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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第12章 追撃
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12-15.窮迫 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

 キースの肌に兆して戦慄。


 反射、渾身の蹴りを“ソルト・ボトル”の腹へとくれる。直後に大出力レーザが襲った。キースを逸れて装甲表面、対レーザ・コーティングに跳ね返された熱線が床を、側壁を、さらには内部の配線を灼き切った。


 暗転――。


 “ソルト・ボトル”を突き飛ばしたキースへ“レモン・ボトル”。キース機の肩、前から抱きついて動きを封じにかかる。右腕で生身をかばいつつ、キースは左腕と右脚で引き剥がしにかかるが力で相手に負けている。


 背後から再び“ソルト・ボトル”。脇から腕を取りにきた。キースは推力を今度は真下へ叩き付ける。逃れかけ、しかしその左脚を“ソルト・ボトル”に掴まれる。


 咄嗟にキースは推力を反転。不意を衝かれた“ソルト・ボトル”の手中から左脚が滑り抜ける。その爪先を向けて“ソルト・ボトル”の頭部跡――装甲の失せた、その一角。

 噴射炎の照り返すほの明かり、その中でキース機の爪先が相手を――捉える。


 重心がいきなり移動する。不意にモーメントが変わった。逃げようとするキースと追いすがるタロス、両者の間で保たれていた力の均衡が――崩れる。

 掴み合いどころではなくなった。キースも、“ソルト・ボトル”も、それに釣られて“レモン・ボトル”までもが予想外のスピンと遠心力に見舞われた。


 壁にぶつかり、床に打ち付けられて“ソルト・ボトル”が脱落。次いで“レモン・ボトル”がキースに突き放された。3機のタロスが三方へ投げ出される。

 複合スピンのかかった機体へ、キースは目測でカウンタを当てた。が、止まりきれずに壁に激突、さらに勢い余って引っくり返る。

 眼前へ迫って床面、近い左腕で自身をかばい――流れる視界を横切ってスラスタの噴射炎。


 敵タロスは2機とも姿勢を整えつつある。その腕、先端の銃口がキースを探して動く。

 敵頭部のセンサ・ユニットこそ潰したが、それだけで盲になるというのは楽観が過ぎる。ただ視界が限定されてはいるようで、まだキースを探し当てたようでもない。


 隙と捉え、記憶を頼りにスラスタを開く。スピンをねじ伏せつつ襲いかかるのは、照り返しに浮かび上がった戦闘用宇宙服の一団、その頭上。

 正面から軟体衝撃弾。光源を察知したらしいタロスからも弾が飛んでくる。左腕で正面、背でタロスからの銃撃を受け止めつつ、キースは集団へ踊り込む。


 1人目を跳ね飛ばし、2人目を横へ薙ぐ。3人目の肩に人影。キースは右手を伸ばして掴みかかった。

 そこで背に衝撃。バランスが崩れた。機体が右前方へつんのめる。マリィのすぐ横、側壁に右肩から突っ込んだ。

 後方警戒センサに反応――衝撃の正体は“レモン・ボトル”、その体当たりと知れた。

 擦過の火花が上がる中、体勢を立て直そうとしてキースは警告の群れを視界に見る。背面、スラスタに過熱。ゼロ距離からのレーザ照射。


 反射――引いて脱出レヴァー。


 背面から噴き出すレーザが、機体を前へ貫いた。

 間一髪。機体から放り出されるなり、キースは推進剤の爆発に煽られた。

 低重力のラッタルを跳ねるように転げ落ちて最下段、側壁に背をぶつけてようやく止まる。


 正面、炎を背に“ソルト・ボトル”――その拳。


 ◇


〈くそ今だ!〉

 船内電話に繋いだケーブル越し、ニモイ曹長の声が伝わる。

〈ヘインズのヤツがドジった! 行け、行け!〉


 整備用ハッチを引き開けざま、シンシアは赤外線ライトを投げ出した。

 真下に戦闘用宇宙服の影が踊る。赤外線センサが捉えたその影の主へ、シンシアからライアット・ガンの一撃。


 相手の頭に弾けて軟体衝撃弾。後ろに続いて1人、そのさらに後ろに2人。2人目の肩に女のシルエット――流す眼でそれを確かめ、銃口を振り向ける。その途中でポンプ・アクション、腰だめで2発目。腹に直撃、敵兵が身体を折って背後へ吹き飛ぶ。肩の女――マリィは置き去りを食らって宙へ舞う。


 ◇


〈敵襲ッ!〉

 その通信が陸戦隊のデータ・リンクを駆け抜けた。

〈くそ、目標が!〉


 ◇


 “ソルト・ボトル”の太い腕が側壁を打ち抜いた、その手応え。さして厚くない緩衝材と金属の骨格に拳がめり込む。


〈くそ、〉

 操縦士は歯を軋らせた。視界が利かない。

〈何だ!?〉


 視覚情報を巻き戻す。タロスの拳が向かう先、敵の左手に――、

〈擲弾銃!?〉


 銃口をすぐ横、壁に向けたところで光が全てを塗り込めた。閃光衝撃榴弾の、暴力的なその光。

 舌打ち一つ、拳を引き抜き――かけたところで。


 額のすぐ上に破裂音。

 そこがセンサ・ユニットの跡だと気付いた、その時。


 銃弾――。


〈――――!〉


 内部を拳銃弾が破片を伴って跳ね回る。ヘルメットにも直撃、比喩ではなく眼に火花。何よりインターフェイスがやられた。今度こそタロスの感覚機能、正確にはその情報を操縦士へ伝える術が失われた。


 非常用レヴァーを引いた。爆破ボルトに点火、死んだモニタごと正面装甲を排除する。


〈どこだ!?〉


 操縦士は腕を振り回した。制御中枢に破片を食らったか、金属の腕の動きは鈍い。


〈畜生! どこにいやがる!?〉


 答えは喉元、スーツの継ぎ目に感触――銃口。


 三点連射。鮮血。断末魔。“ソルト・ボトル”の動きが死んだ。


 ◇


 ケルベロス片手に“ソルト・ボトル”へ取り付いていたキースが頭上を振り仰ぐ。その視界に閃いて“レモン・ボトル”の噴射炎。


 ◇


 噴射炎が照り返す、その明かり。背後に閃いたそれへシンシアが振り返るなり、光源が迫ってきた――“レモン・ボトル”。


 マリィへ向けて跳びかけたヴェクトルを咄嗟に横へ。


 その鼻先を金属の巨躯がすり抜けた。マリィとの間に割って入る。

 天井に着地するや振り向いて両腕、銃を構えたタロスの姿に欠けたものがある――頭部センサ・ユニット。


 銃火。牽制と読んで天井を蹴る。側壁へ、間を詰めつつさらに床面へ。追いかけて火線が走る。


 眼もねェくせに――洩れかけた舌打ちをこらえてさらに間を詰める。頭上、恐らくは敵の死角へ。


 “レモン・ボトル”が跳んだ。シンシアを正面から捉えにかかる。

 シンシアに確信――敵には上が見えていない。


 その向こうに戦闘用宇宙服、宙のマリィへ向かって跳ぶ敵の姿。

 牽制にライアット・ガンを流し撃ち、すかさず、シンシアは横跳びに逃げる。わずかに遅れて“レモン・ボトル”からの衝撃弾。


〈ンの野郎!〉


 敵の陸戦隊員、残った1人がマリィを受け止める――その様が眼に入ったのは“レモン・ボトル”のボディ越し。割って入ったその腕、一体化した銃口がシンシアへ――その動きに覗いて迷い。斜め横、左の足元をかすめるように跳び込む。

 床へ頭から滑り込む。視界が開けた。タロスの脚を蹴ってさらに前、陸戦隊員の背中へ。背後に衝撃弾の着弾音を聞き流して跳ぶ。


 陸戦隊員が振り返った。マリィを抱えて動きが鈍い。が、そのマリィの身体が盾になる。撃つに撃てない。


〈逃がすか!〉


 床を蹴る。側壁へ、さらに天井へと回り込む。敵も後退、ハッチ跡へ。


 敵の頭が見えた。マリィの陰から肩が覗く。敵の首筋へ、シンシアは衝撃弾を叩き込んだ。戦闘用宇宙服がのけぞる。マリィの身体が宙を舞う。


 天井を蹴った。手を伸ばす。もう少し――。

 そこで戦慄。ハッチの向こう、銃口が群れを成していた。


 ◇


 シンシアの身体が宙で弾かれた。“レモン・ボトル”の背後、キースは追いすがる最中にそれを見た。

 側壁に叩き付けられて跳ね返る、その身体には明らかに力がない。間違いなく意識を失くしている。

 後先考えずにキースは跳び出した。


 シンシアへ向かった“レモン・ボトル”の背に迫る。タロスがヴェクトルそのまま、振り返りざまに衝撃弾の一撃。側壁と天井を斜めに蹴ってキースはかわす――敵の銃撃に精度はさほどないが、追い付けるほどの隙もない。


〈くそ!〉


 シンシアの横を通り過ぎた“レモン・ボトル”が着地する。背後、ハッチから戦闘用宇宙服――“ソルト”の面々が掩護の弾幕を張りつつマリィへ迫る。




     *****


本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


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