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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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36尼港事件1

1920年、涼宮蒼一郎はシベリアの地に派遣されてから、既に一年が経過していた。


彼は軍のお偉方から釘を刺されてはいたが、どうしてもニコラエフスクの街を見捨てることなどできなかった。妹である鷹尾が言うには、この地で赤軍パルチザンと日本軍守備隊との間に戦闘が生じ、日本軍は敗北しただけでなく、全員が殺害された。さらに日本人民間人はおろか、現地ロシア民間人も白軍側と一方的に断じられ、実に六千人もの人々が虐殺されるというのだ。軍部は、この地域で赤軍の活動が活発になっているという情報を得てはいたが、ロシア内政不干渉という原則論から、赤軍との衝突は避けるべきだと判断していた。鷹尾は何とかこの地の被害を食い止めて欲しいと、蒼一郎に懇願していたのだ。軍部の判断は冷静で妥当なものだが、結末を知っている蒼一郎には耐えられなかった。


腹黒い彼も、軍人の戦死・・・たとえそれが国際法を無視して一方的に殺害されたとしても、ギリギリ許容できる。だが、民間人六千の犠牲は、到底我慢ならない。規律を重んじる軍属にとって唾棄すべき行為であり、それを知っていて放置するなど、彼にはできなかった。


蒼一郎は何とか三千の兵力と秋山中佐率いる戦車一個中隊を引き抜き、アムール川河口付近のニコラエフスク港へと向かった。シベリア鉄道沿いと違い、進軍は困難を極め、現地到着は3月となってしまった。鷹尾が開発してくれた戦車や履帯付きトラックがなければ、進軍自体が不可能だっただろう。


「・・・酷いものだな」

「信じられん。これが赤軍のやったことなのか? 奴ら、同胞に対してこんなむごい仕打ちをしたのか?」


蒼一郎の目の前には、裸の若い女性の死体が横たわっていた。空虚な目には何も映っていない。だが、それを見た蒼一郎の目には怒り、嫌悪、憎悪、そして絶望が映っていたように思える。目を閉じさせてやるが、放置して進軍を続けざるを得なかった。既にいくつかの集落で同様の事態が報告されており、村人は老若男女問わず殺害され、女性は暴行を受けた痕跡があった。


「許さん。必ず報いを受けさせる」

「同感だ。これをやったヤツは軍人などではない。いや、人としての一線を越えた化け物だ」


秋山中佐も同意する。およそ自国民に対する仕打ちとは思えない光景に、赤軍に対する嫌悪感が否応なく増していく。


「日本軍守備隊と連絡がつきました」

「繋げ」


通信兵から無線機を渡されると、蒼一郎は現地指揮官と話し始めた。


「何? 赤軍は、大軍で包囲して白軍を降伏させた後に全員処刑? それどころか、住民に対する財産没収や処刑も行っているだと?」

「その上、先ほど我々日本軍にも武器引き渡しを要求してきました」

「・・・われ」

「は?」

「断れ! 作戦決行は明日明朝、我々の援軍は戦車12両を含む兵三千。必ず助ける」

「承知いたしました、中佐殿」


明朝、作戦が実行された。事前に偵察を行い、敵の布陣は把握済みだった。幸い、塹壕はさほど深く掘られていない。彼らにとっては食料の強奪と男の欲望を満たせば、後は住民を虐殺して終わりという、軍人の恥とも言うべき行為を当たり前のように行う蛮族に過ぎないのだろう。実際、現地指揮官の報告によると、赤軍は烏合の衆で、どうやら強制動員された山賊のような様相を呈している。間違いなく蛮族だ。これを赤軍と呼ぶべきではないかもしれない。これに軍という名を冠することは、軍人である彼には許容できない。


兵力は推定四千を上回り、五千はいるかもしれない。しかし、正規兵の装備を持っている者は僅かで、小銃すら持っていない者が過半数を占める。必ず殲滅する。大半が嫌々行動を共にしているに過ぎず、中心の将校たちが狂気に陥っているのだろう。中心の将校を討ち取れば、この戦いは勝てる。


「行動開始。十、九、八・・・行け!」


たっぷりと30分かけて行われた自走りゅう弾砲による火力支援の後、戦車の援護の下、歩兵部隊が次々と街の北側から突入する。砲撃を免れた幸運な塹壕や陣地が健気な反撃を行うが、次々と殺到する戦車と歩兵によって蹂躙されていった。


「これはまさに盗賊だな」


至る所で逃亡を図る敵兵。全体から見れば僅かな損害にもかかわらず、あっさりと敵前逃亡を開始し始める赤軍に、蒼一郎はやや呆れた。


「南の赤軍が市街地に入ったら合図だ、間違えるなよ?」

「了解」


返事をした守備隊兵士は、市街地に赤軍が侵入を開始したことを確認すると、信号弾を打ち上げた。


「よし、逃げるぞ!」


敵を前に、戦いもせずに背を見せる。軍人としてあるまじき行為をしながらも、彼らは不敵な笑みを浮かべていた。


「まあ、もう少し勘違いくらいはさせてやるとするさ」


含みを持たせた言葉を残し、街の南方守備隊の兵士たちは、赤軍に捕捉されることなく撤退していった。


「報告します。守備隊より信号弾! 南の赤軍の街への侵入を確認、損害は軽微! 引き続き遅滞ちたい戦闘を行いつつ後退する、以上です!」


その言葉に不敵な笑みを浮かべる秋山中佐。8式中戦車内の仲間たちが口々に好き勝手なことを言い始める。


「成功です、中佐」

「これで、奴らに一泡吹かせてやれます。中佐、進撃のご指示を」

「連中はこちらの陽動に引っかかっています。ここからは迅速な行動が重要ではないでしょうか?中佐?」

「しかし、上手く戦いが進み過ぎないか?北の防御が手薄過ぎたようにも思える。何か裏があるのでは?」

「ですが、みすみす自軍の兵士を消耗させる利点はないのでは?ならば本当にこちらの思惑通りに進んでいるだけでは、中佐?実際、奴らの被害も甚大なはずです」

「奴らに兵士の損耗に気を咎めるような心があれば、あちこちの集落で見た惨劇もありえんだろう。北の守りは塹壕が増えていた割に兵力が少ない、不自然だぞ? やはり何かあるのでは・・・事前情報によれば、中国軍の戦艦が付近を停泊中と聞く。もし、赤軍に中国軍が参加していたとすれば、あるいは中国艦が援護射撃をするという可能性はないか?」

「まさか中国軍がならず者に力を貸すと?」

「中国の奴らは赤軍の蛮行を知らない・・・やつらは英語が苦手だと涼宮中佐が言っていた。中国軍戦艦を敵に回すことになると考えた方が良さそうだな」

「まさか、そうご判断するには尚早では?」


一瞬、車内に沈黙が訪れたが、大きな声で秋山中佐が告げる。


「作戦は始まっている。我々は作戦途中だ、作戦を継続する」


そう言って戦車中隊が街中に進行し始めた途端、激しい爆音と巨大な爆発が街の北で起こった。皆が呆然とその光景を眺めていると、さらに遅れて戦艦の砲弾が次々と降り注いだ。

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― 新着の感想 ―
軍属は軍に属する軍人以外のことなので ここは軍人では?
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