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電脳猟兵×クリスタルの鍵  作者: 中村尚裕
第11章 離脱
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11-12.起爆 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.

「聞いての通りだ。早いとこやってくれ」

 着艦デッキ、ロジャーが“特殊装置”に取り付いた監査局員マークスをせっつく。


「そう急ぐな」

「急ぐんだよ。5分でぶっ飛ばさなきゃなんねェんだ」


「彼女を救うためにか?」

 マークスが頬に苦いものを覗かせる。

「この混乱を招いた張本人だぞ」


 部外者の立場からすればそういうことに映る――“サラディン・ファイル”をぶちまけたのはマリィの仕業、と。


「で?」

 ロジャーは冷たく突き放した。


「彼女が黙っていれば……」


「黙っててもこうなったんだよ、解んねェのか?」

 ロジャーは指鉄砲をマークスに突き付けた。

「どっちにしろ今は今だ。助かりたいんなら早くしな」


「脅すつもりか?  私が協力しなかったら……」


「あーもう面倒くせェな」

 ロジャーが噛み付く。

「でなきゃあんたはゲリラに八つ裂き、手ェ貸しゃ無事に逃げられる。時間がねェから早ェとこ肚ァくくれってんだよ!」


 渋々の体で、マークスは自分の身の上に思いを戻したように窺えた。装置へ向き直り、ケースを開くと、端末のケーブルを繋ぐ。

 封印を解除、装置が作動を始める。モニタに素っ気ない画面が表れ、暗号の入力を促した。マークスが掌紋を読み込ませて暗号を打ち込むと、表示が“作動開始”へ切り替わる。


「あとは、私の合図で作動する」

 振り向いたマークスの顔に、打算の色。

「保証が欲しい」


「あーもう、」

 ロジャーが歯を剥いた。

「何の!?」


「私の身の安全だよ。こいつを……」

 マークスは装置へ親指を向けた。

「使ったあとの私のカードが要る」


「じゃ一緒に人質になりに行くか?」

「それじゃ合格点とはいかないな」


 ロジャーはマークスを睨む。マークスも睨み返す。その眼に打算。


「待ってろ――ブリッジ、ウィルキンス大尉はいるか?」

『ちょっと待て』


 ブリッジから通信士が応じた。手元に操作の動きを見せて数秒、ウィルキンス大尉の顔が視覚に出る。


「何だ?」

 艦の奪回を指揮している風の緊張、その合間から問いをよこす。ロジャーは声を潜めて告げた。


「ちょっと内密に話したい。大事な話だ」

『なら副長と……』


「時間がない」

 ロジャーがせっつく。

「陸戦隊の連中が救難艇に立て籠もってるんだ」


『――副長と2人だけで聞く。少し待て』


 振り返り、ウィルキンス大尉はブリッジに入ったばかりの副長を呼び寄せる。視界に2人が収まり、有線ヘッドフォンを耳にした――それを確かめたところでロジャーは切り出した。


「さっきも言ったが、陸戦隊の連中が救難艇に立て籠もった」

『こちらデミル少佐。さっきのやり取りだな――こっちに中継してくれた』


「そうだ」

 ロジャーは声に首肯を乗せて、

「時間がない」


『こっちに何かできることは?』

 デミル少佐に問い。


「話が早い」

 ロジャーは勢い込んだ。

「ゲリラが持ち込んだブツがある。こいつを爆破する」


 二人の顔にはっきりと――嫌悪の表情。


「監査局員がさっき解析に成功した」


『持ち込んだのは監査局だぞ?』

 デミル少佐が当然のところを衝いてくる。


「どうも今回の蜂起に使うつもりで“装置”に紛れ込ませてたらしい」

 口から出まかせでロジャーは言い切った。

「監査局にもシンパがいたってことだろうな。今マークスが解体に……いや失敗した! もう時間がない! 衝撃に備えろ!!」


 応答を待たずに回線を切り、ロジャーがマークスへ向き直る。

「これでいいだろ」


「保証と言ったんだぞ!」


 ふてぶてしいまでの応答。ロジャーが眼許を軽く引きつらせた。


「自分の立場が解っちゃいないようだな、あン?」

 ロジャーがマークスの胸ぐらを掴んで引き寄せる。

「俺達ァ人質を見捨てるわけにゃいかないんでね、投降ってェより連中の使い走りになっちまうぜ?」


「それは私の問題では……」


 皆まで言わせずロジャーが畳みかける。

「つまりこの艦を占拠する側に回っちまうってこった」

 ロジャーは勢いに任せてまくし立てた。

「そしたらあることないこと吹き込んで、あんたの立場ァ台なしにした挙句に独房へ逆戻りさせてやる」

 ロジャーはそこで声の温度を一段下げ、

「場合によっちゃその場で処刑ってことにしてやる。それでいいんだな?」


「ま……待て!」

 息も切れ切れにマークスはなだめにかかる。

「落ち着け!」


「待ってちゃ事態ァ悪化するんだよ!」

 ロジャーが迫る。

「やるのかやらねェのか、どっちだ!?」


「わ……、」

 マークスは喘ぎながら頷いた。

「……解った! 落ち着け」


「起爆の準備は!?」

「あとはリモートでコードを打ち込めば……ッ!」


 聞くや、ロジャーはマークスを引きずって壁を蹴る。


〈キース、こっちの準備は完了した! 退避次第ぶちかますぞ!!〉


 ◇


 ありったけの意地で、マリィは正面の銃口を見返した。


 重力などほとんどないのに顔から血の気が引いていく。膝が笑いそうになる。それを無視して両の眼をモロー伍長の掌中に据え続ける。沈黙。緊張。睨み合い。

 と、マリィの喉が思わず鳴った――思わず唾を呑む、緊張の音。


「ふ、」

 瞬きを数回、モロー伍長は銃口を天へと向けた。

「何のつもりか知らんが、挑発ならその辺に……」


 モロー伍長の言葉尻を暴力的な轟音が呑み込んだ――どころか、床が跳ね上がって全員の身体を放り出す。耳に障る構造材の悲鳴、衝突でもしたかのような重い低音、破断の鋭い音が一時にまとめて押し寄せる。


「な……!?」


 モロー伍長とコーベン1等兵が状況を探って視線を宙へ巡らせる。答えが得られるはずもなく、投げ出された身体、物体、固定されていないあらゆるものが天井へ、壁へ、床へぶちまけられた。2人の手にしていた銃も宙へと踊る。


 ◇


 構えていても、爆発の衝撃は容赦なく2人の身体を突き上げた。キースとシンシアがエアロックの天井へ放り出される。何とか受け身を取って上体を起こし、壁を蹴る。エアロックを飛び出し、ボーディング・ブリッジへ踊り出す。


 ひしゃげたドッキング・アームとボーディング・ブリッジの悲鳴が肌を衝く。拳銃を抜き、見る間に形を変える壁面をさらに蹴り、“フィッシャー”側へと加速する。

 飛び込んだ先、両側の扉を開放したエアロックにいたのは守備の兵――というより衝撃に突き回された人間が2人。手にした武器を取り落とし、船内電話の操作もままならずにいたところへ――キースとシンシアが襲いかかった。


 相手の生命を斟酌する暇はない。銃口を胸元へ擬して迷わず引き鉄――銃声が2つ響いた頃には背後、ボーディング・ブリッジがねじ切れていた。空気が雪崩を打って流れ出し、感知した安全装置がエアロックの外扉を緊急閉鎖。構わず2人は艇内へ。

 舷側通路、次々に壁を蹴って艇首側、回転居住区前端に差し掛かる。


〈ブリッジは任せた!〉


 データ・リンクに乗せて一方的にキースが告げる。壁を蹴って回転居住区、医務室へ。




     *****


本作品『電脳猟兵×クリスタルの鍵』『電脳猟兵×クリスタルの鍵 (C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.』の著作権は中村尚裕に帰属します。

投稿先:『小説家になろう』(http://book1.adouzi.eu.org/n9395da/)


無断転載は固く禁じます。


Reproduction is prohibited.

Unauthorized reproduction prohibited.


(C)Copyrights 2016 中村尚裕 All Rights Reserved.


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