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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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44/64

44原子力開発開始

「お嬢様、早速お粗相などしておられませんでしょうね?」

屋敷の玄関で、完璧なメイド服に身を包んだ茜が、獲物を見つけた猛禽のような視線で私を射抜いた。二カ月ぶりの再会だというのに、彼女の第一声は相変わらずの手厳しさだよ。


「茜、久しぶりに会う主人へ投げつける言葉がそれなの?」

呆れた私に、隣の一樹にいが困ったように眉を下げた。


「相変わらず、仲がいいのか悪いのか分からない二人だな」


「仲なんて最悪よ! この女、行き遅れてたからいつも私に当たるんですもの!」

私が冷たく言い放つと、茜は子供のように頬を膨らませた。

「お嬢様のお陰で行き遅れたんですよ! 誰のおかげだったと思っているのですか!」

まったく、このメイドは。独身を貫くかと思いきや、唐突に三菱の次男と結婚し、今は岩崎家のお屋敷で新婚生活を送っている。対する私は、一樹にいと婚約したばかり。彼の新生活を慣れさせるため、涼宮の屋敷に住んでもらっているのだ。


そんな彼女が、休暇を終えて今日から復帰した。そして今日は、茜の嫁ぎ先である岩崎家のご実家へ挨拶に伺う日でもある。


「二人共、本当に姉妹のようだ。見ていて微笑ましいな」

一樹の生温かい言葉に、私と茜は顔を見合わせ、完璧にシンクロした咆哮を上げた。

「「どこがっ!?」」

あまりの剣幕に、一樹が数歩後ずさる。


「茜、貴女が第一声から私を問題児扱いするからいけないのよ?」

「事実でしょう。お嬢様は毎日のように問題発言をされています。先日も、蒼一郎様とクラスター爆弾の件で大喧嘩になったではないですか」

「あれはお兄様が大人げないだけですわ」

「クラスター爆弾で一気に大量の兵士を殺戮した方が効率が良い、なんて豪語する妹に、兄として怒るのが普通の反応です!」

「茜だって、あの時は私の意見に賛成してたじゃない!」

捨て身の反撃に、茜は顔を真っ赤にして叫んだ。

「あれはお嬢様に感化されて、一時的に人としての心を失っていただけです!」

「それじゃあ私が常に人の心を失っているみたいじゃないの!」

茜のバカ! 一樹の前でそんなこと言わないで! 最近の私は「おしとやかな令嬢」という猫を何枚も被り、彼に理想の婚約者だと思われようと必死なのだ。このサイコパス疑惑をどうやって隠せというの?


「鷹尾、お前・・・本当にそんな事を言ったのか? お前らしいかもしれんが・・・」


一樹の困惑した問いかけに、私は慎重に言葉を選んだ。


「・・・にい。例えば、千人の味方を救うことと、敵兵百人を害することを天秤にかけた時、どう考える?」


「それは・・・難しい議論だが、鷹尾にも深い熟慮があっての発言か? お前は決して――」

「いいえ。お嬢様は効率重視、一時間あたり何人殺せるか RTAが最重要だと常に仰っております」



被せ気味の茜の追撃に、一樹は絶句した。私の全身から、ドバァーっと嫌な汗が噴き出す。


「――ぁああぁああッ! ちくしょおぉおおおおッ!」

言ったわよ! 確かに言ったけど! 私の婚約をぶち壊そうとするのはやめて! どうする、どうすればこの場を切り抜けられる――!?


「――茜さまぁあああ! 申し訳ございませーーーーんッ!」

私はプライドをドブに捨て、渾身のダイビング土下座を披露した。

「は・・・はぁっ!?」

「す、すいませんねぇ、へへっ、茜様。お荷物お持ちしますので、どうか、どうかこの話はここらでお引き取りを・・・」

揉み手せんばかりの勢いで媚びる私に、茜は不思議そうに小首を傾げた。

「しかし、お嬢様。新作のタルトを岩崎家までしっかり持ち、お供するようにとご自身で命令されたのでは?」

「都合の悪いことはいつも誤魔化すから、話を合わせてっていつも言ってるでしょ!」

「・・・鷹尾・・・ガチじゃん」

あ・・・。先日教えたばかりの「令和の表現」を、一樹兄が呟いた。オワタ。私の「可愛いお嫁さん計画」は、一瞬にして瓦解した。


「・・・もう、こんなやり取りもできなくなりますね、お嬢様」

ふと、茜の声に寂しさが混じった。

「何でよ? 旦那のお屋敷からだって、通勤に困る距離じゃないでしょ?」

「実は・・・早々、赤ちゃんが。ですので、いずれお暇を頂く予定なのです」

「・・・! 本当? 良かったわね・・・それで、何ヶ月なの?」


「一ヶ月だそうです。ですから、もう、身を引くしか・・・」

なんだ、そんなことを気にしていたのか。私が、そんなことで彼女を手放すとでも?


「幸せになってね。まあ、茜が不幸になるのを見るのも・・・それはそれで楽しいかもしれないけど(笑)」

ついつい本音が、いえ、精一杯の照れ隠しが漏れてしまった。


「いい根性をなされてますね、お嬢様?」

茜の視線が、再び私を射抜く。


「何ですって? メイド風情が、華族のエリート令嬢である私に文句でもあるの?」


強がって見せると、茜はニヤリと不敵に笑った。


「さっきから、お嬢様が一樹様にその正体がバレないように必死だったこと・・・全部バラして差し上げましょうか?」


「な、なにをーっ! とにかく! 茜はさっさと子供を産んだら、また我が家にメイドとして復帰しなさい! 命令よ!」


「え?・・・お嬢様?」


驚いた顔をした茜が、私に抱き着いてきた。・・・と思ったら、そのままガッチリと羽交い締めにされ、首を極められた。


「ギ、ギブ、ギブ! 茜! 殺される、死んじゃう!」


「ははは、お前たちは本当に面白いね。とても微笑ましいよ」

一樹兄が、私たちの「じゃれ合い(命懸け)」を温かい目で見守っている。・・・にい、助けて。


結局、茜の関節技で死にかけつつも、私たちは手土産のタルトを持って岩崎家へと向かった。なぜか一樹兄も同行し、通された広い座敷でしばらく待たされる。


「よく来てくれた、涼宮家当主鷹尾さん。早速だが・・・貴女は『原子力』についてどう思うかね?」

岩崎家の当主からの、あまりに唐突な問いかけ。私は、思考を巡らせるよりも先に、反射的に答えてしまった。

「1905年にアインシュタインが相対性理論を発表しております。核分裂と核連鎖反応を人為的に起こす原子爆弾を開発すれば、極めて効率良く敵国の人間を抹殺できま・・・あ!?」

しまった。またやってしまった。


「・・・茜さんの言う通りだ。類まれな頭脳だが、少々倫理観が・・・アレだな」

当主の言葉に、一樹兄が引きつった苦笑いを浮かべる。

「左様でございます。お嬢様は何処に出しても恥ずかしくない『サイコパス』でございますから!」

ドヤ顔で宣言する茜。やめて、それ全然褒め言葉じゃないから! 可愛い涼宮家の令嬢を演じるつもりが、外堀から内堀まで完璧に「サイコパス認定」されてしまった。


その後、話は急転直下、我がスバル社と三菱名古屋との技術提携の話へと進んだ。もちろん快諾だ。貴重なリソースを効率良く使うため、発動機などの開発を分担できるのは願ってもない。史実では名航が量産に追いつかず、中島飛行機が零戦の主力生産を担った歴史がある。今のうちから体制を整えておくのは合理的だ。


実のある話はできた。国家の未来に資する提携も結べた。けれど、一番大切なものが、音を立てて崩れ去った気がする。

返せ、私の「可愛いお嬢様像」を・・・! 私は帰途の車中、夕焼け空を見上げながら、心の中で毒づき続けるのだった。

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― 新着の感想 ―
原子力を動力源とした潜水艦くらいは欲しいよね 中に核の有無は置いておいてミサイルも載せたいし 原発はこの時代危険性が知られていないのと差別意識で戦争になったら普通に空爆されそう
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