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【書籍化】元・最強暗殺者の騎士生活 〜世界最強の暗殺者、超一流の騎士団に拾われ無双する〜  作者: 和宮 玄
第二章

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41 放課後のひととき

「……はぁ、疲れたぁ」


 あの後。

 一日の授業を終え、俺はフラウディアたちと共に王城に帰ってきた。

 今は部屋のソファーに座って三人で紅茶を飲んでいる。


「グウェンのやつ、手合わせがしたいなら人が少ない場所で申し出てくれても、普通に受けたんだけどなぁ……」

「あんたがあまりにも覇気がなくて、喧嘩腰になってたのよ」

「っう。そ、そうだとしてもだな。あれのせいであんなことに……はぁ」


 今すぐ衝立の向こう、自分用スペースにあるベッドに倒れ込みたい。


 リーナがジト目で見てくるので目を逸らす。

 するとフラウディアがクッキーが載った皿を机の上で少し押し、俺の方に勧めてきた。


「テオル様がグウェンさんに勝ったことによって、昨日に比べて、お二人が編入されたというお話が広がったようですね」

「……はい。ですが、だからと言ってあんなに多くの生徒が押し寄せるなんて」

「あんたのせいで私まで握手を求められたりして大変なのよ?」

「す、すまん──って、違うだろ」

「え? 何がよ……」

「お前だって『グウェンに勝ってこい』みたいなこと言ってだろ!? まあ、乗り気になった俺も俺だけどさ」


 クッキーを一枚齧りながら、リーナに突っ込む。


「あ、そういえばそうだったわね……。じゃあグウェンが全て悪いということにしておきましょ」

「そうだな」

「お二人とも……」


 優雅に紅茶を飲んでいたフラウディアが頬を引き攣らした。

 だが、気にしたら負けだ。


 授業中の勝負に俺が勝ち、学園内での注目度がさらに上がったのも。

 休み時間ごとに大量の生徒がクラスに押し寄せるようになったのも。

 あれもこれも、全部まとめて原因は戦闘好きのグウェンにある。


「フラウディア。大きな怪我もなかったみたいですし、グウェン自身も自分に責任があるとわかってくれてると思いますよ」

「そ、そうですかね……? グウェンさん、次の授業中もむすっとして、テオル様の方を睨んでいましたよ?」

「あれは、いつ謝ろうかとタイミングを窺っていたんじゃ……」


 フラウディアとリーナの顔を順々に見るが、二人とも首を横に振っている。

 嘘だろ。

 まさか、人によってこんなにも捉え方が違うなんて……。


「それはあんただけよ。普通はみんな睨んでたって思うのよ」

「あれ俺、口に出してたか?」

「鏡を見てきなさい。顔にはっきりそう書いてるわ」


 口に出してないのに……もしかして、リーナに心でも読まれたのか。

 そう思ったが、単に俺がわかりやすいだけだったみたいだ。


 横で今度は首を縦に振っているフラウディアが、ふと呟いた。


「それにしても……テオル様の気配を消す技術は、やっぱり凄いですね」

()()()()、ですか……?」


 実際にフラウディアの前で見せたのは今日が初めてだったが、もしかすると報告書や団長たちから聞いた話と比べての言葉だったのかもしれない。

 だがその目に懐かしむようなものが感じられ、俺は引っかかりを覚える。


「ああ、いえっ。以前とある事件に巻き込まれたことがあって、その時に同じような技を使われる方に命を救われたことがあるのです」

「へぇー。フラウ、あなたそんなことがあったのね」

「その時も本当に消えてしまったみたいで、かなり驚いたのですが……今日のテオル様は魔法も使わずにでしたので」


 リーナも知らない話だったらしいが、そんなことがあったのか。

 王女様もかなり波乱万丈な人生を送ってきたんだな。


「その人は、どんな感じだったんですか?」


 気になり、会話の流れで何となく聞いてみる。

 しかしフラウディアは、


「唯一記憶に残っているのは瞳だけで、顔も名前もわかりませんでした。ですが、運命の導きで再会することができて、すぐに気がつきましたよ」

「あの、良かった……ですね」

「はい!」


 聞きたかった答えではなかったが、まあいい。

 本人は至って上機嫌だ。

 再会したのだったらどんな風貌をしていたのか、なんて聞くのは野暮な話だ。


「──フラウ、それ何の答えにもなってないじゃない。で、どんな人でどんな名前だったのよ?」


 そういえば、ここには野暮なのが約一名いたな。

 クッキーを食べながら普通に言葉を挟むリーナが。


「えへへ、内緒です!」

「えー、何よそれっ」

「またいずれお教えしますから」


 部屋に差し込む西日がかなり傾いてきた。


「……ん?」


 その時、楽しそうに笑うフラウディアの顔が、何か記憶の中の場面と重なった気がしたが、しばらく考えてみてもはっきりとしない。

 顔を見つめる俺に、上機嫌なままフラウディアが尋ねてくる。


「テオル様、どうかしましたか?」

「ああいや……なんでもありません」


 思い出せないということはただの思い違いだろう。

 一度見た場面や顔は記憶され、すぐに思い出せるのに、時々同じようなことがある。

 多分、見たことがある気になっているだけだ。


 そういえば今のところ、フラウディアの周辺に怪しい人物の影はないなと思っていたら──ちょうどメイドが来て、扉が叩かれた。


「第六騎士団団長、ジン様がお越しになられています」


 念のため探知魔法を使い、自分でも確認してみると、たしかに応接間のような部屋に団長が来ていた。


 わざわざ本人が来るなんて、ようやく何か動きがあったのか?

 俺たち三人を呼んでいるようなので、揃って団長が待つ部屋に移動する。


 その後──俺たちが部屋に入るや否や、団長は指をパチンと鳴らし、盗聴などを防ぐ結界を高密度で張った。


 椅子に腰を下ろすと、フラウディアが代表して話を訊く。


「ジン様、何か動きが?」

「ああ、報せが二つあってね」

「……二つ?」


 首を捻る俺たちに、団長は「そう、二つ」と指を二本立てて頷く。


「面白い報せと、悪い報せだ。じゃあ……まずは面白い報せから」


 と、いうことは──こちらは本題ではなく、ちょっとした話なんだろう。

 団長はにこにこ笑ってこう続けた。


「君たちに依頼が来てる。王立学園の教師──メイ先生から、学園地下にあるダンジョンの攻略に協力してくれないかってね」


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