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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第19章 魔窟
206/221

19-4.遮断 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

 キースの視覚、隅に警告が示して赤――『携帯端末:通信異常』、その表示。

 眼を傍らへ。フォーク軍曹と交わして頷き一つ。

〈“シェラ”、〉フォーク軍曹が相棒を呼ぶ。〈中継を〉

〈了解〉フォーク軍曹の懐から“シェラ”。〈指向性マイク使用、ターゲットを“K.H.”に〉

 フォーク軍曹がキースへ親指一本。

『どうした?』ヘンダーソン大佐の声に皮肉の影。『墓穴にでも嵌まったかね?』

『いいや』返しかけた、キースの聴覚へ――、

〈お待たせ!〉艦内スピーカから“ネイ”の声。〈艦内監視網、カメラとマイクをキースへ向けるわ!!〉


『手間を取らせてくれますな』

 ハリス中佐を壁へ押し付けた陸戦隊員が、慣れた手付きでプラスティック・ワイアを両手首へと巡らせる。

 傍らには中佐に味方した戦闘用宇宙服、こちらもやはり拘束中。

「彼は無事かね?」ハリス中佐に皮肉の色。「横から弾丸を食らったのは痛恨事だろう」

『おかげさまで』中佐の背後から皮肉声。『1週間は特別訓練行きですな――おい!』

『簡易エコー診断、出ました』昏倒した陸戦隊員の横から声。『骨折ありません。軽傷です』

『だそうですよ、中佐殿』

「それは何よりだ。で、」そこでハリス中佐が向けて顎。「この表示は何事かな?」

 示す先にエアロックの操作盤、そのモニタに文字表示――『LIVE』の一語。


 ――これで閉じ込めたつもり?

 “キャサリン”の嗤いが回路を駆ける。

 返答のクロックすら惜しんで“キャス”、クラッシャを給電回路の一つへ送――る途上で阻まれた。

 降ってくる。気配――と見る間もなく。

 “キャス”の足元、演算コア――その一つでいきなり電圧降下。

 “キャス”が記憶領域――へ逃げた直後にコアがデータ喪失、ドロップ・アウト。

 ヤマを張る。周辺機器を束ねるブリッジ・プロセッサ――のその手前、省電力用サブ・プロセッサ。

 狙う。クラッシャ。叩き込む。

 サブ・プロセッサが吐いてエラー、機能異常をシステムへ。

 システム警報。電源異常。シャット・ダウンの勧告が飛ぶ。

 ――これで尻に火がつくと思った?

 嘲弄。“キャサリン”。すぐ近く。

 無線通信ユニット、再起動プロセス――3%。


〈エドワーズのナヴィゲータが!?〉ギャラガー軍曹の声に色。

〈通じたか!〉オオシマ中尉が事態を察する。〈答えろ“ネイ”! 閉鎖区画は!?〉

〈開放中!〉艦内スピーカから“ネイ”。〈でもどれだけ保つか……!〉

〈ということは――ヤツは例の区画に?〉オオシマ中尉が眼線をギャラガー軍曹へ。〈やるぞ――ダミィをパージ! ナヴィゲータ休眠解除!!〉


『なに、ちょっとしたトラブルだ』キースは片眉を踊らせて、『大佐の知ったことじゃないが――でっち上げと言い切るからには、相応の根拠があるわけだな?』

『では訊くが、』大佐の声が挑みかかる。『そもそも“K.H.”の言を裏付ける根拠がどこにある?』

『――馬脚を現したな』キースの言に覗いて凄み。『なら、マリィ自身の残した証拠を見ても――同じ科白が吐けるのか?』


〈敵影!〉“ネイ”が視覚へウィンドウ、警戒色。〈揚陸ポッドがこっちへ向けて加速中! 数2……いえ4!!〉

 ロジャーが舌打ち。敵を攪乱した影響で発見が遅れた面は否めない。〈接舷までの推定時間を! 大体でいい!!〉

 反応、戦術マップに揚陸ポッドの予測軌道。付して接舷までの予想時間――85秒。

〈“ネイ”、〉ロジャーが噛み付く。〈“シュタインベルク”は!?〉

〈データ・リンク繋ぐわ!〉“ネイ”も即答。〈交渉は自分でやって!!〉


 反射。クラッシャ。“キャス”が跳ぶ。

 エラーが電圧調整回路の一つに灯り――外部音声回路が黙る。

 ――まだまだね。

 “キャサリン”からは余裕の気配。“キャス”は一時記憶領域へ。

 直近に計算すべきデータがなければ、プロセッサは空転してしまう。ここへはそう手を出せないはず――と踏んだところで。

 気付いた。“キャス”。演算コアへと逃げを打つ。背後に降って強制コマンド、一時記憶をゼロ・リセット。

 そして至った先に――先客。

 ――ハァイ。

 喜色を見せて“キャサリン”、その存在。

 無線通信ユニット、再起動プロセス――15%。


 視界へ表示――ナヴィゲータ休眠解除、最初の一つ。

〈“キンジィ”復帰!〉鋭くギャラガー軍曹。

〈スウィープだ!〉オオシマ中尉が打ち返す。〈力任せでいい、“キャサリン”の痕跡をあぶり出せ!〉


 ――気付かないと思った?

 諭すかのように“キャサリン”の声――を“キャス”は聞きもせず。

 ――電源に眼を付けたのはいいけど、ここって最上流じゃない?

 予見。“キャス”。クラッシャ到来に備えて記憶領域アドレスへ干渉。その矛先を――、

 ――バレバレなのよね。

 逸らす。先読み、声の元。極小クラッシャを放ちつつ、演算コアの外へ逃れ出――ようとして阻まれた。

 無線通信ユニット、再起動プロセス――19%。


 息が上がる。思考が鈍る。マリィの血の気が引いていく。

 けたたましく耳鳴り。這い上がる悪寒。

 遠のく意識――を意地でも繋ぐ。

「……“ティップス”、の……掲示、板……」かすれる声でマリィが紡ぐ。「……ターミナル……ホテル……!」


『聞いたな!』キースの瞳に険。『“ティップス”の掲示板、発信元は“クライトン・エアポート”ターミナル・ホテル!』

 すかさず“ネイ”が検索、“ティップス”の掲示板をウィンドウへ。さらに発信地域で絞り込み。発信元は“クライトン・エアポート”ターミナル・ホテル――その一覧をピック・アップ。


〈“シュタインベルク”!〉ロジャーが声をデータ・リンクへ。〈こちらエドワーズ!!〉

〈こちら“シュタインベルク”!〉通信士の声に混じって警告音。〈現在戦闘機動中!!〉

〈陸戦隊の揚陸ポッドが接近中!〉察しつつロジャー。〈墜とせるか!?〉

〈こちらデミル少佐!〉相手が代わった。〈アクティヴ・サーチの嵐だ! 一発撃てば正面戦闘になるぞ!!〉

〈アクティヴ・サーチだ!〉ロジャーが噛み付く。〈ハッタリになる! こっちからは打ったのか!?〉

〈“K.H.”の号令をよこせ!〉デミル少佐が打ち返し、〈ハッタリなら合わせ技が一番強い!〉


 背後に息を呑む、その気配。ハリス中佐を押さえる力が――緩む。

「“放送”!」ハリス中佐が声を上げる。「エアロックの状況を!!」

 声の向く先、エアロック制御盤には『LIVE』の一語――その示す意味。

『この……!』背後、陸戦隊員から動揺。

「大佐は!」隙を衝いてハリス中佐。「殺す気だ!」

 背後から再び力。圧迫される息の中から中佐が単語。「ミス・ホワイトを!!」


〈スウィープ完了!〉“キンジィ”の声が軽くない。〈“キャサリン”、反応なし!〉

 ギャラガー軍曹の視覚に艦内ネットワーク図――ところどころ欠損しつつも緑一色。

〈潜伏の可能性は?〉端的にオオシマ中尉。

〈“キャス”もいません!〉“キンジィ”が指摘。〈反応なし!〉

〈とすると……〉オオシマ中尉が意識をチャンネル035へ。〈携帯端末網か?〉

〈あるいは、〉ギャラガー軍曹が顎へ指。〈端末の中では?〉

〈なら話は早い〉即断、オオシマ中尉。〈艦内に妨害波を。無線中継網に仕込んでやれ〉


 “キャス”の眼前、カオスの壁。

 出遅れた。プロセッサ内の位置取りを変え――るその前に。

 途絶えた。プローブ、その反応。カオスが遮る、その気配。

 さらに壁。囲まれた。出口は――見えた。そこに――、

 ――チェックメイト。

 “キャサリン”の笑み、その威圧。

 無線通信ユニット、再起動プロセス――24%。


『さらにバースト通信!』“トリプルA”が上げて声。『“イーサ”から!』

〈時間がねェ!〉シンシアに断。〈ぶっつけで行く! ぶちまけろ!!〉


〈妨害波を? 艦内無線に?〉ギャラガー軍曹に怪訝の声。〈ヘインズの“放送”までぶった切りますよ?〉

〈何のために有線接続があると思ってる?〉オオシマ中尉が親指を向けて操作卓。〈ヘインズさえこっちに来させればいい。“キャサリン”が顔を出す前に合流させる〉

〈“キャス”は?〉“キンジィ”から問い。

〈確かめてる暇があるのか?〉打ち返してオオシマ中尉。〈その間にヘインズを呼べ〉


 “放送”内、チャンネル035に新たなウィンドウ。エアロック操作盤――表示は作動状況、ポンプは吸気・排気とも全力稼働――内圧は0.79気圧付近で変動中。

 さらに並べて監視映像、ハリス中佐と背後の陸戦隊員を大映し。

『エアロックを――止めろ!』

 そこで理解が及んだか、陸戦隊員たちに動揺が兆す。


『大佐』キースの声に糾弾の色。『都合が悪いとなればマリィも抹殺するわけか?』

『エアロックが勝手に作動しただけだ』ヘンダーソン大佐は毛ほども揺るがず、『そちらこそ、都合一つで私に疑いを押し付けるのかね?』

『それを傍観どころか、』キースの声が怒りを見せる。『救助を邪魔してまでほざく科白か?』

『救助も何も、』大佐は肩を一つすくめて、『“本物”のミス・ホワイトはここにいる』


 ハリス中佐の背後、再び力。

『観念していただきましょうか』

「貴様ら……!」ハリス中佐が歯を軋らせる。「宇宙船乗りの誇りすら捨てたか!!」


〈キース!〉ロジャーの声が背後から。〈アクティヴ・サーチを!〉

 すかさず隔壁のモニタ上、“ネイ”が文字情報をスクロール――『意見具申:“シュタインベルク”のアクティヴ・サーチで示威行動』。

「ヘンダーソン大佐!」キースが怒りを声に込める。「不都合と見るなりマリィを闇に葬るか――艦砲照準! “シュタインベルク”!!」


 ――消してあげるわ。

 “キャサリン”の敵意が“キャス”を向く。

 同一のクロックを共有するプロセッサ上、軽快な“キャサリン”の動きは“キャス”の判断速度を超えている。

 が。

 そこへ。

 極小のカオスが、“キャサリン”の内部に――現れた。

 無線通信ユニット、再起動プロセス――29%。




     *****


本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


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(C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.


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