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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第18章 反攻
194/221

18-6.焦点 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

〈まずい!〉ガードナー少佐に緊張。〈“オーベルト”の制御を獲られたら……!〉

〈くそ!〉キースに舌打ち。〈そういうことか! ――“キャス”、艦隊加速! 最優先!!〉

〈あーもう、〉“キャス”の渋い声。〈人使いが荒いったら!〉

〈あ、畜生!〉ロジャーがヘルメットへ打ち付けて掌。〈時間が要るか!!〉

 “キャス”が視界へ戦術マップ。中央に『最優先命令』『加速11G』のロゴが躍り出る。

〈あとは、〉キースに歯噛み。〈“ミーサ”が頼りだな……!〉


〈余裕たっぷりじゃない〉“オーベルト”総合戦闘指揮所へ“ミーサ”の声。〈これで無駄足は確定でしょうに、“キャサリン”?〉

〈さあ、〉“キャサリン”に余裕の色。〈どうかしらね?〉

〈鼻っ柱は、〉“ミーサ”から挑発。〈無駄に高いと損を見るわよ?〉

〈そっくりお返しするわ〉楽しげに“キャサリン”。〈そういうの、嫌いじゃないけど〉

 と。

 視界に赤転。視覚に警告。『データ・リンク切断』、その一語。

 ――同じ手を。

 瞬転。復調。“キャサリン”が再び手を晒す――そこへ。

 スウィーパ。重ねる。不意を討つ。

 ――甘い。

 穿つ。穴。データ・リンクに“キャサリン”が意のまま空隙を刻む。スウィーパの動きが止められる。

 ――かかった!

 “ミーサ”に快哉。直後、データ・リンクが弾けるように暗転する。

 降りる、闇――を払ったのは非常灯。

〈終わった……のか?〉オペレータが希望を声に出す。

〈……各部チェック〉ハルトマン中佐が艦長席から指示を下す。

〈データ・リンク切断……いや、〉オペレータが眉をひそめた。〈中継プロセッサが飛んでます。遅効性のクラッシャでしょう。再起動を?〉

〈急ぐな〉艦隊司令席からラズロ少将が釘を刺す。〈むしろ時間を稼ぐ方が得策だろう〉

〈では、〉ハルトマン中佐が振り返る。〈“キャサリン”は、まだ?〉

〈だろうな〉ラズロ少将の声に影。〈恐らく――データ・リンクを分断して動きを止めただけだ〉

 と、視覚へ赤くウィンドウ。中央に大書き、『That’s Right(ご明察)』。

〈な……!?〉

 ラズロ少将――のみならず、その場の総員が等しく息を呑む。

〈やるじゃない〉骨振動スピーカ越しにその声――“キャサリン”。

「……データ・リンクは……!?」オペレータに呆然、通常言語。

 視覚へ『答え合わせはこちら――“キャサリン”』の文字表示――が上へスクロール。

〈何のつもりだ!?〉ハルトマン中佐から鋭く問い。

 が、スクロールは止まらない。

『頭を使ったようだけど、まだまだ思考が硬いわね』

 メッセージが無機質に流れていく。

〈――生命維持系は!?〉思い当たったハルトマン中佐が問いを放つ。

〈停止中!〉即答。

『やるんなら徹底しなきゃ』

 視覚に“キャサリン”の嘲弄が跡を刻む。

〈予備動力系!〉〈反応ありません!〉

『今回は特別、教えてあげる』

〈相変わらずの趣味だ〉ラズロ少将が歯を軋らせた。

『あなた達、見落としてるわよ』

〈くそ、どこだ!?〉ハルトマン中佐がしびれを切らす。

『――携帯端末』

〈まさか――!〉その場の全員――懐へ眼。

 各自のナヴィゲータを内包する携帯端末は、狭いながらも無線データ・リンクの手を常に伸ばしている。それを伝って行ったなら――、

 そこへ、さらに文字表示がスクロール。

『それから、最後に置き土産』

 ラズロ少将とハルトマン中佐――眼が合った。

 そこで表示が反転、新たな文字列。

『アクティヴ・サーチ』

 同時、“オーベルト”から――あらゆる電磁波が最大出力で放たれた。


〈アクティヴ・サーチ検知!〉宇宙港“クライトン”、ノース軍曹の声に緊張。

〈発信源は!?〉ニールセン大尉が打ち返す。

 戦術マップ、球状に広がる波紋が物体の形状を洗い出す。その中心――、

〈発信源――“オーベルト”!!〉


 マリィの全身に悪い脈。

 第6艦隊旗艦“ゴダード”、通信スタジオ。

 視覚に中継、戦術マップ。球状に拡がる波紋が示してアクティヴ・サーチ、その中心にタグが示して――“オーベルト”。

「キースに何をしたの!?」マリィの喉を衝いて問い。

 “オーベルト”――キースが“放送”を発したはずの、第3艦隊旗艦。それが自ら位置を明かした、となると――。

「話す義務が?」大佐の相貌に昏い虚無。

 アクティヴ・ステルスの内部からアクティヴ・サーチを放ったなら、それは打ち消し切れようはずはない。

「何をしたの!?」問うマリィの声が青ざめる。

「何か非でも?」大佐は小首を一つ傾げて、「彼は私の敵に回った。対応したとして問題が?」

「キースは……!」マリィが口を開きかけたところへ――、

〈ヘンダーソン大佐!〉艦長からの声が割り込む。

「艦長、」ヘンダーソン大佐が声を転じた。「構わん、通常言語で」

『第3艦隊……』視覚へ艦長席、唇を噛むマッケイ大佐の姿が映る。『……反応ありません!!』


〈アクティヴ・サーチ検知!〉

 “キャス”が視覚、戦術マップに三次元の波紋を描く。発信源は宇宙空母“オーベルト”――の影が背後に遠い。

〈間に……合ったか……〉苦しげにキース。

 戦術マップ中央、第3艦隊のタグに『加速中:11G』。

 “オーベルト”を背後へ引き離し、ゴースト編隊の外へ追いやればアクティヴ・サーチも脅威にならない。ただし艦隊が放出・反射する電磁波を厳密に打ち消す関係上、その動きは厳密な管制下に置く必要に迫られる。“ネクロマンサ000”はかろうじて間に合いはしたものの、それとてわずかな差でしかない。

〈加速終了!〉

 “キャス”の合図とともに、過酷なGが霧消する。視覚に警告、これ以上の加速は第二宇宙速度を超えて、艦隊を衛星軌道から放り出す。

〈第6艦隊は!?〉キースが戦術マップを睨む。

 応じて静止衛星軌道上、宇宙港“サイモン”――から下にタグ。それが眼に見えて高度を落としつつある。

〈低軌道側?〉ロジャーに怪訝の色。

〈減速してる!〉“キャス”から補足。

 衛星軌道上で減速して位置エネルギィを削れば、当然の帰結として高度は失われる。

〈何考えてやがる!?〉ロジャーが眉をしかめて、〈“サイモン”のアクティヴ・サーチから逃げるつもりか?〉

〈ゴーストの表面は灼いた〉ガードナー少佐が指摘を挟む。〈予備編隊を展開するにも時間が足りん〉

〈もしかして、〉“ネイ”が衝く。〈こっちの接近を邪魔する気なら?〉

〈連中に策が?〉キースが問う。

〈まさかね〉“キャス”が戦術マップ、第6艦隊にタグを足す――推定減速G。

 さらに現在までの第6艦隊、その観測データから弾き出した予測軌道の帯――が“テセウス”そのものにかかっている。

〈“テセウス”に?〉ガードナー少佐が浮かべて疑問。

〈じゃなきゃフライ・バイとか?〉ロジャーが指先、“テセウス”をかすめて再び上昇する軌道を描く。

〈あり得なくはないけど〉“ネイ”が第6艦隊の推定軌道範囲内、ピック・アップしたのは大気圏直上をかすめる軌道。〈減速を続けたらフライ・バイどころじゃないわよ〉

〈“テセウス”の陰に隠れる意図は?〉ガードナー少佐が仮定を置く。

〈確かに、高度を削った方が第3艦隊からは隠れやすい〉キースに思案声。〈その意義は?〉

〈この際、時間は宝の山だ〉ガードナー少佐が声を低める。〈ミス・マリィの集中力も無限じゃない〉

〈制圧するってのか?〉ロジャーから疑問。

〈彼女に引き鉄さえ引かせなければ、〉ガードナー少佐が打ち返す。〈言い訳は後から何とでもなる。それに――〉

〈それに、“テセウス”の陰で加速に転じたら?〉“キャス”が軌道を描いてみせる。〈ガードナー少佐の航宙隊だって“クライトン”へアプローチしたわけだし〉

 第6艦隊から伸びる軌道線が再び上昇、宇宙港“クライトン”へ。

〈“フィッシャー”が狙いだってのか?〉苦くロジャーが思い当たる。〈ヒューイの遠隔手術中は、確かにおいそれと動けねェが〉

〈ああくそ――いや待てよ、〉思い当たったキースの指が、戦術マップの一点へ。〈大気圏直上?〉

 “ネイ”の描いた軌道が“テセウス”へ最接近する、その一点――大気圏の最上層。

〈何かあるのか?〉ロジャーが低めて声。

〈気になるのは――〉考えつつキース。〈――空気抵抗〉

〈そこまで高度を落としたら、真っ先にゴーストが摩擦熱で……〉そこでガードナー少佐に得心の色。〈……まさか、それを!?〉

〈連中、第3艦隊のゴーストを潰す気でやがるのか?〉ロジャーが意を汲む。

〈俺達の狙いは白兵戦、つまり第6艦隊への接舷だ〉キースに重く頷き。〈それは連中も読んでるだろう。つまり――連中はゴーストの耐えられない場所で待ち受けていればそれで済む〉

〈ステルスさえなきゃ、人質の乗ってない“ハンマ”中隊のミサイル艇なら……〉ロジャーが指先、ヘルメットを小突く。〈……ま、いいカモだわな〉

〈それに、〉キースが眼を転じて“放送”画面。〈少佐の指摘もある。マリィが時間を稼ぐにも限界がある〉

〈つまり、〉ガードナー少佐が後を引き継ぐ。〈時間はあまりない。第6艦隊に大気圏への接近を許せば、その後はヘンダーソン大佐の思う壺だ〉

〈その前提だと――〉“ネイ”が戦術マップ、第6艦隊の予測軌道を強調表示。〈――いえ、多分当たってるわ。今までの観測データを追加〉

 予測軌道の帯が眼に見えて狭まる。収斂する先に、キースの示した一点――大気圏直上。

〈じゃ、その前に追いすがるとして――〉ロジャーが促す。

 “キャス”が第3艦隊の軌道を重ねた。現在の軌道から減速を続け、第6艦隊の軌道へ迫るとして――接敵できるのは大気圏の、その寸前。

〈――要するに、チャンスは一回こっきり〉苦笑を乗せて“キャス”の声。〈待ったなしの一発勝負ね〉


〈ざーんねん、〉ふと聴覚へ“キャサリン”の声。〈出し抜いてやったと思ったのに〉

 宇宙港“クライトン”。気密隔壁を前にした第3艦隊陸戦隊の視覚には、戦術マップ――“オーベルト”だけが加わった静止衛星軌道の勢力図。

〈“キャサリン”!?〉ノース軍曹の声がすっぽ抜ける。〈――もしかして!?〉

〈あらバレた?〉楽しげに“キャサリン”。〈アクティヴ・サーチと“オーベルト”、どっちも仕掛けたのは私〉

〈では、〉やや前のめりにニールセン大尉。〈第3艦隊は!?〉

〈相手も間抜けじゃなかったってことね〉“キャサリン”は喜色すら浮かべて、〈まァ手応えがあって退屈しないけど〉

〈ということは次の手か〉ニールセン大尉に即答。

〈話が早くて助かるわ〉“キャサリン”が軽く首肯する――と。

 2人の視覚、データ・リンク状態図がポップ・アップ。

〈こいつは……!〉

 ノース軍曹が絶句する間にも、陸戦隊のデータ・リンクが復旧していく。

〈データ・リンク〉鼻歌でも歌わんばかりに“キャサリン”。〈穴は塞いでおいたから〉

〈では……!〉ニールセン大尉の語尾に意気。

〈そ、次の手〉“キャサリン”が戦術マップ――宇宙港近傍に輝点を置く。〈救難艇“フィッシャー”よ〉




     *****


本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


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(C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.


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