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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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63九六式艦上戦闘機開発

一九三二年、五・一五事件(この世界線では五・○八事件)という歴史の分岐点は、この世界線では全く異なる結末を迎えた。 海軍将校たちの暴挙に対し、国民の怒りが爆発。さらに逆賊に激怒された陛下が自ら近衛師団を率いて鎮圧に乗り出されたことで、海軍の権威は地に落ち、議会制民主主義はかつてない強固な支持を得ることとなった。


私が救いきれなかった東北の寒村出身である若き海軍軍人たちの叫びは、悲しいかな、大半の民衆の共感を呼ぶことはなかった。更に海軍の不祥事に時の海軍大臣は即座に辞任。海軍の権威は地に落ち、軍人の政治への発言権は急速に霧散していった。


「・・・結局、彼らは見誤ったのね。自分たちが正義の味方のつもりでも、お腹を空かせた子供を実際に救ったのは、銃弾ではなく政府の政策だったんだもの」


私は、活気を取り戻した銀座の街並みを眺めながら、独りごちた。事件の根底にあったのは、閉塞感と貧困。それは事実。汚職まみれの財閥と政府の癒着——それも、ある側面では正しかったのでしょう。けれど、その歪みを正す力を持っていたのは、軍人の暴力ではなく、冷静な経済政策だった。


事実、政府が打ち出した安定化政策である積極財政、累進課税による富の再分配と、企業の成長を促す法人税減税のコンボは見事に決まった。その結果、この日本は史実の三倍を超える驚異的なGDPを叩き出し、人口も三割ほど増加。まさに、黄金時代の真っ只中にいた。


そんな中、海の向こうアメリカでは一九三三年に民主党のフランクリン・ルーズベルトが登場。彼のニューディール政策は、どん底の米国に一定の光をもたらそうとしていた。


「・・・世界がようやく、私たちの背中を追いかけ始めたわね」


・・・ですが、そんなお国の繁栄とは裏腹に、私のプライドはズタズタに引き裂かれていた。


「ちくしょぉぉおおおおおおお!」


「はしたないぞ、鷹尾」


「そうですわ、お嬢様」


「あ・な・た・がそれを言うの、茜!?」


私は怒りのあまり絶唱していた。 事の発端は一九三四年(昭和九年)、九試単座戦闘機の開発競争。我がスバルは、英国ジュピターの血を引く寿発動機を極限まで進化させていた。公表スペックこそ、一段二速・七五〇馬力に抑えていたが、その実態は電子制御燃料噴射(EFI)に過給圧制御装置まで搭載可能な、完全なオーパーツ。


私はこれを使って、三菱の天才、堀越二郎氏を「あーら、堀越様、今、どんなお気持ち? ねえねえどんな気持ち?」とニヤニヤしながら完膚なきまでに教育して差し上げるつもりだったのですわ。


ところが——結果は、まさかの惨敗。


スバルは沈頭鋲(リベットの頭を沈める技術)や超々ジュラルミン技術を惜しみなく投入し、時速四八〇キロという驚異的な記録を出した。勝利を確信したその時、三菱が放った隠し玉は・・・。


なんと、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)による一体成形外皮。


「・・・なんで? なんで一九三〇年代の堀越さんが、未来の素材を知っているのよ!」


「聞いた話だと、茜さんの旦那さん(吹雪さん)が三菱名古屋に売り込んだそうだよ」


一樹にいの言葉に、私の思考が凍りついた。・・・三菱ケミカル。あそこは最近、妙に私の欲しい素材をピンポイントで作ってくれると思っていたんだけど・・・。


「ねえ、茜。まさか私が話した未来の知識、旦那さんに横流ししてないわよね?」


「あら。堀越様の悔しがる顔を想像して悪い笑みを浮かべるお嬢様を見て、少々お仕置きが必要だと思いまして、主人に頼みましたの」


「ちきしょぉぉおおお!」


飼い犬に手を噛まれるどころか、首筋を全力で噛みちぎられた気分ですわ!


翌年、私はなりふり構わず動き出した。陸軍の試作要求キ27(後の九七式戦闘機)において、私は自重を完全に放棄。


「お願いします、吹雪様! どうか我がスバルにもCFRPの技術を恵んでください!」


私は茜の屋敷へ乗り込み、彼女の旦那様である吹雪さんの前で、堂々の土下座を披露していた。涼宮家当主、渾身の土下座だ。


「お嬢様、頭の下げ方が足りませんわ。畳に頭を擦りつけるくらいできるはずですわ」


「この・・・アマ〜〜〜!!」


「まあ怖い。旦那様、やはりお引き取り頂いた方が・・・」


「・・・待って! 私が悪うございました! 畳に心を込めて額を擦りつけさせていただきますっ!」


ドン引きする吹雪さんを尻目に畳に額を密着させる私。ですが、そこで吹雪さんが困惑したように呟いた。


「いや・・・茜に言われて、既にスバルとは正式契約する方向で進んでいるんだが・・・」


・・・・・・。


「茜。私の土下座に、一体どんな意味があったの?」


「あら。無意味ですわ。ケラケラ——ところでお嬢様、今どんな気持ち? ねえねえどんな気持ち?」


殺意。この時ほど、明確な殺意を覚えたことはありませんわ。ですが、そのヤケクソの結果、とんでもない怪物が誕生した。


陸軍から依頼された次期主力戦闘機試作機、完成した後の九七式戦闘機——。発動機は電子制御一〇〇〇馬力のハ一乙。 外皮は軽量なCFRP、主骨格は超々ジュラルミン。あえて固定脚(スパッツ装備)という古風な姿を選びながら、その実力は最高速度五五〇キロ、上昇力と旋回性能は零戦れいせんをも凌駕するという、物理法則を無視した銀色の怪鳥。


後に、この私のヤケクソから生まれたオーパーツ機が、ドーバー海峡で英国を救うことになろうとは・・・この時の私は、夢にも思っていなかった。




九六式四号艦戦(A5M4)


最高速度, 500km


航続距離, 2000km


発動機, 寿二型改一750馬力(後日電子制御方式に改善された)


武装, 7.7mm5銃身ガトリング砲2基(翼内装備)




九七式戦闘機甲型(キ27甲)


最高速度, 550km


航続距離, 1200km


発動機, ハ1乙1000馬力(一段二速電子制御式過給機、EFI燃料噴射装置)


武装, 7.7mm5銃身ガトリング砲2基(翼内装備)

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CFRPなのに銀色なんですか?
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