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162連目 ベルの退屈で窮屈な日常


「これが、さっき言ってた端末なんだぜ」



 彼とも彼女ともつかぬ声の主は、そう言って首飾りを差し出す。



「形が好きに変えられるのは、説明したとおりだぜ。

 似合うと思って、こんな形にしてみたんだぜ」



 金色の細い鎖の真ん中は、写真を入れられるロケットペンダントになっている。

ここに想い人の写真でも入れよというのか、夢見る乙女でもあるまいし。



「何か質問はあるんだぜ? なければ転送に移るんだぜ」


「何も無いわ」


「そうか。困った事があったら、事務局まで来るんだぜ」



 笑顔で跳ねる黄色いゴム鞠は、すでに一仕事終えた気になっているようだ。

見るからに脆弱そうなこやつらに、力を奪われたと思うと忌々しい。

魔力さえ奪われてないければ、今すぐにその顔を爆ぜさせてやるというのに……。



「それじゃ、転送するんだぜ。ゆっくりしていってね!!」



 その声だけを残し、即座に展開された魔方陣によって我は転送された。



「なにが“ゆっくりしていってね”だ……」



 送られた先の森の中、木陰に腰を下ろし一人呟く。

首もとの鎖を撫でる。この世界の(ことわり)を押し付けるための鎖。

反抗させぬための枷。見た目の煌びやかさなど誤魔化しに過ぎぬ。


 憎らしさから、その鎖をめいっぱいの力で握る。

この程度の魔具さえも破壊できぬ程、弱き身に落とされた。我に何ができようか。

沸き立つ負の感情に応えるように、鎖は形を変え青い紙紐へと姿を変えた。



「飼いならすための首輪なら、これで十分」



 この世界は悪魔である我には、窮屈でしかなかった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「その契約石(けいやくせき)は主様のものだ。よからぬ事を考えるなよ」



 手の内の石に目を奪われた我に、鬼若は小声で忠告する。


 まくら様のご学友というカオリによればこの石、まくら様が我らを導くために点々と落とした道標は、契約石と呼ばれる。

この石の魔力を消費する事で異世界を繋げ、契約を行うとの事だ。


 確かにこの石を使えば、我の元居た世界を呼び出し、我自身と契約を結ぶ事もできるであろう。

そうすれば……、あの忌々しい学園運営局(うんえい)の呪縛からも解き放たれる。

()()()()()()()()()()()()()()()()

そんな考えが浮かばなかった訳がない。



「そのような事、するわけがなかろう」



 だがしかし、今はかの不思議なまくら、彼を見ることが楽しみなのだ。

手の付けられぬじゃじゃ馬と名高き鬼若の牙を抜き去り、これほどまでの忠誠を誓わせた者。

そして世界の理を乱し、その身をまくらへと墜した者。

これほど興味深い存在が他にあろうか。



 この世界は窮屈なれど、退屈などする暇はなさそうだ。



今回の主役はベル様だよー!

俺もまくらいっぱいに詰まった課金石欲しい!!

次回更新→11月29日(木)デス



後書き代打     ◇カズモリ◇

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