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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第17章.露呈
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17-6.惑乱 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

『抹殺、ね』声を潜めてマリィ。『“テセウス”で指揮を執っていた人物も?』

『“K.H.”――かね?』小首を傾げて大佐。『君も見たろう。キリル・“フォックス”・ハーヴィック中将も“偽りの独立”に加担した裏切り者に過ぎんよ』

『ハーヴィック中将は“地球人”だわ――しかも生粋のね』マリィが衝き込む。『それどころか独立派ゲリラの天敵よ。“フォックス”の二つ名も植民惑星の独立運動を潰して回った産物よね?』

『単刀直入に聞こうじゃないか』ヘンダーソン大佐が先を促して眉一つ。

『そんなハーヴィック中将が“テセウス”の独立運動の最高指導者? ――そんな暇あったはずないわ』断じてマリィが大佐を見据える。『“テセウス”で指揮権を握っていた人物がいたはずよ――ハーヴィック中将の、その他に』


『……何だと?』ネット越しの声が低まる。

『今すぐこちらと連携を……!』ニールセン大尉が言い募る。

『無理な相談だ』一蹴。

『しかし……!』ノース軍曹が食い下がる。

『連携は取らない』断言。『こちらで対処する』

『この石頭が!』

『奔放すぎるのも考えものだな』相手は鼻息一つ、『こうやって羽目を外しすぎることにもなる』

『こちらは名乗ったぞ』ニールセン大尉の声にはっきり不快。『所属と姓名ぐらいは訊いてもいいだろう』

『ケント・ターナー大尉』相手は素っ気なく言い捨てる。『空間警備隊“クライトン”管区第1警備部隊』

『続きがありそうだな』ニールセン大尉がさらに衝く。

『――情報警備大隊第2中隊長』ターナー大尉が苦く結ぶ。

『なるほど、腕っこきか』ニールセン大尉が唇を噛む。『マシン・パワーが要るかもしれん。手伝える時は……』

『その時は改めて頼むとするさ』言い残してターナー大尉の声は途切れた。


〈繋がるのか?〉訊くキースの声が丸くない。

〈そいつを試してみるってわけよ〉ロジャーが人の悪い笑みを覗かせて、〈直通回線で直接かけ合ってみる〉

〈手前!〉シンシアの声がいつになく尖る。〈――いつの間に!?〉

〈お前さんの雇い主だろ?〉なだめるようなロジャーの声が匂わせて穴。〈ちょっと頼まれ事があってな、そいつのついでだ〉

 ロジャーは戦闘用宇宙服の胸、二重のファスナを下ろす。中から取り出したのは――データ・クリスタル。

〈こいつがキィだ〉ロジャーがクリスタルを読み取り機へ挿し込む。〈さァて、回線が生き残っててくれてりゃいいがな――“ネイ”?〉

〈ちょっと待って――〉返して“ネイ”。〈――OK、繋がったわ〉

『やあロジャー』呑気な声がスピーカに乗った。


〈侵入用意〉宇宙港“クライトン”、管制中枢の一角でターナー大尉。〈“ヴィッキィ”、“メルカート”への直通回線を〉

 大尉のナヴィゲータ“ヴィッキィ”が視覚へ宇宙港の管制マップ。錨泊中の宇宙船群、その一隻をズーム・アップ。立ったタグには運行状況と所属、見るものが見れば判る“メルカート”の関連会社。

〈眼の付けどころは悪くないが、〉ターナー大尉の奥歯に苦味。〈密約に踏み込むか。無知は怖い〉

〈承認取得〉“ヴィッキィ”が示して暗号キィ、そこに付されたサインは――ピエトロ・ドナトーニ。

〈影のドン直々か〉ターナー大尉に舌なめずり。〈賊を相手取るには気合が入ってるな――行くぞ。目標、軌道エレヴェータ管制中枢!〉


『“テセウス”での指揮権、か』片頬だけで笑ってヘンダーソン大佐。『つまり、その人物が実質上の指導者だと?』

『断言はまだできないけど、』眉を小さくひそめてマリィ。『あなたの他に人材がいてもバチは当たらないはずだわ』

『なぜそう考えるね?』大佐が小刻みに揺らして肩――笑い。『それこそ“偽りの独立”の片棒を担いだ急先鋒だろうに』

『“テセウス解放戦線”の結成当初まで遡っても?』むしろ冷気さえ帯びてマリィの声。『だとしたら罠にしても気の長い話ね』


〈キース、侵入を検知〉“キャス”が声を潜めつつ、〈軌道エレヴェータ管制中枢。早速来たわね〉

〈かませるか、逆侵入?〉問うキースの声に確信の色。

〈私を誰だと思ってんの?〉応じる“キャス”に不敵の一語。

〈引きずり出せ〉慣れた口調でキース。〈手掛かりがあるかも知れん〉

〈言われなくても〉鼻歌の一つも鳴らさんばかりに“キャス”。〈芋づる見逃すほどヤワじゃないわ〉


『久しぶり、と言いたいとこだけど』呑気の一語を声に乗せて“トリプルA”。『――さて、僕を公開処刑にでもする気かい?』

 “オーベルト”の管制中枢に、息を呑む――その気配。

「だと思ったらノコノコ出てきやしねェだろ、“トリプルA”ともあろう者が?」軽くいなしてロジャーの鼻息。「約束はちゃんと守ってるさ――こっちはこっちで切羽詰まっててね、助けてもらいたいことがある」

『だとして僕に何の得が?』涼しい声で“トリプルA”。『それよりエミリィの声が聞きたいね』

「というわけで」ロジャーがデータ・リンクの向こう、シンシアに頷きかける。「晴れてご対面てわけだ。涙が出るね」


『連邦の工作は、』大佐の声に興味の色。『つまり途中からだったと?』

『でもなければ支持も集まるわけないでしょう』マリィが打ち返す。『ハッタリだけの独立劇じゃね。違う? それとも――』

 息一つ、深緑色の瞳が見据えて大佐。

『――都合の悪い事実は書かれていないわけ? “サラディン・ファイル”には』


『何だよその約束ってなァ!?』シンシアがなおロジャーへ突っかかる。

『君に張り付いてもらっていたわけだよ、エミリィ』答えを示したのは“トリプルA”。『いきなり消えるのは勘弁して欲しかったな』

『……悪かったよ』バツの悪そうな沈黙の底から、辛うじてシンシアが申し訳を立てる。『結局のとこオレの過去が絡む話だったんだ。あんたを巻き込むわけにゃいかなかった』

『にしてはドライじゃないね』“トリプルA”に兆して溜め息。『ビジネスライクな付き合いだと思っていたけど?』


〈まァ大胆ったら〉“キャス”の声がほくそ笑む。〈まだ来るわよ〉

 キースの視覚へ描き出されるネットワーク図、異物を示した橙が侵蝕の手を深めていく。

〈そう言うな〉キースが細めて眼。〈せっかくのカモだ。歓迎してやれ〉

〈あーやだやだ、陰険〉“キャス”の言葉は裏腹に踊る。〈この手口、見覚えあるわ。ちょっと期待外れかな〉

〈いいだろう〉顎を掻いてキース。〈釣り上げろ、“キャス”〉


 大佐の喉に兆して笑い。『――“キャサリン”?』

『OK、』応じて“キャサリン”。『なかなか鋭いじゃない。データあるわよ』

 マリィが相貌をはっきり細める。『――知っていたの?』

『知らずにいた方が、』大佐の声になお余裕。『幸せなこともあるものだよ』

『おためごかしはやめて』マリィの声が冷える。

『君の心を思ってのことだとも』大佐が芝居がかって肩をそびやかす。『どうしても――と言うなら、止めはしないがね』


『ああもう悪かったってば!』頭を掻きむしらんばかりに呻いてシンシア。『それじゃ何か? 借りを返しゃ頼みを聞いてくれるってか?』

『少なくともロジャーは僕の頼みを覚えててくれたってわけだ』苦笑を匂わせて“トリプルA”。『まあ好奇心を隠すつもりもないだろうから、そこは利害の一致ってとこだね。音信不通はいただけないけど』


〈はい釣り上げ……っとっとっと〉“キャス”に兆して色。〈写し身? ――なかなか陰険じゃないの〉

〈手こずるか?〉キースが訊く。

〈ひねりは利いてそうね〉舌なめずりせんばかりに“キャス”。〈でもまだまだ――よ!〉

 視覚、ネットワーク図に侵蝕する橙を一気に囲い込んで青。撤退の隙も与えず包囲殲滅、一気に異物を染め上げる。


『さて、ロジャーにはもう一つ頼んでおいたことがあってね』“トリプルA”の声が一段低まる。『エミリィ、君の狙いを探り出すことだ』

『……シャバへ戻れるなら戻る気でいるさ。これでいいか?』強がってみせるシンシアの声にはしかし分が良くは見えない。

『じゃ、少なくとも君には精算の一つもしていってもらおうかな』“トリプルA”の意地悪げな声が含んで笑み。

『こちとら急いでる』シンシアがしびれを切らさんばかりに、『何が望みだ?』

『まず前提だ。“シャバへ戻れるなら”と言ったね?』当を得たりと“トリプルA”。『君のとっての“シャバ”はまだあるのかな?』


〈さァて、と。洗いざらい吐いてもらおうかしらね〉“キャス”の声に悪役顔。〈並のバック背負ってるわけじゃなさそうだけれど?〉

 抵抗の跡が、しかし半秒も続いたかどうか。視覚に“キャス”が新たにウィンドウ、侵入者から絞り出したデータをスクロール。

〈“連邦”の公式――?〉キースがその一角、クラッシャの名に眼を留めた――“シヴィリアン”。

〈出処は――へーえ〉“キャス”が鳴らして鼻、と同時にウィンドウへ明滅して一語。〈空間警備隊の、情報警備大隊〉


『お気持ちだけで結構よ』言い捨ててマリィの眼尻に険。『いま必要なのは事実だわ、違う?』

『いま一度訊こう』むしろ優しげに大佐の問い。『いいのだね?』

『何を今さら』胸先で跳ね返してマリィ。『構わないわ――ここまで来たなら』

『ならば答えよう』ヘンダーソン大佐が、ことさらにゆっくりとカメラへ向き直る。『ただしそのためには、まず知ってもらう必要があろう――“K.H.”の正体というものを』




     *****


本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


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