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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第17章.露呈
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17-10.決壊 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

『聴いての通りだ』星系“カイロス”へ、“放送”の中からケヴィン・ヘンダーソン大佐が告げる。『最初の“K.H.”、全ての始まりの名は――キース・ヘインズ』


〈キース!?〉“キャス”の声が裏返る。

『キース手前!?』シンシアの語尾が跳ね上がる。

『ヘインズ、お前が?』オオシマ中尉が疑問を投げる。

「ヘインズ!?」イリーナの驚き顔は呆れがち。

「キース……」

 ただ一人、ロジャーの声が低く据わる。その視覚、カーク・ヒューズ博士の率いる研究生の名に連なって――キース・ヘインズ。

「言われてみりゃ、」顎をなでてロジャー。「腑に落ちるところァあるわな」


 そこで“放送”に――顔。

 やや細めの顔立ち、鋭い眼、焦茶色の髪。その相貌に付して名――ジャック・マーフィ、本名キース・ヘインズ。並んで映像が立ち上がる――“クライトン・シティ”からの“放送”を捉えた遠景、マリィの傍ら、同じ顔。

『なるほど、“K.H.”でもあった私を追求するのなら』ヘンダーソン大佐が片頬に笑みを刻む。『ならば、最初の“K.H.”たるキース・ヘインズもまた、糾弾の矛先に立たねばならんな』


「こいつか!」軌道エレヴェータ“クライトン”の管制中枢、管制室長席でバカラック大尉が歯を剥いた。「あのハードボイルド気取り!」

「誰です?」制御卓からドレイファス軍曹が振り返る。

「いけ好かない壊し屋だ」答えるバカラック大尉の言が苦い。「“あの”オオシマ中尉と肩を並べてるのを見た。ありゃ間違いなく同類だ。性根がねじくれてるとしか思えん」


「何だと、エドワーズ!?」ロジャーへ振り向いてオオシマ中尉。

『ロジャー手前、どういうことだ!?』シンシアが声を尖らせる。

「“イーストウッド”の陸戦隊に暗示かけようとした時」ロジャーが頬を掻きつつ眼を投げる先に――キース。「あン時に馬脚出してたんだよ、なァ?」


『“テセウス解放戦線”の存在は、彼なくしてはあり得ない』大佐が言葉を宙に刻む。


「キースが少なくとも下っ端だったら、あそこで暗示にかかってるはずだったんだ」ロジャーが人差し指一本を躍らせる。「蓋を開けてみりゃこいつがびっくり、平気なヤツがいやがった。つまり高級将校と――キースだ」


『即ち連邦首脳部の陰謀も――そう、』大佐が向けた眼の先をカメラが追う――マリィ。『君のエリックが失われた、あの作戦も』


「キースは言ってたよな、“テセウス解放戦線”にいたって」ロジャーが確かめるように傾げて小首。「こいつァつまり――あの暗示にキース本人がかかるはずだってことだ。が、そうはならなかった。高級将校にゃまさかと思ったが、少なくともキースのヤツァ素面だったな」


「話したんですか?」ドレイファス軍曹がうさん臭げにメイン・モニタへ指を向け、「この“K.H.”と」

「馬鹿言うな」バカラック大尉は吐き捨てて、「だったらもっと恨み節を利かせてる」

「……ひどい話だ」ドレイファス軍曹が肩をすくめた。「で、どっちに付くんです?」

「決まってる」大尉に即答。「勝つ方だ」


『何も私はキース・ヘインズを貶めたいわけではない』ヘンダーソン大佐の声が淡然と響く。『私も“K.H.”の一人であったことは間違いないからだ』


「高級将校に関して言やァ、そりゃ説明のつくところもある」小首を傾げつつロジャー。「叛乱の機を窺うにゃ、そりゃデリケートな判断が要るだろう。理性のぶっ飛んだヤツにゃ、とても任せられた話じゃねェ」


『ただ“テセウス”を始めとする植民惑星に、』“放送”の向こうで大佐が苦笑を一つ投げる。『然るべき独立をもたらすべく行動した――それだけの話だ』


「だから、キースに暗示がかからなかったってのは、」ロジャーが人差し指を宙で一回転。「つまりゲリラの幹部でなけりゃ説明がつかねェってわけさ」


『つまり私とヘインズの思惑、』勝者の余裕が大佐に滲む。『この点で両者が対立するわけではない』


「答えになってませんよ」肩越し、ドレイファス軍曹が疑問を投げた。

「タヌキとキツネの化かし合い、まともに付き合ってたら脳が飛ぶ」眉一つひそめてバカラック大尉。「大佐に勝てると踏んだからオオシマ中尉の肩を持ったんだ。口説き落とされるようじゃ話にもならん」


「まさか親玉級とまでァ思わなかったがな」ロジャーが見据えてキースの眼。「で、ここで質問だ――何で今まで隠してた?」

 キースが見返す、その眼に――意志。


『一方で、独立の機運に紛れて悪意を通そうとした連中、』ヘンダーソン大佐の声が力を帯びて、『私はこれを断固として糾弾する』


「俺が何と返そうが、」決然とキース。「大佐はシナリオを書き換えるだろうな。乗る意味があるのか?」


『キース・ヘインズ自身がこれを意図していたなら、』大佐が肩をすくめて、『私とは永劫相容れまい』


「ま、」ロジャーの頬が苦く歪む。「お前さんを疑い出しゃ底なしだろうな」


『だが潔白であるなら、話し合いの余地はあるはずだ』ヘンダーソン大佐は笑みすら滲ませて、『色よい返事を待っている』


『潔白だ!?』シンシアが“放送”へ吐き捨てた。『言いやがる! 白旗揚げなきゃ悪者に仕立てるって肚じゃねェか!』

「大佐の下に降ればよし、ということか」オオシマ中尉が鼻で息一つ。「でなければ“サラディン・ファイル”から都合のいい“事実”を引き出すまで――と」

「だとさ」ロジャーが横目を一つ投げて、「大佐のヤツ、よっぽどお前さんが邪魔らしいな。まあ解りやすいこと」

「そこは確かめておく」オオシマ中尉から声。「ヘインズ、お前の目論見は何だ?」

「俺が“K.H.”だったとしたら、どうする?」キースがロジャーへ細めて眼。「俺を放り出すか、それとも八つ裂きにでもするか?」

「お前さんが命を張ってるなァ正真正銘、こいつァどう見たって間違いねェ」ロジャーが片頬に笑みを引っかけ、「なら『語るは無用、訊くは無作法』――問題は俺達の収まり方、それだけだ」

「我々としては見過ごせんな」オオシマ中尉の声が苦い。「大義を踏みにじった裏切り者か、あるいは志を掲げた同志なのか――意義は天地ほども違う」

「いいだろう」キースに頷き。「ここで小さくまとまっていても仕方がない。事実は事実、せいぜい派手にぶちかますさ」

「どうやるつもりだ?」むしろ静かにオオシマ中尉。

「こうするさ――“キャス”!」キースが声を宙へ踊らせる。

『何よとうとうヤケっぱち?』問う“キャス”の声は重くない。

「喜べ、ターンが回ってきたぞ」短くキース。「宇宙港の配信局に繋げ。こっちも“放送”をぶち上げる!」


「来ました、信号!」ドレイファス軍曹が色めき立つ。「配信中枢に反応!!」

「連中か?」バカラック大尉が暗に示す――“ハンマ”中隊。

『映像、出ます!』“ホリィ”がメイン・モニタに新たなウィンドウをポップ・アップ。『チャンネル035!』

 画面半分に縮小されたヘンダーソン大佐の横に映ってテスト・パターン、ただし中央にロゴが据わって曰く――“キース・ヘインズ”。


『チャンネル035に!』“ベルタ”が告げる。『“放送”が!!』

 宇宙港“クライトン”、宇宙港区画。中心部たる軌道エレヴェータ区画とを隔てる気密隔壁に取り付いたまま、戦闘用宇宙服のニールセン大尉は視覚に開いたウィンドウに焦点を結んだ。

 隅に『LIVE』の文字を掲げつつ、チャンネル035が――転じる。

『こいつァ……!』ノース軍曹が言葉を洩らす。『まさか……!!』

『惑星“テセウス”、および星系“カイロス”に在る全ての人々へ告げる』やや細めの顔立ち、焦茶色の鋭い瞳、焦茶色の髪。『もう名乗るまでもないだろう。俺はキース・ヘインズ、初代“K.H.”だ』


「キース!」マリィが声に宿して万感。「そんな!!」

『俺が何を言い張ったところで、』視覚、“放送”の向こうからキースが告げる。『ケヴィン・ヘンダーソン大佐は都合よく事実をねじ曲げるだろう。それは眼に見えている』

「そう来るか」ヘンダーソン大佐に苦い笑み。

『だから俺はここに宣言する』決然とキース。『ヘンダーソン大佐とは手を組まない』

 マリィの表情に――はっきり悲痛。


『“テセウス解放戦線”の存在意義は大きく歪められた』“放送”内からキースが断ずる。

「言い切った!?」ドレイファス軍曹が興味を剥く。

「そういう肚か」バカラック大尉の声が距離を置く。「“サラディン・ファイル”を握られている以上は、ヘンダーソン大佐の後手には回れんというわけだな」


『解放――即ち真なる自由の獲得から、独占支配の道具へと、』キースがむしろ静かに紡ぐのは――糾弾の声。『そして独裁への階段と』


「ヘインズを祭り上げた以上は、」オオシマ中尉が顎に指を添え、「容易に貶せん――とソロバンを弾いたか」

「ま、“ハンマ”中隊の大義名分てのもあるからな」ロジャーは片頬に笑みを見せ、「大佐の言い分をいちいち拾ってちゃいられねェってとこか」


『これから俺は責任を果たす――即ち』そこでキースが眼に力。『ヘンダーソン大佐を討って、“独裁国家”を打ち崩す』




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本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


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