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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第18章 反攻
201/221

18-13.悪意 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

 “キャサリン”へクラッシャの襲来ルート、その痕跡が各所の中継プロセッサ――そのファームウェアから。

 示された通過点と到達のタイミングから放出源を推定、ただし複数。

 ――惜しいわね。

 いずれ“キャサリン”の監視下にないポイントは限られる。推定放出源、その候補地点――いずれも携帯端末上。


「艇が?」眼を細めてマリィ。

「彼が、だよ」大佐に平然。「我々なしでどうするつもりかね?」

「じゃ、」マリィが唇を噛む。「公表してもいいかしら?」

「お勧めはしかねるな」大佐はかぶりを一つ振って、「“事故”の一つも起こってからでは遅かろう?」


 “キャサリン”が飛ばしてコード。

 ファームウェアが異常を吐いた。同期が外れる。警告が――短距離無線ネットワークを駆け抜ける。

 断絶が走る――データ・リンク、携帯端末網の反応が一斉にロスト。


 視界、データがごっそり失せた。

 マリィが大佐へ睨みを飛ばす。その先、大佐は肩を軽くすくめた。

「ミス・ホワイト」横からハリス中佐。「これなら細工は効かん。今のうちだ」

 唇を一つ噛んで、マリィが踵を返す――通信スタジオ、その出口へ。


 間――。

 “キャサリン”が介入したのは通信スタジオと携帯端末を結ぶ中継プロセッサ、携帯端末間のデータ・リンクそのものを断ち切ったわけではない。

 来る、と踏んだ――その時。

 異常は電源供給ライン、局所的。短距離無線、中継プロセッサが――電源喪失。

 訝しむ。プロセッサの電源まで落としてしまっては、中からの干渉手段を失うことになる。

 と、そこへ――。

 クラッシャ。削いでデータ、穴がカオスへと還る。

 笑みの気配――“キャサリン”。

 手繰る。クラッシャ、その痕跡。その大元を探り出し――、

 コード送信。ファームウェアへ。処理落ち――硬直。


 通信スタジオ出口をマリィがくぐった――ところで。

 通路のモニタ、情景に違和感。

 ノイズが一瞬、その向こう――からマリィのバスト・アップが浮き上がる。ただし周囲の情景は――スタジオ内。

「“キャサリン”か!」ハリス中佐がマリィの手を取る。「急いで!」

 無重力区画の壁を蹴――ろうとした、その時。

『待て!』背後から声。ナセリ軍曹が追ってくる。


 ヘンダーソン大佐は手をおもむろに船内電話へ。

〈さて、艦長〉端的に大佐。〈“オサナイ”に命令を。対空ミサイルを展開しつつ第3艦隊へ向けて進出〉

〈は〉艦長から確認の声。〈第0601航宙隊の意趣返しを?〉

〈その通りだ〉大佐が片頬を釣り上げる。〈アクティヴ・サーチを打ちつつ第3艦隊の懐へ押し込みさえすればいい。数で押して敵をあぶり出せ〉


 と――電源ラインに変化が兆した。

 “キャサリン”が意識を向け直す。短距離無線――中継プロセッサに息。起ち上がる、その気配。

 ――ァはン。

 “キャサリン”の笑みに悦の色。その視界、短距離無線ネットワークが再起動。

 ――全部このための囮ってわけ? やるじゃない。


〈こちら“オサナイ”、ノーラン少佐〉

 臨戦態勢下のフリゲート“オサナイ”戦闘指揮所、緊急呼び出しを受けて副長席からノーラン少佐。

〈こちら“ゴダード”、シャノン大佐〉正面モニタへ宇宙空母“ゴダード”艦長の髭面。〈ヘンダーソン大佐の通達を伝える〉

〈どうぞ〉

〈現時刻をもって、〉シャノン大佐はそこで一息、〈スコット・ハリス中佐を“オサナイ”艦長から解任、デクスター・ノーラン少佐を後任とする〉

〈艦長が!?〉

 戦闘指揮所が色めき立つ――のをノーラン少佐が片手で制した。〈詳細を〉

〈正式な辞令は追って届ける〉シャノン大佐は眉一つ動かさず、〈まず略式辞令と命令書を。発動は即刻〉


『現在、』チャンネル001、“放送”にマリィのバスト・アップ。『第6艦隊では妨害工作が進行しています』

『工作元と見られるのは第3艦隊』何食わぬ顔でヘンダーソン大佐。『つまり――“K.H.”の意志と推定される』


「誰が!」マリィが苦く吐き捨てる。

「口を閉じて!」マリィの手を引くハリス中佐、その行く手――格納庫入り口に。

 戦闘用宇宙服――陸戦隊のシルエット。

「くそ!」ハリス中佐が重心移動、壁へと脚を振り向ける。

「中佐!」マリィも気付いて――しかし姿勢を変えられない。ハリス中佐を追い越し――たところで腕を引かれて壁面へ。

『待て!』格納庫入り口からも声。


〈受領しました〉ノーラン少佐の懐からナヴィゲータ“ブレンダ”。〈略式辞令と命令書をメイン・モニタへ〉

 メイン・モニタ、シャノン大佐のバスト・アップが後退して隣にウィンドウ2つが並ぶ。一つには略式ながら辞令、もう一つには命令書。いずれにもヘンダーソン大佐のサインがある。

〈対空ミサイルを?〉眼を走らせたノーラン少佐が思わず洩らす。

〈弾頭はこの際問題ではない〉シャノン大佐が応じて、〈要はアクティヴ・サーチを打ちつつ戦闘機動がこなせればいいということだ。主眼は第3艦隊のアクティヴ・ステルスを破ることにある〉

〈敵が回避する可能性は?〉ノーラン少佐が呈して疑問。

〈敵が悠長に構えているなら、あるいは〉シャノン大佐が小首を傾げて、〈だがチャンネル001を見てなお大人しくしている相手かな?〉

 マリィを映す“放送”は、むしろ緊迫を告げている。

〈了解しました〉ノーラン少佐に頷き。〈第3艦隊へ向けて前進、対空ミサイルを展開してアクティヴ・サーチの網を敷きます〉


「こっちへ!」ハリス中佐が針路を変えた。眼前の角、通路を折れて舷側方向へ。

「エリックが!」マリィが引かれて後ろ髪。

「今は退く!」ハリス中佐が断じて、「我々では陸戦隊に歯が立たん!」

 マリィが焦りの色――を滲ませつつ唇を噛む。頷き。

 ハリス中佐が壁を蹴る。手を引かれてマリィが続く。その行く手、曲がり角――から銃口。『止まれ!』

「待った!」正面、ハリス中佐が向けて掌。「撃つな!!」

『止まれ!』繰り返す陸戦隊員――から覗いて12ゲージ。『食らいたいか!?』

 ハリス中佐が空を掻き、両足を壁へ――つき損ねる。身体が流れる。真正面、曲がり角。「止めてくれ!」

 陸戦隊員が銃――ライアット・ガンを片手に伸ばして左腕。ハリス中佐が伸ばして右手。触れようとした――その時。

 衝撃――が陸戦隊員を殴り倒した。後頭部。

「艦長!」ハーマン上等兵の、それは声。

「銃を!」すかさずハリス中佐。「撃ち込め! 早く!!」

 我に返る。ハーマン上等兵。床に倒れて陸戦隊員、その右腕にライアット・ガン。掴み取――ろうとして抵抗。まだ動く。離れない。

「この!」振りかぶる。片手斧。防災用途の赤。

「やめ――!」マリィに悲鳴。

 構わない。ハーマン上等兵。片手斧を陸戦隊員、戦闘用宇宙服の胴部へ一撃。鈍い音。陸戦隊員の声が軋る。血は出ない。

 もぎ取った。ライアット・ガンを180度、陸戦隊員の胴へ一撃。

「よくやった!」ハリス中佐が天井に足をつきつつ、「逃げるぞ! ミス・ホワイトを!」

「殺したの!?」マリィが詰問、ハーマン上等兵へ。

「まさか」肩をすくめたハーマン上等兵がマリィへ手。「説明は後です。急いで!」


『急いで!』

 その声が“放送”へ割り込んだ――と同時、通路の監視映像にマリィの姿。

 “放送”――チャンネル001にノイズが一瞬。晴れたところで通信スタジオ、マリィのバスト・アップ――にまたノイズ。通路。逃げるマリィ、その細身。


 ――見付けたわ。

 “キャサリン”の意志に笑みの影。

 “ミーサ”の位置、状況証拠が示すのはスタジオ内の携帯端末。そこから外へ介入するなら――陸戦隊のデータ・リンク。

 すぐさま追う。“キャサリン”。“ミーサ”の痕跡。




     *****


本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


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