ見届けて、キースはヘルメットのヴァイザを閉じた。そのまま通路の壁を蹴る。


 チャンネル001の一角、エアロックのハッチが開き――切るのを待たずにハリス中佐が中へ声。

『ミス・ホワイト! ハーマン・カーシュナー上等兵! よく耐えた!!』

『……艦、長……!』荒い息の中からハーマン上等兵、その姿がまたチャンネル001の一角へ。

『悪いが警戒中だ、手は貸せん! 自力でミス・ホワイトを連れ出せ、ここで待つ!』


〈通信スタジオだ!〉クィネル大尉が声を張る。〈送出データから手繰れ! 力業でいい!!〉

 電子戦艦“トーヴァルズ”、戦闘指揮所のオペレータ達から声が返る。〈了解。“ゴダード”通信スタジオの送出データを走査〉

 サブ・モニタ群にウィンドウが多数。それぞれに回線の解析状況、付されて電子戦中枢の負荷グラフ――が跳ね上がる。

〈勘か?〉カッスラー大佐が投げて問い。

〈早いに越したことはないでしょう〉クィネル大尉はサブ・モニタ群へ眼を流しつつ、〈どのみち連中、通信スタジオのデータは盗ってるはずです。でなきゃ割り込めるはずありません〉

〈で、〉カッスラー大佐から頷き一つ、〈後は力技か〉

〈力は、〉クィネル大尉は獰猛に笑む。〈使えるときに使うもんでしょう〉


〈来るわよ!〉艦内スピーカから“ネイ”が警告。

〈見えてるよ〉苦笑一つ、ロジャーが抜き撃ち。

 P320セイバーの9ミリ弾が捉えて影、打ち弾く。舷側通路、転がり奥――で光と圧。閃光衝撃手榴弾。

 壁を蹴る。間を詰める。内殻ハッチのなれの果て。ロジャーが腰から閃光衝撃手榴弾、ハッチ向こうへ放り込む。

 乾いた金属音――が、やけに近い。

 舌打ち一つ、張り付く。隔壁。光が荒ぶる。圧が暴れて周囲を打ち据え、束の間の静――金属の腕。

〈タロスか!〉

 隔壁を蹴る。擦過の圧――軟体衝撃弾。

 その隙に。

 ハッチから銃口、それが複数。いずれも10番ゲージ、撃ち散らす。軟体衝撃弾が押し寄せる。

 舌打ち一つ、壁を横蹴り。ロジャーが軌道をねじ曲げ――たそのすぐ脇、側壁に炸裂、立て続け。

 視界の隅、ハッチからタロスが身を乗り出す。その左腕、大出力レーザが首をもたげた。




     *****


本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


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