45FDR
史実では1927年3月14日大蔵大臣片岡が、「東京渡辺銀行がとうとう破綻いたしました」と失言した。実際には「まだ」破綻していなかった。しかし、この失言により、預金者がパニックになり、銀行に現金を引き出そうと殺到(取り付け騒ぎ)する事態になる。
だが、この世界線では1926年に若槻内閣は総辞職、総選挙では原内閣が成立、そして蔵相はだるまさん事、高橋是清様になった。
希代の経済感覚の持ち主である彼がそんな失言をする筈もなく、史実にあった取り付け騒ぎは発生しない。(裏面が真っ白な200円札は見てみたかった!)
しかし、関東大震災後、決済不能になった手形(借金の証書)を救済する仕組みができ、実態は「鈴木商店と台湾銀行の焦げ付きを隠すための道具」となっていた。
もちろん、鈴木商会以外もやっているに違いなく、推定一億円が鈴木商会、残りの一億円が市中の銀行などに存在する「不良債権」として日本は巨大な爆弾を抱えていた。
史実では失言直後の混乱で、鈴木商会の焦げ付きを請負った台湾銀行は新規融資を拒絶し、鈴木商会は倒産、続いて台湾銀行も倒産。更に連鎖倒産が続き、日本は未曾有の金融危機に陥る。しかし、高橋はこれを金融恐慌の火消し(モラトリアム)で克服。不良債権である震災手形を国費で買い取り、銀行への無制限融資などでこの未曾有の金融危機を乗り越えた。
更に1931年の世界恐慌の折には金解禁(金本位制への復帰)の即刻停止、管理通貨制度へと移行し、積極財政と金融政策でやはり危機を脱した。
金融政策は「お金を借りるコスト」が下がり、ビジネスを拡大しやすくなる上、自国通貨安を呼び、輸出が拡大する。積極財政は安定化政策となり、飢饉や不況で苦しむ農村を救うため、土木工事などの公共事業を増やし、失業者に仕事を与える事が出来る。
これはアメリカ大統領FDRことフランクリンルーズベルトのニューディール政策の日本版とも言え、イギリスの経済学者ケインズが『雇用、利子及び貨幣の一般理論』を発表する数年も前に、同様の「有効需要の創出」を実践していたことになる。信じられない叡智。
ちなみに映画「アニー」でFDRに勇気を与える少女の正体はケインズとも言える。
この当時の古典経済学では均衡経済であり、原則政府は経済に介入しないとされていた。古典学派の基本は「市場は放っておいても、自然に最良の状態(均衡)に向かう」。つまり世界恐慌の折も、時間が解決するとされていた。これに対してケインズが発した有名な言葉が「回復を待っている間に国民が飢えてしまう」である。
FDRは高橋の行った政策同様のニューディール政策を実施、世界恐慌を乗り越えたのである。
希代の経済感覚にこの国の運命を託す・・・それだけでは無く、私はアナスタシア様から頂いた金かいを献金し、現在の日本では無しえない巨額の財政政策をとってもらうつもりだ。
当面、不良債権処理が必須だろう。信じられない事に史実でも高橋は不良債権処理を行った・・・1991年の日本バブルの崩壊の際には後手後手だったにもかかわらず、にだ。
鈴木商会と台湾銀行の一億は私が負担する。残りは政府、財源は金塊である。
これにより日本の経済発展は史実以上のものになるだろう、財源への負担を最小限にしてだ。
私は当初、アメリカとの非戦を徹底していた。その為、中国大陸への介入を阻止して来た。
アメリカを刺激せず、貧困を克服し、アメリカが脅威に感じない程度の国力、そして友好度を上げる事に終始する。史実の様に満州事変など起こす事などは論外。
だが、私はもうアメリカとの衝突は避けられないと考えている。日本が強国になり、アジアに「自給自足」可能な経済圏を完成させる事はアメリカの安全保障と経済的な利益を阻害し、絶対的な脅威となる。
親日の東帝政ロシアの存在が日本の国力と資源の確保を容易にしてくれた。シベリアには石油や資源が大量に眠っている。それに気が付いた瞬間、日本はアメリカの絶対的な脅威となる。
即ち、アジアに大東亜共栄圏を完成させずとも、既に日本は「自足自給」の体制を築きつつある。
既に涼宮はシベリアや中国での石油はもちろん、炭鉱や鉄鋼石の開発を進めている。
それがアメリカを刺激するものだとしても、衝突するなら、「自給自足」体制を早期に築き、衝突の際に勝利する。
戦略としてはアメリカ大統領F・ルーズベルトを失脚させる。彼のニューディール政策を失敗させ、アメリカ国民に不満を植え付ける。方法は安価な日本製品をアメリカに大量に売りつける。当然、貿易摩擦が発生するが、そこは企業による自主的な輸出制限をかけ、アメリカでの現地生産に切り替える。アメリカでの日本企業が多くなれば、国民は反発するだろう。
アメリカを世界の工場にさせない。既にNC旋盤などを開発済の日本製品がアメリカを席巻し、史実程の経済効果を出させない。
ポイントはFDRの第二選目だろう。その段階でスキャンダルとセットで彼を追いやれば、優秀な指導者を失ったアメリカ経済は失速する。
その上で、ドイツが始める第二次世界大戦において、アメリカにはモンロー主義を貫いてもらい。日英仏米ソvs独伊という構図を作る。
英国には日本から経済支援と軍事支援を行い、アメリカを引き入れる理由を潰す。
そして、万が一アメリカが日本と開戦するにしても、WW2の後にする。ドイツを早期に屈服させた上でアメリカと対峙すれば勝機はある。
問題は戦争の終わらせ方だ。考えられる着地点は二つある。一つは原子爆弾による解決。アメリカもマンハッタン計画で原爆を完成させる筈だが、日本も核を持てば停戦に応じるだろう。その破壊力を見せつける為にサンディエゴと何処かの都市に原爆を投下する。
・・・だが、正直、これは最悪の手段。日本人である私、いや、それ以前に多くの市民が犠牲になる爆弾を使用したくない。
ならば最良の着地点は日露戦争と同様の状態にする事。つまり、国内で革命を起こさせる。南北の対立を深め、アメリカが継戦不能な状態に追い込む。この陰謀は私のプランには既に織り込み済だ。
史実では貧困だった南部がニューディール政策により富み、北部は工業が発達し、軋轢など生まれる土壌はなかった。だが、ニューディール政策が失敗すれば?
それが唯一の勝ち筋だと私は考えている。
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