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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第18章 反攻
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18-2.暴露 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

 瞬間――“放送”にノイズが一瞬。

 視覚の端、マリィはそれを捉えた。理解が頭を駆け抜ける。“放送”そのものにマリィの虚像を嵌め込む、それは詐術――即ち、マリィはもう“要らない”。

「アレックス!」

 懐。抜いた。ケルベロス。

 “アレックス”が合わせて動く。シンシアから受け取ったクラッシャを発動し――、

 ――“放送”にノイズが、再び一瞬。


〈マリィ!〉キースが最初に気付く。

〈キース!〉“キャス”が次いで声を上げる。

〈お姫様が!?〉ロジャーが眉をしかめ、

〈“ジュエル”が!?〉オオシマ中尉が歯を軋らせる。

 彼らの視覚、“放送”を映すウィンドウで――、

 仁王立ちのマリィ・ホワイトが、ケルベロスを自らの顎へ擬していた。


「動かないで!」決然とマリィ。

「ほう?」大佐が片眉を踊らせた。

『あらあら』“キャサリン”の声が余裕を見せる。『無理しちゃって』

「この“放送”を妨害したら、」マリィが大佐を真っ向見据え、「引き鉄を引くわよ!」


〈“キャス”!〉鋭くキース。〈通信アンテナ! アクティヴ・サーチ!!〉

〈それ!〉“キャス”に得心。〈それ早く言えってのよ!!〉

 言うが早いか、信号がホットラインを駆け抜けた。宇宙港“サイモン”の送信アンテナへ至ったそれは、蹴飛ばすような出力でパルス波を全周囲へ打ち放つ。

〈ぶちかませ!!〉


「ミス・ホワイト、」ヘンダーソン大佐が傾げて小首。「これは何のつもりかな?」

「決まってるわ」マリィが大佐を睨み据え、「“放送”に細工されないようによ」

「その銃からは」大佐がなだめるように、「弾丸を抜いてある。他ならぬ君の眼の前でね」

 マリィの親指が撃鉄を――起こす。

「私はそう思わないわ」銃口の上、マリィの眼に力。「この撃鉄が落ちる時は――あなたが私を謀殺する時よ!」

 その時――鳴り響いて警報音。『敵性信号! アクティヴ・サーチです!!』


〈視えた!〉“キャス”に快哉。

 キースの視覚、戦術マップに影。それが1つ2つに留まらず、瞬く間に宇宙港“サイモン”周辺を埋め尽くす。

 アクティヴ・ステルスを実現するゴースト編隊は、内部で突発した電磁波までは欺けない。宇宙港“サイモン”の通信アンテナから光の速度で伝播したサーチ波は、第6艦隊の所属艦艇ことごとくをあぶり出す。

〈このやろ!〉ロジャーが指を一つ鳴らして、〈送信アンテナなら敵のど真ん中ってわけか!!〉

〈今だ!〉無視してキース。〈敵ゴーストの表面を!!〉

〈“ダルトン”へ命令! 最優先!!〉艦隊司令ラズロ少将が即応。〈主砲、スウィープ照射! 目標、第6艦隊! 現在座標はくれてやれ! 並行して緊急離脱、最大加速!!〉


〈主砲、スウィープ斉射!〉フリゲート“ダルトン”の戦闘指揮所に艦長からの指令が飛ぶ。〈タイミング優先、自動射撃! 命令を待つな、撃て!!〉

 姿勢制御スラスタを噴きつつ、“ダルトン”が艦体軸線を貫く主砲を撃ち放つ。500メガワットの出力で撃ち出された自由電子レーザは、わずかに拡散角を帯びて第6艦隊の装甲表面を薙いでいく。


〈レーザ被弾!〉ヘンダーソン大佐の聴覚へ悲鳴じみた報告が届く。〈これは――本艦だけではありません!!〉

〈マッケイ大佐?〉大佐がデータ・リンクに問いを投げる。

〈失礼、ヘンダーソン大佐〉大佐の視覚に通信ウィンドウが開いた。〈第3艦隊方面からのレーザを被弾。出力は1ギガワット以下と確認――ですが、〉

〈敵の狙いは――〉苦い声がヘンダーソン大佐の口を衝く。〈――こちらのゴースト、か〉

〈その通りです〉第6艦体司令代理としてマッケイ大佐。

〈この際ステルスは捨てても構わん〉ヘンダーソン大佐から鋭く指示。〈主砲スウィープ斉射、第3艦隊をあぶり出せ!〉


『“サイモン”近傍に艦影――多数!』ノース軍曹の声に続いて、戦術マップに新たな影――が1つや2つに留まらない。遂には旗艦“ゴダード”の艦影を識別するに及んで、艦影群にタグが立つ。『――第6艦隊、ステルス・アウト!!』

 宇宙港“クライトン”、軌道エレヴェータを取り巻く宇宙港区画。

『くそ!』ニールセン大尉が拳を気密隔壁へ。『あと少しのところで!!』


〈主砲スウィープ斉射!〉第6艦隊のデータ・リンクをマッケイ大佐の指令が駆ける。〈目標、第3艦隊推定位置! ゴーストの表面を灼けばいい、タイミング任意――撃て!!〉


〈主砲、自動照準!〉フリゲート“リトナー”の戦闘指揮所で、ピョートル・グロモフ少佐も指示を下す。〈スウィープ角5度、タイミング任意!!〉

 以降の指令を待たず、“リトナー”が艦首から主砲の自由電子レーザを扇状に撃ち放つ。その軌跡をナヴィゲータが視覚の戦術マップ重ね、第3艦隊の推定位置を次第に埋めていく。

〈反応あり!〉索敵手の声と同時、戦術マップに影が一つ――フリゲート“ダルトン”の、さらに前。

 ナヴィゲータが瞬時に形状分析、立てたタグに――『SMD-025ゴースト』。

〈捉えたか!〉グロモフ少佐が応じて指示。〈絞り込め! スウィープ角1度!!〉


 時を同じくして、第6艦隊の各艦がスウィープ角度を絞り込む。レーザの照射密度が――上がる。


〈ゴースト被弾!〉

 第3艦隊旗艦“オーベルト”、総合戦闘指揮所にナヴィゲータの報告――と同時、戦術マップに赤いタグ。SMD-025ゴースト――その1機。

〈来や……がっ……た!〉ロジャーが呻き混じりに、〈さあ……来い! 食い付け……!〉

 赤いタグは第3艦隊本体から遠ざかりつつある。対する本体を示すマーカは――低高度側へと逃れていた。モニタに映る加速ヴェクトルは前方上方、推進力は11G。

〈転……進!〉ラズロ少将が声を絞り出す。

 Gが止んだ――と、艦体が旋回する体感。一から十まで計算し尽くされた動きで、第3艦隊の各艦が鼻先を転じる――進行方向、宇宙港“サイモン”へ。

〈進路修正! 加速開始!!〉


〈いない!?〉索敵士の声がすっぽ抜けた。

 “ゴダード”の総合戦闘指揮所、グロモフ少佐が眉をしかめる。メイン・モニタの戦術マップ、暴き出された反応はゴーストの反応、しかもたった1つだけ。

〈第3艦隊の推定位置は!?〉グロモフ少佐が問いを衝き込む。

〈出します!〉応じて索敵士。〈戦術マップ!〉

 メイン・モニタ、戦術マップにいびつな円錐台形の影――それが時間とともに拡がっていく。


〈ふむ、〉ヘンダーソン大佐が顎を撫でる。〈“トカゲの尻尾”か〉

 大佐の視覚にも戦術マップ、第3艦隊の推定存在位置――円錐台形の影が落ちる。〈なるほど、これは面白くない〉

〈完全に切れたとは限らないわよ〉“キャサリン”が笑みを声に含ませた。〈あのアクティヴ・サーチ、連中がどうやって打ったと思う?〉

〈宇宙港のホットライン辺りが臭いな〉大佐は思考ゲームさながらに、〈ということは、ステルス中でも回線を保持していることになる〉

〈でしょ?〉したりと“キャサリン”。

〈乗り気だな〉ヘンダーソン大佐の片頬に笑み。

〈ちょっと遊びたい気分なの〉“キャサリン”の声も笑む。〈面白いものを手に入れたから〉

〈期待していいのかな?〉皮肉交じりに大佐の声。

〈中身によるわね〉返す“キャサリン”。〈私は私よ。好きにやるわ〉

〈油断はするなよ?〉大佐に余裕。

〈せいぜい気を付けるとするわ〉“キャサリン”に鼻息一つ、〈さて、楽しませてくれるかしらね?〉


 宇宙港“クライトン”、気密隔壁の外側にニールセン大尉の拳が弾けた。『くそッ!』

『軌道エレヴェータ区画へのアタックは……』ためらいがちにノース軍曹。

『ヤツらが!』ニールセン大尉が吐き捨てた。『バカ正直に尻尾を残しておくとでも?』

 アクティヴ・ステルスへ突入したからには、外部との通信を保つのは初歩的なタブーに他ならない。通信の大元を手繰られでもしたなら、宇宙艦隊ぐるみの努力がそれこそ水泡と帰して果てる。

『あの救難艇、』戦術マップを注視していたノース軍曹が、ヘルメット越しに顎を掻いた。『そもそも何だって残したんだと思います?』

『戦闘機動の足手まといだからだろう』ニールセン大尉はにべもない。

『てことはですよ』ノース軍曹が首をひねる。『戦闘機動に耐えられない人間を――つまり患者を載せてるってことじゃないですか』

『それが?』

『その患者をですよ、』ノース軍曹が思考の底を探るように、『我々の眼に付くとこへ残していきますかね?』

『何が言いたい?』

『私も、考えてるんです』つっかえながらもノース軍曹。『連中が患者を守り切る――そう、自信てのはどこから……?』

『自信?』

『連中、』ノース軍曹がようやく思い当たったように、『手も打たないで人質を残して行くような真似をしますかね?』

『つまり、』ニールセン大尉の声が低まる。『救難艇には罠が?』

『上手くすれば、』考えつつノース軍曹が言葉を編む。『第3艦隊の手がかりが』

『だからって、』ニールセン大尉に怪訝声。『こっちから罠に嵌まりに行くのか?』

『罠があるってことは』そこへ割り込んだ声がある。『弱味が隠してあるってことよ。面白いじゃない』

『ちょっと待て、いつの間に……!?』ニールセン大尉の声が青ざめる。

 ノース軍曹にかすれ声。『……“キャサリン”……!』




     *****


本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


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(C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.


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