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「……何だったんだ、あの爺さん。謝りに来たのか脅しに来たのか」
クラークが帰った後、コウはなおも戸惑った様子で呟いた。
「あのジジイは昔からあんな感じだ。ふざけているのか真剣なのかつかみどころがない」
レイはため息を吐いた後、言葉を続ける。
「しかし今回は疲れた。武器調達にあれだけ金をかけて、結局デザイア・カルテルの首は奴らに持っていかれたしな」
「まぁ、赤デブの依頼は達成できたし、子供の命も救えたし、損して得を取ったってことで」
「お前のそのポジティブ思考が羨ましいよ」
「前向き思考じゃないとチャンスは巡ってこないぜ?」
そう言った後、コウははっとした表情を浮かべる。
「あっ! あの爺さんに姉妹の連絡先聞いとけばよかった! お見舞いに行くから~とか適当に理由付けて」
「……お前のその積極性に飽きれるよ」
「だって今回の俺らは姉の命の恩人だぜ? ホテルは無理でも食事くらいオーケーだろ?」
「よくやるな。俺はもうあの姉妹とは関わりたくない」
レイはそう言うと、ため息を吐きながら二階への階段へ足を向ける。
「疲れた。少し寝る」
「おっさん身体にガタ来てんじゃねえの? 良いマッサージ屋紹介しようか?」
「結構だ」
レイは振り返ることなく二階へと上がっていく。コウはそんなレイの背中を見送りつつ、先程クラークが言っていた〝事件〟という言葉をふと思い出した。
「……ま、誰にでも色々過去はあるってな」
コウはそれだけ言うと大きく背伸びをし、ソファーにゴロンと横たわった。先程食べた饅頭でほどよくお腹が膨れていたおかげか、それから眠りに誘われるのにそう長くはかからなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回もStable Diffusion WebUIによって作成した挿絵を使用しております。
主人公のライバルキャラ? であり、男くさいこのシリーズにやっと登場した女性キャラということで気合入れて多めに作成しました。
AI画像は相変わらず細かいところが苦手ですが、初期に比べるとだいぶマシなものを生成出来てる気がします。技術の進歩の速さに舌を巻くばかりです。
しかしいい加減主人公組の挿絵も作れと。
小ネタになりますが冒頭でアリシアが歌っている歌は実在する歌で、Dead Or AliveのYou Spin Me Round (Like a Record)という歌です。
とある女に惚れた男が女に振り回され、そして深みにはまっていく歌なのですが、因縁に振り回された姉妹、そして厄介な相手に惚れてしまった作中の登場人物のことをこれ以上ないくらい表している歌かなと思います。
ちなみにサメと女囚が戦う映画も本当にあります。糞映画です。
それでは余談はこの辺で。
また縁があればお付き合いいただけると幸いです。




