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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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50ウォール街1926

ハワイを後にし、私達はニューヨークのタイムズ・スクエアを歩いていた。ホノルル(ハワイ)を経由してアメリカ西海岸への船旅、そこからは大陸横断鉄道で実に2週間以上かかる長旅だった。流石にこの距離を飛べる航空機は存在しないので、満州の時みたいにお金にものを言わせるという事も出来なかった。最も、この時代にニューヨークへ行くって事自体がとんでもない贅沢であはあるが。


「鷹尾・・・いい加減、派手な恰好は止めてくれないか? ニューヨークに来たからって頑張りすぎだぞ」


旦那様の一樹にいのいう事も一理あるが、これでもフォーマルな方にしたんだけどな。


私は白のだぶっとしたシャツにトップスは黒のジャケットを羽織り、パンツはグレーの令和では定番の服装。茜はと言うと、わざとダメージを入れたジーンズに上はおへそ出したゆるりとしたシャツを着させた。ギャルみたいなファッション(笑)


「でも、ニューヨークの人も負けず劣らずお洒落じゃないの? にいも良く似合っているよ」


にいは白のシャツに黒のジャケット、パンツも黒という令和では普通のビジカジみたいな恰好。


「俺が好機な目で見られるのはいいが、お前がじろじろ見られるのは嫌なんだがな」


「あら、焼いているの?」


「うるさい! 今日も帰ったらお仕置きだからな!」


それはちょっとキツイ。ハワイでえらい目にあった。どっちかというと今夜は寝かせないと言われた様な気がする。


「・・・お嬢様。本日会談を予定しているラモント氏は大の親日家ですわ。震災善後公債しんさいぜんごこうさいの時は随分と協力されたそうですわ」


「知っているわ。高橋是清様のご友人でもあるし、アポが取れたのも高橋様の名前を出させて頂いたからね」


「お嬢様の目的は何なのですか?」


「私の記憶通りなら、今年の後半、彼は来日して田中義一首相と会談して『満鉄への3,000万ドル融資』を持ちかけるわ。でもアメリカ国内の中国派(排日派)や、日本の関東軍の反発に遭って立ち消えになるの。この計画が成功したら、のちの満洲事変、ひいては日米開戦とはならなかったと思うの」


「・・・ラモント様は、そこまで予見していたのですか? お金の力で平和を買おうとしたのでしょうか?」


「そうよ。でも茜、この1926年、ラモント氏を通じて涼宮家が『ニューヨーク市場での信用』を盤石にしていれば、1929年の暴落前にすべてのポジションを解消し、日本へ資産を引き揚げる『黄金の逃げ道』を確保できるのよ」


茜は私の言葉に「お嬢様はやはりお金に汚い」とボソッと呟いたが、私はめげない。


彼との信頼構築はビジネスだけでなく、日米友好の可能性を秘めている。


私は七割日米開戦は避けられないが、残り三割を切り捨てる程無欲ではない。私はどこまでも強欲な女の子なのだ。


そう言えば、私の読んだ本には彼のこんな述懐の記述があった。『日本人は壊すのは早いが、建てるのはもっと早い。だが、その情熱が建設ではなく破壊(戦争)に向いた時、私の貸した金は、皮肉にも世界を焼く火種になるだろう』・・・と。


「ラモント氏の計画を支援するのですか?」


「そうよ。それだけじゃない。投資した資金の日本へのマネーロンダリングに協力してもらう。その対価としてパートナーシップ、それに未来の知識で世界金融恐慌の事を教えるつもり」


私は多額のドルを少しずつ日本へ送金するつもりだが、あまりの金額にアメリカ政府が何かケチをつけるかもしれない。そこで根回しをするつもり。日本にドルを送金する以上のメリットを差し上げれば、アメリカ政府も黙認するだろう。その仲介をして頂くための布石。


トーマス・ラモントは J.P.モルガン商会のシニア・パートナーつまり事実上のトップなのだ。彼と同盟関係を結ぶことが出来れば、日米開戦の確率が下がる。あるいは開戦しても停戦や終戦後の交渉に尽力してくれる可能性がある。


そして私達はモルガン本社 、ニューヨーク・マンハッタンの金融街の象徴である「ウォール街23番地」に足を踏み入れた。ここは選ばれた人間しか立ち入る事が出来ない金融の王国。


ここに看板を出している様な金融機関はない。場所を知らないような人間は、うちと取引する資格がないという超エリート主義の表れだろう。


「・・・お嬢様。今、私たちの目の前にあるのが『23番地』。看板も出さない傲慢な、しかし世界で最も力を持つ場所ですわ」


「ですが、一度味方につければ? 私達の庭にすれば宜しくてよ。彼らにとってかけがえのないパートナーとなればいいのよ。そうすれば、将来、ここに涼宮銀行や証券会社のアメリカ本社を置けるようになるわ」


「流石お嬢様は剛毅ですね」


茜が感嘆の声を漏らすが、私の資産はここの一社と同じ位、あるいはそれ以上ある。まんざら夢物語でもない。でも、皆緊張しているから、少しリラックスさせないとね。


「看板がないなんて、隠れ家レストランみたいね。でも、ここであのラモントさんたちが世界の運命を決めていると思うと、ちょっとゾクゾクするわ」


「いや、だが、奴らアメリカ人はいついかなる時も鷹尾を狙って来る。何かあったら、こいつが火を噴くぜ」


「ちょっと、一樹にいそんな物持って会談に臨む気?」


「奇遇ですわ、一樹様、わたくしも日本刀を少々」


どうやって出したのか分からんけど、シャツの中からちらりと刀身が見え隠れする。


「いや、みんな! これ商談だから! ヤクザやマフィアの戦争じゃないんだからね!」


取り敢えず、口笛を吹くと、当たり前かの様に善十郎が来て、みんなのブツを没収してもらった。流石忍者だね、来てもらって良かった。


「ありがとう、善十郎、おかげで助かったわ」


「もったいなきお言葉。お嬢様のお心の広さが、私をそのように見せているに過ぎません。・・・ところで、一樹様がお嬢様のビキニ姿の写真を『機密文書』として涼宮の金庫に厳重にしまうようにご指示を出されてしまわれましたが、あれはよろしかったので?」


「ちょっと、一樹にい! 返しなさいよ! それ、ラモントさんに水着姿見られるより恥ずかしいじゃない!」

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