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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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32茜の結婚

現在30話から35話まで工事中です。

「すまないが、君を愛することはできない」


見合いの席で二人きりになった瞬間、硬い声音で告げられ、彼女は思わず目を瞬いた。断りきれない見合い相手を、彼女は声もなく見上げる。


「君の生活に不自由はさせないと思っている。好きなように生きてくれ。必要なことは使用人のなつに聞いてくれ。できる限り何とかしよう」


そう話している間も、三菱の御曹司、岩崎弓弦ゆずる様は彼女を一瞥だにしない。彼の視線は、初めて顔を合わせた時からずっと、彼女を拒絶するように逸らされたままだった。


「君が望むなら愛人を作ってもいい。さすがに子どもは諦めてもらわなければならないが・・・」


「そのようなお気遣いはご無用でございますわ」


落ち着いた口調で、しかし毅然と伝えると、弓弦の目が初めて彼女に向けられた。


「・・・そうか。気が変わったら、いつでも言ってくれ。では、私はこれで失礼する」


そう言い残すと、岩崎弓弦はさっさとその場を後にした。彼の後ろ姿を黙って見送り、残された彼女はそっとため息をついた。


彼女は涼宮家当主から三菱の御曹司との縁談を持ちかけられた。もちろん、親戚としてではなく、涼宮家当主としての命令だ。当主の魂胆は見え透いていた。涼宮は他の華族とは異なり、名誉だけでなく経済的にも成功している珍しい名家。例え三菱の御曹司とは言え、分家筋の末席に名を連ねる彼女程度で十分という事だ。


ならば私の役どころはさしずめ、『この無礼な男の調教』と言ったところだろうと、そう彼女は理解した。


見合い相手は岩崎弓弦。彼女は少々調べてみたが、あだ名は「氷の策士」、あるいは「冷酷無慈悲の貴公子」。おおよそ優しい人とは思えない。


「では、後は若いお二人に任せますかな」


仲人の渋沢栄一に促され、二人でレストランを出た後の、初めての会話があれである。


それからあっという間に時が過ぎ、彼女は岩崎弓弦に嫁いだ。


初夜をすっぽかされ、朝を迎えていた。念のため、薄化粧や衣装などを頑張ってみたものの、無駄な努力だったようだ。彼の言った通り、白い結婚というやつだ。


結婚式からなし崩しに旦那の家に越して来たので、お腹が減り、起床して朝食の準備を始めた。ほどなくすると、お手伝いの夏が出勤してきた。


「茜様?」


「夏さん? おはようございます」


「お越しになって早々、こんな朝早くから食事の準備なんて」


「勝手なことをして、申し訳ございません」


「勝手だなんて、そんな! 茜様は坊っちゃんの奥様なのですから! まあ! 何ていい匂い! え? お味噌汁に玉ねぎ? ジャガイモもですか?」


「はい。お味噌汁って、具材は何でも合いますから、洋風のものも入れてみました」


「私は見ての通りの歳ですので、お手伝いを・・・私がお手伝いなのに。とても助かります。それに、茜様が作ってくれたお味噌汁なら、きっと坊っちゃんも喜んでいらしてくださいます」


果たしてそうだろうか? まるで歓迎されていないというか、そもそも白い結婚では? そう彼女は疑問に思った。


「では、ここはお任せしていいですか? 私は他のこともやっておきましょう」


そうして、旦那との朝食になった。


「お前は夏の隣に座れ」


「はい。承知いたしました」


彼女は何となく、事務的に返した。旦那は尊大な態度で、彼女が運んできた朝食を自分の前に置くと、彼女はお手伝いの夏さんと一緒に座って、黙って見ていた。


「この家では私が絶対だ。口答えは許さん。私が出て行けと言ったら出て行け、死ねと言ったら死ね。文句や反論は聞かない」


「承知いたしました、旦那様」


「何?」


「他に何かございますか?」


改めて見ると、旦那は綺麗な容貌をしているな、と、そう彼女は思った。


「いや、いい」


「よろしくお願いいたします」


旦那が朝食を見てとると、突然顔色が変わった。


「なんだこの食事は?」


「坊っちゃん、これは奥様が坊っちゃんの為にお作りになられたものです」


「いらん。こんな奇妙な食事など食えるか」


そう言って、その場を去り、そのまま務めている会社に出勤してしまった。


「茜様。坊っちゃんは巷では冷酷無慈悲などと言われているそうですが、本当は違います。どうか坊っちゃんを理解してあげてください」


「は、はい、わかりましたわ」


夏はそう言うが、どこからどう見ても冷酷無比なDV旦那にしか彼女は見えなかった。


夜になると旦那が帰ってきた。夕食は夏に任せていた。


「お帰りなさいませ、旦那様」


「・・・まだいたのか」


「夕食は夏さんが作ってくれました。ご安心してお召し上がりください」


「・・・」


「ご迷惑でしたでしょうか? 明日から顔を出さない方が良いならそう致します」


「・・・」


「旦那様?」


旦那様は何故か指を噛むと、「クッ」と一言漏らし、こう言い出した。


「お前は仮にも涼宮家の一族の娘だろう? こんな扱いを成り上がりの商家風情にされて、悔しくないのか?」


「旦那様。岩崎家、三菱財閥の格式は、私の主家、涼宮家の比ではございません。ですが、私は涼宮家にとって、女中同然の身です。お気になさらず」


「我が岩崎家は女中とでも結婚しておけと言うのか? そこまで涼宮家は偉いというのか?」


「そんな事はございません。涼宮家の皆様には女中の私を大切に見て頂いております。ですからこの様な過分な婚姻のお世話までして頂いております。・・・岩崎家にとって女中は風景・・・なのでしょうか?」


「いても見えていても、見えていないに等しければ当然だろう?」


涼宮一族の末席に名を連ねる彼女に対して・・・というより涼宮家の推す彼女を蔑ろにする発言は彼女に対してだけでなく、涼宮家に対してかなり失礼な発言だ。


「見えていても見えないに等しい。まさか岩崎家の長男ともあろうお方がその発言の重み理解されていないのでしょうか?」


「何を言っているのだ。岩崎家との家格の差を考えれば、たかが涼宮の女中の分際、言わずと知れた事だろう」


旦那は単純な家格を比較しているが、涼宮は他の華族と異なり資産に困ってはいない。むしろ三菱、岩崎家の方がスバルを主とする涼宮の技術力と資金力を欲している。

つまり、涼宮にとって、この縁談が壊れても痛くも痒くもない。せいぜい仲良くやろうという意思表示に過ぎない。

旦那は自身の置かれている状況を全く理解していない。


「旦那様、流石に言い過ぎです。旦那様は財界で蝶よ花よとお育ちで、自分の力が及ばない世界は無いと、本気で考えているような頭の中が一面お花畑な方ですのよ。あら、もっと優しい言葉で言った方が宜しかったでしょうか?」


旦那の顔が強張り、顔色がだんだん悪くなってきた。

彼女は一応、良かれと思い、発言したが、どうやら選択枝を間違えたようだ。


「本気で言っているのか? 岩崎家の長男の私に向かってその様な?」


「旦那様。私は華族の端くれです。我が家のため、そして旦那様のお家のためなら、どんな事でも何も感じません。私の一挙手一投足は華族の矜持です。家名の名誉、家の存続と繁栄への貢献のためなら、どんなことでも受け入れてごらんに入れます・・・ですが。旦那様は我が涼宮家が岩崎・・・三菱財閥を乗っ取る為の駒に過ぎません。岩崎ご当主様のご意向を確認してくださいまし」


旦那はみるみる顔を赤くし、激怒し、吐き捨てるように言った。


「父上に確認する! 覚悟するがいい!」


「承知いたしました、旦那様」


そう言うと、彼女、長門茜は一歩下がって礼をした。


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おや、感想欄が賑やかだw 余所と同じが嫌で無ければ、華族、それも武家ではなく公家だろうから皇族ってのもアリなのよ? 下手に他の財閥と組むより、古来の関係性から同じ華族か皇族の方が無難。 ソイツが…
返信ありがとうございます。 結婚の対象として自然だったろうなのは、いとこ氏だったと思います、功績的にも感情的にも。ストーリー上他にキャラが出てこないので、他の誰かをは難しいかも。 キャラが居ないの…
返信ありがとうございます。入婿となると、「嫁いだ」がおかしいです。男が「婿入り」か、「婿をとった」じゃないと。入り婿としても、入り婿の態度じゃないですね。仲人の顔も潰すし、あり得なさすぎ。 御曹司表…
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