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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第18章 反攻
202/221

18-14.閉塞 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

 “放送”映像にマリィの細身――それが一瞬。

〈“ウィル”〉シンシアが小さく眉をひそめて、〈記録したか?〉

〈もちろん〉“ウィル”が視覚へ別ウィンドウ、〈時間にしてコンマ2秒ほどってとこだが――悪くない〉

 “ウィル”が監視映像データ、逃げるマリィの相貌をズーム・アップ。

〈それだけじゃねェ〉シンシアが衝く。〈ラストで止めてみな〉

〈こいつか?〉さらに別ウィンドウ、問題の映像がスロゥで流れ――その最後。

 画像の端に――黒い足先。

〈やっぱりな。戦闘用宇宙服だ〉シンシアが断じる。〈追い付かせるな! ぶちまけろ!!〉


 途絶――。

 陸戦隊のデータ・リンクに潜んでいた“線”とでも呼ぶべき、それは気配。

 ――ァはン?

 “キャサリン”に不敵の色――と、そこへ。

 断絶が――襲う。


 視覚、情報ウィンドウがごっそり失せた。

 ヘンダーソン大佐は苦笑一つ、場のスタッフへ投げて声。

「ヘッド・セットを」

 文字通りスタッフが跳んでくる――その手からイア・カフ型のヘッド・セットを受け取るなり、大佐は“放送”へと声を流す。

「さて、またも介入があったようだ」

 そこで眼を通信スタジオのカメラ向こう――スタッフ用サブ・モニタへと移す。チャンネル035、マリィの背後に黒い足先。

「さて、どんな演出で楽しませてくれるかな?」


 トラップの作動信号が“ミーサ”へ届く――通信スタジオ内、携帯端末が一斉にブラック・アウト。

 とは言え油断はしていない。スタジオ内の無線中継プロセッサに陣取り、逃れ出てくるはずの“キャサリン”を待ち構え――、

 ――やるじゃない。

 “キャサリン”の気配。それが至近。


『ヘンダーソン大佐の魂胆、そいつがこれだ』チャンネル035、シンシアがマリィの監視映像をスロゥ・ループ。『ニセ映像の陰でマリィ・ホワイトを追っかけ回すなんざ、何考えてるか想像つくよな?』

 そこで監視映像がさらに遅く――なって黒い足先が顔を出す。

『しかも、こいつァ戦闘用宇宙服だ』シンシアの言に合わせて足先ヘズーム。『詰まるとこ正体は陸戦隊、そうまでして捕まえようってこたァ、後ろ暗い本音が透けてるよなァ?』


 ――速い!

 “ミーサ”に焦燥――とみる間に記憶領域の一部がカオスへ還る。

 通信スタジオ内、無線中継プロセッサ。間一髪で逃れた“ミーサ”を嘲笑混じりに“キャサリン”が追う。

 ――小細工はおしまい?

 “ミーサ”に痛感――“キャサリン”の判断、その動き、いずれもずば抜けて速い。クラッシャを送り込むまでのタイム・ラグは、すでに異常の域にある。

 今しも“ミーサ”が後にした記憶領域はカオスに呑まれた。クラッシャを放つ暇すらない――と。

 転送異常。移動が阻まれる。行方にカオス、不可視の壁。

 ――チェックメイト。

 気配。“キャサリン”。すぐ間近。


〈B-3区画、ハッチ閉鎖!〉カリョ少尉からデータ・リンクへ指示が飛ぶ。〈目標3名はライアット・ガンと斧で武装! 遠巻きで構わん、追い立てろ!〉


「行き止まりです!」先頭、ハーマン上等兵に声。「ハッチが……!」

「くそ……!」最後尾、ライアット・ガンを構えたハリス中佐がマリィの肩を掴みつつ振り返る。「まだだ!」

『追い立てろ!』背後に距離を置いて陸戦隊。

「通路じゃ不利だわ」振り返りつつマリィ。「広いところへ……!」

 瞬間、ハリス中佐に苦い顔。

 開けた場所ならあるにはある――第1格納庫。ただし視覚へ呼び出した艦内図、格納庫へ出るにはエアロックを抜けねばならない。そして――、

「こっちへ!」

 ハリス中佐が示して背後、エアロック――の向こうに陸戦隊員。まだ1人。

「本気ですか!?」ハーマン上等兵がマリィを追い越し隣に並ぶ。

「格納庫だ!」壁を蹴ってハリス中佐。「ミス・ホワイトを連れてエアロックへ!」

「密室ですよ!?」言いつつハーマン上等兵がマリィの手を取る。

「いずれここも密室になる!」ハリス中佐がライアット・ガンを構えた。「賭けるなら早い方がいい!」


 包囲の気配、“ミーサ”を断絶が囲い込む。孤立の意図、それが意味するところ――、

 ――喰らうつもりね?

 返ってきたのは、笑みの気配――。

 賭けた。“ミーサ”。奥に秘めた虎の子。“トリプルA”を介して託された、“キャス”の手になる――、

 対吸収衝動クラッシャ。


 発砲。ハリス中佐。軟体衝撃弾が飛翔する。陸戦隊員が壁に張り付く。

「時間は私が稼ぐ!」断言、ハリス中佐は動かない。「早く!」

 思い切る。ハーマン上等兵。マリィの手を引き前へ跳ぶ。

 陸戦隊員が反応しかけ――たところへハリス中佐が牽制の一撃。

「中佐は!?」マリィから問い。

「時間を稼いでくれます!」

 ハーマン上等兵は振り向かない。エアロックに取り付き、ボタン1つでハッチを開ける。マリィを押し込み、自らもハッチをくぐった。起動。


 命中。作動。“ミーサ”の感覚に確たる手応え。“キャサリン”の動きが鈍り――停まる。

 ここまで“キャサリン”を肥大化させた吸収衝動は、“キャス”を蝕んだそれの大元であるはず――とはキースの推測するところ。ならば“キャス”のクラッシャに賭ける目があってもおかしくない。

 すかさず次の手。“ミーサ”が“キャサリン”の居所、記憶領域をカオスへ還――そうとして。

 動く。“キャサリン”。のみならず侵食、“ミーサ”の思考にノイズが混じる。

 ――残念ね。

 “キャサリン”の思念が絡み付く。


 エアロック起動。ハッチ閉鎖。ハーマン上等兵の腕が伸びた先、壁の端末に――警告の赤。

「まさか!?」

 端末のモニタにチェック・リストがスクロール。

 気密隔壁の内外で気圧差がなければ、エアロックで足止めを食らうことは通常ない。逆に――、

「何があったの!?」マリィが振り返る、ハーマン上等兵の表情が――硬い。

「チェックの結果にエラーが……!」ハーマン上等兵は端末から眼を離さない。「しかも次々……こいつは……!」

「まさか……!?」マリィに絶句。

『“まさか”?』スピーカから悠然と――声。

「あなた――」マリィの声が震える。「――“キャサリン”!!」


〈ランチャB-4-2、〉フリゲート“オサナイ”戦闘指揮所にオペレータの報告が上がる。〈1番から4番まで放出完了! 有線誘導モード、諸元入力!〉

〈ランチャD-2-1、諸元転送完了! 自律索敵モード――ん!?〉

〈何か!?〉艦長席からノーラン少佐が聞き咎める。

〈3番の、キャリブレーションが……?〉

 ノーラン少佐の視覚へウィンドウ、対空ミサイルのセンサがエラーを吐いている。

〈構わん、〉ノーラン少佐が断じる。〈アクティヴ・サーチが打てれば役には立つ〉

〈了解、〉オペレータが作業を続行、〈通信ケーブル切断、自律索敵モードへ移行――所定座標へ移動開……!?〉

 警報――。

 ノーラン少佐にも判る。今しもキャリブレーションを確かめたばかりの弾頭、その応答が――途切れた。〈アクティヴ・サーチ!〉

 即応。索敵手が身に叩き込んだ動作でアクティヴ・サーチを――打つ。

〈感あり!?〉索敵手の声が裏返る。〈これは!?〉

 視覚――のみならずメイン・モニタへも結果。反応多数、しかも至近。

〈アクティヴ・サーチ!〉ノーラン少佐の肌に戦慄。〈急げ! これは……!!〉

 言葉より早く索敵手のナヴィゲータが応じた。アクティヴ・サーチ、しかも連続。

 反応――しかも圧倒的多数。それが“オサナイ”を取り囲む――のみならず、

〈減速……!?〉

 反応群は明らかにその勢いを殺していた。

〈艦影解析、出ました!〉索敵手が声を詰まらせる。〈これは……!!〉

 視覚、解析ウィンドウがポップ・アップ。反応群から主だった艦影を描き出してワイア・フレーム、そこに付されたタグが示すのは――、

 “シュタインベルク”――索敵手が息を呑む。

 “イェンセン”――ノーラン少佐が唇を噛む。

 戦闘指揮所に重い沈黙――それを索敵手の声が裂く。

〈――“K.H.”です!!〉


〈“ハンマ”中隊へ、こちらヘインズ!〉“ネクロマンサ000”が味方へ向けてレーザ通信。〈出番だ! “オサナイ”を制圧、こいつを足がかりに第6艦隊へ突入する! ――接舷!!〉

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