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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第17章.露呈
182/221

17-5.介入 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

『今のうちだ!』ニールセン大尉が断ずる。『マシン・パワーを!!』

『にしたって!』“ミランダ”に抗弁。『せいぜいが携帯端末です! 繋ぐにしても……!!』

『頭を使え!』ニールセン大尉が声を低める。『隔壁のこっち側には何がある!?』

『居住区?』ノース軍曹が首をひねった。

『宇宙港そのものだ!』噛んで含めるようにニールセン大尉。『管制中枢、配信局の支線、錨泊船のレーザ通信――アイディア次第だ、縛られるな!』


『“テセウス解放戦線”を出し抜いたところまではいいとして、』決然とマリィ。『取って代わる意図があなたにないという証明にはならないわ』

『ミス・ホワイト、少なくとも君は私の味方に付いた――』大佐の眼が帯びて色。『――違うかね?』

『――彼らを説得するにしても、材料がないんじゃ話しにならないわ』マリィの声にはっきり焦り。『少なくとも、あなたは真意を隠し続けてきたんでしょ? 記録に残っているはずないじゃない』


『――錨泊船!?』ノース軍曹が食い付いた。『ああくそ、そういうことか! ――“ミランダ”!!』

『いい考えが?』“ミランダ”も興味を隠さない。

『錨泊船の配置を!』打ち返してノース軍曹。その視界へ宇宙港外、埠頭への入港を控えている錨泊船の位置情報。

『対象を絞り込め』鋭くノース軍曹。『輸送船だけでいい!』

『密輸船ですか?』“ミランダ”に推測。

『なるほど、』首肯はニールセン大尉から。『後ろ暗い船を足場にするか』

『後ろ暗い……?』引っかかったように、ノース軍曹が首を傾げる。『それですよ、大尉――“ミランダ”!』


『連中がひた隠しにしてきた事実を、』大佐が掌、向けてカメラ。『こうして公に暴いても?』

『裏切り者にもできることよ。あなたが買った反感を忘れないで』決然とマリィ。『“ハンマ”中隊はなぜあそこまでしてあなたを止めようとしているのか。あなたが救難信号を妨害したのはなぜか――彼らを説得したいんでしょ?』


 ノース軍曹が指を鳴らす。『検索――“はぐれ人”の賞金情報を』

 間を置かず、視界の端にリストがスクロール。

『これですか?』“ミランダ”の声に笑みの色。

 リストのスクロールが――停まる。そこに――マリィ・ホワイト、その柔らかな細面。


『その通り、私が望むのは和解だとも』大佐に頷き一つ、『ただし選択肢は限られている』

『せめて争点を解決しないと』マリィが食い下がる。『彼らは納得しないでしょうね』

『そもそも目的を達せなければな』小首を傾げて大佐。『“テセウス”から搾取を図る輩、これを排除して秩序をもたらすこと――これをおいて“テセウス”の平穏は語れんよ』


『タレ込め、“ミランダ”!』ノース軍曹が畳みかける。『“メルカート”が食い付くはずだ!』

 ――ご照会ありがとうございます。

 視界に踊って受付画面。

『“メルカート”に食い付かせて、』ニールセン大尉が食い付いた。『次はどうする?』

『味方に付けるか乗っ取るか、』ノース軍曹に思案声。『どっちにしても隔壁の外に足場ができます』

『だとすると、軌道エレヴェータ区画へは――』ニールセン大尉が戦術マップへ指を一振り、宇宙港の模式図を拡大させた。

 ワイア・フレーム化させた宇宙港を拡大して中心軸、“ベルタ”がここに陣取る軌道エレヴェータ区画を強調表示。その上端――、

『そう、レーザ送電装置!』『だな!』二人が重ねて声と指先。


〈送電回線も使って潜るわ!〉決然と“キャス”。〈陽動任せた!!〉

〈こっちは配信データ回線から力任せで押し込むわ〉“キャス”に応じて“ミア”。〈そっちはやり過ぎて電源落っことさないでよね〉

〈言われなくても!〉“キャス”の声に不敵な笑み。〈カウント3! 3、2、1、ゴー!〉


『応答来ました!』“ミランダ”が告げる。

『こちら“捜索情報ネットワーク”です』涼やかな案内音声とともに“尋ね人”のリストが展開、画像付き。

 その一段手前にマリィのバスト・アップがピック・アップ、引き連れた表示の先頭に“礼金500ヘイズ”の一語が踊る。

『“ミランダ”、“放送”を!』ノース軍曹が視界、“放送”中のマリィを視点でポイント。『生データでいい、突っ込んでやれ!』


『不逞の輩を排除するのと“テセウス”の統治と、』マリィが衝き込む。『両方を分けてみたらどう?』

『君の語る“統治”には、』ヘンダーソン大佐の声に余裕。『権威の裏付けが欠かせない。少なくとも過半の人間から信頼を勝ち取らなければ“テセウス”統治は成り立たない』

『そう』乗じてマリィ。『あなたは信頼を自ら崩したわ。自分で騒乱の種をまくつもり?』

『では質問を変えよう』小さく首を振りつつ大佐。『今の私以上に信頼を勝ち得る人材が、他にいるかね?』


 ――情報ご提供ありがとうございます。

 ノース軍曹の視覚にロゴが踊る。入金先の入力ウィンドウがポップ・アップ――、

『ここだ!』ノース軍曹。『押し込め!』

 “ミランダ”がネット・クラッシャを叩き込む。

 サーヴァへ過負荷。“捜索情報ネットワーク”の表示が揺らぐ。“メルカート”のネットワーク、わずかに隙。

『反応は!?』問いはニールセン大尉から。

 返して“ベルタ”。『まだです!』

 と、そこで――視覚のウィンドウ群が掻き消えた。


 宇宙港の配信回線が悲鳴を上げた。ブレーカ作動寸前という負荷で“ミア”が力任せの擬似信号を押し通す。

 セキュリティが“ミア”の操作を追う――そこに隙。

 “キャス”が付け込んだ。回線の生命線――送電回線からセキュリティの居座るプロセッサに仕掛けて瞬間停電、再構築の隙を衝く――突破。そして送信アンテナへ。

 そこで“キャス”に悲鳴の色。

『――いない!?』


『……いるわ。搾取にそもそも関わらなかった人間なら』マリィが断じる。『違う?』

『ない袖はそもそも振りようがないね』大佐からは諭す声。『和解が成らないなら、力で押して通るしか道はなくなる――悲しいことだが、これは揺らがんよ。犠牲が最小限で済むなら、血を流す道理もあろう』

『憎しみが憎しみを生むだけよ』マリィの声が帯びて感情。『“テセウス”の利益にはならないわ』

『意見が合ったね』大佐が逆に衝き込んで笑み。『だが完全な解もまた存在しない。どこで折り合うか――解決の肝は常にそこだ』


『“ミランダ”!?』ノース軍曹に焦燥の声。『くそ、“ミランダ”!!』

『侵入者に告ぐ』視覚へ割り込んでウィンドウ。『こちら空間警備隊』

 二人の視覚へ現れたウィンドウへ星系“カイロス”、その意匠。

『空間警備隊!?』ニールセン大尉が語尾を跳ね上げる。

『宇宙港ネットワークへの侵入、』姿は見せず、声の主は厳かに告げる。『それから錨泊船への侵入未遂。ネタは上がってるぞ、観念……』

『こちらニールセン大尉、第3艦隊所属陸戦大隊第1中隊長!』咄嗟に噛み付く。『重要任務を遂行中! 協力を要請する!!』


〈そんな!〉“キャス”の声に動揺の色。〈じゃ、どこから!?〉

 モニタへ映して宇宙港、“放送”データの送信経路。押さえたはずの送信アンテナ、そこを通る信号は――ない。

〈ちょっと待て、アンテナの電力系とかは!?〉ロジャーが投げて問い。

〈データが紛れてたら!〉“ネイ”に反駁。〈こっちのトラップに引っかかってるわよ!〉

〈生命維持系のセンは!?〉訊いてシンシア。

〈安定してやがる!〉返して“ウィル”。〈何の嫌味かってくらいにな〉

〈宇宙港の管制中枢は!?〉問うてオオシマ中尉。

〈“キンジィ”!?〉ギャラガー軍曹に鋭く声。

〈駄目です!〉“キンジィ”に苛立ち。〈変化なし! ――ああもう、尻尾を出しません!〉

〈“イーサ”!?〉イリーナが飛ばして声。〈レーザ通信機は!?〉

〈くっそ!〉“イーサ”に罵声。〈いちいち丁寧に小細工してあると思ったらとんでもねェ! どいつもこいつも小物ばっかだ! 全部が全部カスでいやがる!〉


『なら――』ふとマリィの眼に力。『――“テセウス解放戦線”はどこで道を誤ったの?』

『どこで、とは?』大佐が眉を躍らせる。

『あなたなら知っているはずよ、大佐』マリィが静かに、ただし確実に間を詰める。『“テセウス解放戦線”が連邦上層部に食い込み始めたのはいつ?』

『落ち着きたまえ、ミス・ホワイト』大佐の声が含んで笑み。

『ベン・サラディンが理想を持って叛旗を掲げたのだとしたら?』マリィが問いを突き付ける。『似たことを考えた人間がいるはずよ』

『抹殺されたさ』大佐はにべもなく肩をすくめる。『他の誰よりも成功に近付いたのが、他でもないサラディンだ』


『居直り強盗の真似ごとか?』声の主からあからさまな怪訝声。

『身分照会を求む!』打ち返してニールセン大尉。『こちらの識別コードは……』

『声紋紹介中』呆れ半ばに声の主。『あー……確認した。ラーズ・ニールセン大尉』

『では……!』ニールセン大尉の声に希望。

『だからといって我が物顔は感心しないな』声の主が冷静に断ずる。『仮にも相手は民間の……』

『犯罪組織だぞ!』横合いからノース軍曹。『しかも最優先目標に賞金を……!』

『そう尖るな、ブリン・ノース軍曹』声の主が苦りも隠さず、『最優先目標の件は……』

『その“放送”に!』割って入ってニールセン大尉。『妨害工作が進行中!!』


〈こうなったら、〉ロジャーが舌なめずり一つ、〈奴さんの出番か〉

〈手前!〉聞いたシンシアが成して色。〈この期まで何隠してやがった!?〉

〈隠してたわけじゃねェよ〉軽く肩をすくめたロジャーが、キースへ声を向け直す。〈キース、ちょっといいか?〉

〈手があるのか?〉キースに問い。

〈まあな〉ロジャーに頷き。〈手を借りられるかも知れねェ〉

 キースの片眉が踊る。〈誰だ?〉

 悪びれもせずにロジャー。〈“トリプルA”その人さ〉




     *****


本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


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(C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.


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