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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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37尼港事件2

「なっ!?」涼宮蒼一郎が言葉に詰まっていると、慌ただしく通信兵が駆け寄り、彼に一枚のメモを手渡した。その内容を目にした蒼一郎は、怒りに肩を震わせながら、メモをぐしゃりと握り潰す。


「中国軍戦艦からと思われる砲撃、だ・・・と?」


涼宮蒼一郎の元に届けられた戦況報告は、背筋を凍らせるものだった。


「進むより他に道はない。どのみち、船は陸に上がって来れない」


それが強がりであると分かっていても、そう言い聞かせるしかなかった。街の南側にある塹壕の残党を掃討し終え、蒼一郎自身も街の中心へと足を踏み入れた。


結局、街の南側に到達するまでに四時間を要し、その間に日本軍の被害は拡大したが、蒼一郎には事態を打開する策が見当たらなかった。その時だった!


「報告いたします!沖合の日本海軍防護巡洋艦『新高』より『我、賊軍殲滅に協力せんと欲す』との通信!さらにアメリカ海軍USS CA-3『ブルックリン』から『We stand with the people.(我らは民衆の共にある)』と!そして、ニコラエフスクの英国人居住者が、赤軍の蛮行を無線で繰り返し発信しています!」


同時刻、日本海軍防護巡洋艦『新高』艦長からの通信。

[貴艦の攻撃目標、誤認にあらずや。射撃緒元を直ちに修正せよ。命に従わざる場合、貴艦を敵性艦と見做し、帝国海軍の武力をもって撃沈す]


同じく、アメリカ海軍巡洋艦『ブルックリン』艦長からの通信。

[メーデー、メーデー、メーデー、アメリカ海軍ブルックリンより中国海軍『江享』へ。貴艦の目標は間違っている。直ちに攻撃を中止せよ。続行すれば、貴艦を撃沈する]


対して、中国海軍巡洋艦『江享』からの返答。

[我ら同胞の安寧あんねいを保つのみ、本艦を妨げる無かれ]


アメリカ海軍巡洋艦『ブルックリン』からの再度の通信。

[中国海軍『江享』へ。貴艦の同胞とは誰か? 罪なき市民が虐殺されつつある。繰り返し問う、貴艦の同胞とは誰か?]


中国艦隊はニコラエフスクで越冬していたが、日本海軍及びアメリカ海軍も、アナスタシアの新生帝政ロシアの要請を受け、同じくこの地で越冬していた。中国軍は赤軍パルチザンの中国人の呼びかけに応じたものの、パルチザンの蛮行を十分に理解していなかった。しかし、日米両軍の説得により、ついにその砲は沈黙した。


「砲撃が止まりましたな」

「涼宮中佐からだ、何?」

「大隊長?」

「進軍だ。沖合の戦艦は日本海軍とアメリカ海軍が黙らせたようだ。これからは俺たちのターンだ」


日本軍が行動を再開すると、たちまち南側奥の塹壕は壊滅していった。防御網の脆弱な点を突破し、浸透するかのように、戦車数両と兵力千をさらに奥へと進ませる。さらに日米中の巡洋艦の砲撃も加わり、赤軍はあっけなく後退していった。


「・・・君は?」


蒼一郎が街に残る敵兵を掃討する最中、ある家屋で一人の少女と少年を発見する。純粋な白系ロシア人が珍しい市民の中に、白人系のロシア人は極めて稀な存在だった。


「もう心配することはない。もしかして、君たちは?」


二人の重要人物を保護し、こうして尼港事件は終結した。しかし、赤軍指揮官ヤーコフ・トリャピーツィンは、日本軍、ロシア現地住民はおろか、米英の住人の証言によって残虐な行為が発覚。身柄を赤軍に引き渡されたが、激昂した指揮官により銃殺された。その手口は、重機関銃の何十発もの銃弾で肉片に変えられた上、アムール川に突き落とされるという凄惨なものだった。彼の情婦もまた、同じ運命を辿った。




史実では、1920年3月から5月にかけて発生した赤軍パルチザンによる大規模な住民虐殺事件。尼港虐殺事件やニコラエフスク事件とも呼ばれる。日本人約700人を含む6000人を超える住民が虐殺された。この頃、シベリアは混乱期で、赤軍と白軍が内戦を繰り広げていた。しかし、白軍は反革命派のコルチャーク政権が一年と持たず、1919年末に崩壊したため、赤軍が有利な状態だった。この蛮行の首謀者は赤軍司令官、ヤーコフ・イヴァノーヴィチ・トリピャーツィン。この地は日本軍が駐留し、事実上占拠していたが、港が氷結して陸の孤島と化し、その間に赤軍の大軍に包囲された。日本守備隊は、武装解除をしないことと住民の生命財産の安全を保障することを条件に和議を結んだが、停戦協定を無視し、住民を処刑し、街を焼き払った。解氷期の5月下旬に日本軍守備隊が反攻するが、白軍共々全滅。最終的な被害は、ニコラエフスクの総人口の半分が、女子供の区別なく虐殺されたという。


最初の犠牲者たちは花街の娼婦たちだった。パルチザンは泣いて命乞いをする彼女らを無残に殺戮した。通りは血の海と化し、女性の死体が散乱した。また、即決処刑されなかった女性と子供はもっと悲惨だった。彼女らはアムール河岸に連行され、暴行を受けた後、殺害された。幼子は生きたまま雪の中に埋められ、雪中から泣き叫ぶ声が聞こえた。雪解けの際には、雪中から手や足が突き出ていたという惨状だった。それは、人間の残酷性がどこまで加速するのかを目の当たりにする光景だった。・・・後日、指揮官ヤーコフはソ連人民裁判において死刑判決を受け、処刑された。




「まずは予定通り、なのかな?」


新聞を読んでいた一樹にいは、そんな感想を妻に伝えた。すると、彼女は黙って頷いた。


「お兄様が民衆虐殺など容認できないことは、予想できました。しかし、越冬していた中国巡洋艦が一番厄介な存在だったのですわ。ロシアでの権益を奪い合う都合上、どうしても相応な介入機会が必要でした。中華民国の誤算は、赤軍の狼藉が度を越していたことでしょう。中国はあれでも昔は真っ当な意見を好みましたからね。正義が担保できなければ、手は出せない。たとえ自軍が優勢でも、大義名分を失えば、むしろ欧米列強の罠に飛び込むことになりかねません」


「坊ちゃんは大丈夫なのか?」


「大丈夫ですわ、間違いなく・・・お兄様は・・・策士ですから」


鷹尾はにっこりと微笑んだ。日本帝国海軍巡洋艦を越冬させたのは、妻の懇願に主家を頼り、海軍に取り成した岩崎家の意向だった。一節によれば、東郷平八郎元帥も東宮に上申したとの逸話も残されている。

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