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【書籍化】元・最強暗殺者の騎士生活 〜世界最強の暗殺者、超一流の騎士団に拾われ無双する〜  作者: 和宮 玄
第二章

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61 やっぱりヤツが来る

「では、計画通りに」


 部屋を出た勇者正教の男──司教は、ある豪奢な貴賓室に迎え入れた二人の人物に向かい、軽く頭を下げて話をまとめた。


「お手数をおかけしますが……いえ、期待していますよ」

「はいはい、任せときな。アンタんとこの爺さんには世話になってるからね」

「……ですね。それに私たちにも他に目的がありますので」


 背の高い金髪の女が手を振ると、もう一人の男が頬をさすりながら口端を歪めた。

 まるで鈍痛を思い出し、恍惚とするその黒服の表情に。

 司教は本能的な恐怖を感じ、尋ねようとした目的とやらの話題を避ける。


「学園に二人の騎士がいる程度、あなたたちには問題ではありませんか」

「──そう、それですよ! テオル・ガーファルド。なかなか許可が下りずチャンスに恵まれませんでしたが、ようやくやってきた。ロスケール家のあのお嬢さんもいるようですし……あぁっ」

「アンタ、キモすぎんだろ……」

「おっと。私としたことが、これは申し訳ない。しかし、貴女だって興奮せずにはいられないでしょう」

「あのガーファルドには迷惑をかけられたからな。確かに、それが勘当された有望株の手に渡っていたと知った時は、アタシだってそそられたけど」

「ですよねぇ! なんて興味深い世界なんでしょうか」


 腕を広げ天を仰ぐ黒服に、司教は話題を変えられなかったことを悟った。


「あの……そろそろ、私は失礼しますね」

「あれ、まだいたんですか。他に聞いておきたいこともありませんし、声をかけず出て行っても構いませんでしたのに」

「そ、そう……ですか。では……」


 物を見るような、興味を失った瞳に異常さを覚える。

 司教は強気の姿勢を保てなくなり、そそくさと部屋を後にした。


「アンタ、わかってるんでしょ? まずはしっかりと仕事をこなしな」

「それはもちろん。あくまで『ついで』だと理解してますよ」

「なら好きにやっても構わないが、アンタのは急ぎじゃないからね」

「はい」

「じゃあ、瑣末な仕事の成功を。全ては魔王様のために──」




 ◆◆◆




 朝。

 通学途中の馬車の中で、リーナが外に目を向けて言った。


「今日はいないようね。私たちを見張ってた男」

「ああ……みたいだな」


 王子のこと、勇者正教のことはフラウディアたちや団長と共有済みだ。

 しかし、あの暗殺者の男の身に起こったであろうことは団長以外に言っていない。あまり気分の良い話ではないからな。


「──あっ、今なら行けますよ!」


 俺への部活勧誘は粘り強く残っている。

 学園に到着し、周囲を見渡したフラウディアに呼ばれて馬車を降りる。


 あれのせいで他の生徒たちよりも早く登校するはめになったが、彼女は人気のないところを選んで移動するのを気に入ってくれたらしく、今のところ問題ないそうだ。


「テオル様、今日の放課後はどうするのでしょうか?」

「昨日は休みでしたからね。フラウディアが良いのなら、ダンジョンに潜りたいって先生が言っていましたよ」

「そうですか! ではダンジョンに行きましょう」

「ではそう伝えておきます」


 校舎の入り口を目指しながらは話をしていると、


「フラウ、随分とやる気あるじゃない」


 一人だけ暢気に後ろを歩くリーナが、茶化すようにそう言った。


「だってようやくお宝が見つかったんですよっ? それに防寒着がある今、四階層は別の街に行ったみたいで楽しいではありませんか」

「まあ……そう言われるとそうね」

「そうだ! 一足先に、私たちだけで雪合戦をしませんかっ」


 フラウディアの言葉にすぐに流されすぎだろ。

 ふわぁとリーナは欠伸をしてから、「それいいわね」と眉を上げる。


「当然、テオルに周囲の警戒を頼んでね」

「ああ。元から俺はそのつもりだ。まったく、リーナは護る側なんだからな?」

「はいはい、もうわかってるわよ」


 護られる側みたいな顔をして。

 もう少し自覚を持って行動してほしいものだが……まあ、気を抜いて遊べるときに遊んでおくのは悪いことではないか。


「えぇっ、テオル様。そんな……」

「フラウ、なにガッカリしてるのよ?」

「だって、雪合戦はみんなでするから楽しいのですよっ? 先生は先生ですし、誘ったら一緒にやってくれるとは思いますが……テオル様もどうにかなりませんか?」

「え……俺もですか?」


 手を胸の前で組み、うるうるとした瞳を向けられる。


 先生の言われようは置いておくとして、だ。

 フラウディアにここまで懇願されると何故か断りにくい。

 これがリーナだったら話は別なんだが。


「ま、まあ……探知魔法で気をつけておけば問題は──」


 さっき自分で言っていた自覚とやらはどこへ消えた、という話になってはしまうけれど、すでに行ったことのあるエリアで3KMの索敵をしておけばいいか。

 そう思い答えようとした時。


「あれ?」


 ふと、違和感に気がついた。


「テオル、あんたまたそれ? 最近なんか多いわね」

「……え? あ、ああ俺か?」


 リーナの言葉をうまく頭に入らないまま、脳裏には探知魔法の結果が描かれる。

 そこには──影が一つ、こちらに向かって急接近してきている光景が。


 いや、まさかな。

 どうせそろそろ外れて他の場所に……ダメだ、完全に俺を目指して来ている。

 どうやって学園に通っていると知ったのか疑問だが、


「二人とも、早いとこ教室へ行こう」


 許可のない部外者が立ち入れないよう、敷地には簡単な結界が張られている。

 だが……それだけでは心配だ。


 だから。


「ほら、とにかく早く!」


 俺は接近してくる人物──ルドに見つかる前に。


 リーナとフラウディアの腕を掴み、全速力でより強固な結界が張られた校舎の中に逃げることにした。


更新が遅れてすみません。

ここから一気にわちゃわちゃとさせたいのですが、なかなか難しくて。

悩んでいると執筆の時間が……ほんと、日々勉強です。

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